調査内容 主要SIerに対する「利用したい理由」(その1)
調査時期 2008年10月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3124件(1247件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業情報システムの担当者(ITpro Researchモニター登録者)を対象に行った2008年10月調査で,「今後利用したい」という回答を得たSIer(11月17日付け記事参照)に対する「利用したい理由」を,得票数46以上の7社(大塚商会,キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ),NTTデータ,NECフィールディング(Fielding),伊藤忠テクノソリューションズ(CTC),富士通エフサス(Fsas),野村総合研究所(NRI))について分析した。なお,ベンダーに対する「利用したい理由」の分析は,11月18日付け記事11月19日付け記事で紹介している。

SIerを選ぶ理由で「提案」と「ブランド」が上昇

 今回の調査で30人以上の回答者から「今後利用したい」とされ,『利用したい理由』を1つ以上選ばれたSIer15社(下の「■調査概要」参照)の単純平均で見ると,最も多い『利用したい理由』は今回も前回と同じく「過去の導入/利用実績」で,39.1%(前回2008年7月調査では12社の平均で41.0%,前々回2008年4月調査では18社平均で31.9%。今回調査のベンダー29社平均は41.7%)だった。

 次いで,「導入後のサービス(保守,稼働継続)」が32.2%(前回調査のSIer平均は31.8%,前々回のSIer平均は27.9%,今回のベンダー平均は17.9%)。3番手は「製品/サービスの機能」の28.2%(前回SIer平均28.8%,前々回のSIer平均31.2%,今回のベンダー平均51.6%)と,「提案、業務分析、情報提供」の28.0%(前回23.5%,前々回25.5%,今回のベンダー平均13.6%)の2項目が,ほぼ同率だった。

 「ブランドや企業イメージ」(前回15.2%,前々回18.2%,今回ベンダー平均24.0%)は,今回のSIer平均が18.3%に上昇。前々回調査で『利用したい理由』の選択肢の中で最も支持率が低かった「コスト」は,前回並みの12.5%(前回13.1%,前々回11.2%,今回ベンダー平均16.1%)。前回調査で7選択肢中最低の11.6%だった「企業規模や体制」(前々回11.9%,今回ベンダー平均12.1%)も前回とほぼ同じ11.7%。前回と比べて「提案」が約4.5ポイント,「ブランド」が約3ポイント増えたが,『利用したい理由』の順位は変わらず「過去の実績」「導入後のサービス」「機能」がトップを占めた。

 SIer各社を『利用したい理由』の平均値を,ベンダーの平均値と比較すると,前回と同様「提案」と「導入後のサービス」ではSIerが15ポイント近くベンダーを上回り,「コスト」と「過去の実績」は小差,「機能」と「ブランド」は大差で,ベンダーへの平均支持率がSIerをリードしている。「企業規模や体制」はほぼ同率だが,今回の調査ではベンダーの平均がわずかにSIerを上回り,前回と逆転した。

「コスト」で依然強い大塚だが,「提案」の支持も拡大

 SIerの中での「今後利用したい」得票数トップは,前回,前々回調査と同じ大塚商会(利用意向率はSIer中7位,11月17日付け記事参照)。有効回答数30以上を得たSIer15社の中で,大塚商会は今回も『利用したい理由』に「コスト」を上げた回答者の比率の最大値24.5%(2位は20.8%のFsas)を獲得した。

 しかし前回調査と比較すると,大塚商会を『利用したい理由』での「コスト」は小幅ながら低下(前回は27.0%,前々回は23.2%)。逆に比率が高まったのは「提案、業務分析、情報提供」(前々回27.7%→前回28.1%→今回34.0%)である。

 前回調査では大塚商会を『利用したい理由』のトップは「過去の導入/利用実績」が42.7%,2番目が「導入後のサービス」の37.1%で,3番目に「機能」「提案」「コスト」が29.2%~27.0%の僅差で並んでいた。今回は「実績」のトップ(40.6%)は変わらず,2番目の「導入後のサービス」(35.8%)と「提案」が約2ポイント差に接近。「コスト」と「機能」が約10ポイント離れて同率の24.5%という順になった。

揺れるキヤノンMJへの支持理由,「機能」今回は低下

 「今後利用したい」得票数で2位,利用意向率では大塚商会を僅差で上回る6位の支持を得たキヤノンMJは,最大の『利用したい理由』が今回も「製品/サービスの機能」(36.0%)。評価対象15社中「機能」が最大の『利用したい理由』となっているのは,キヤノンMJだけだ。

 だがキヤノンMJへの「製品/サービスの機能」への支持率は,前々回調査での32.2%が前回調査で44.8%(評価対象12社中トップ)に大きく上げた後,今回は急落したもの。逆にキヤノンMJを『利用したい理由』で,今回の調査で比率が上がったのは「ブランドや企業イメージ」だ。前々回調査の25.4%から前回は19.0%に下がったが,今回は25.3%に戻って評価対象15社中2番目の高さとなった。

 SIer15社中,『利用したい理由』で「企業規模や体制」への支持率が最も高かったのは,得票数3位,利用意向率16位のNTTデータの18.9%。2位のNRI(17.4%)と1.5ポイントの僅差だが,業界最大手の面目を保った。NTTデータに対する最大の『利用したい理由』は,前々回調査では「提案」の36.5%だったが,前回調査は「過去の実績」が34.7%で「提案」は32.0%。今回は「過去の実績」がさらに40.5%に拡大し,「提案」への支持率は前回とほぼ同じ32.4%にとどまった。前々回調査では31.1%の支持があった「導入後のサービス」も,前回の20.0%に続いて今回も20.3%と低く,2回連続で評価対象SIerの平均値を下回っている。

「過去の実績」減り「コスト」の比率が上がったFsas

 ともに国産メーカー系で保守・運用サービスに強みを持つFieldingとFsasは,「今後利用したい」得票数4位と6位,利用意向率が11位と13位でよく似たポジションにある。ともに「導入後のサービス」を『利用したい理由』に挙げた回答者の比率が高く,評価対象SIer15社の平均値を約15ポイント上回る47.7%(15社中2位)と47.9%(同3位)だ。

 ただしFsasはこの「導入後のサービス」が最大の『利用したい理由』であるのに対し,Fieldingは「過去の実績」が52.3%で最大の理由となっている(評価対象15社中最大でもある)。Fieldingはこの「過去の実績」が前回調査より8ポイント拡大(前回は44.3%,前々回は49.4%)したのに対し,Fsasの「過去の実績」への支持率(今回39.6%)は前回(44.7%)から約5ポイント,前々回(49.2%)と比較すると約10ポイントも低下した。

 逆にFsasへの『利用したい理由』で前回,前々回調査より顕著に拡大したのは「コスト」である。前々回調査ではFsasが11.5%,Fieldingが13.6%とほぼ同レベルだったが,前回調査では17.0%対12.9%。今回はFsasが20.8%で大塚商会に次ぐ2番目に高い支持率,Fieldingの「コスト」への支持は10.8%で評価対象SIer15社の平均値を下回った。なお,Fieldingの「提案」への支持率9.2%(前回11.4%,前々回8.6%)は,今回調査でのSIer15社の最小値である。

『利用したい理由』が分散したCTC

 「今後利用したい」得票数5位,利用意向率15位のCTCは,最大の『利用したい理由』に「過去の実績」と「提案、業務分析、情報提供」が39.3%で並び,「製品/サービスの機能」と「導入後のサービス」にも32.1%の支持,あわせて4項目が30%以上の回答を集めた。今回の評価対象SIer15社の中で,30%以上の支持率を持つ項目が4つあるのはCTCだけである。

 CTCは前回調査でもこの4項目に30%以上の支持を集めており,「過去の実績」(前回39.5%)と「導入後のサービス」(前回32.6%)はほぼ今回も同率。しかし「機能」への支持率は前回の41.9%から約9ポイント・ダウン,逆に「提案」への支持率は前回の32.6%から約7ポイント・アップした。

 NRI(「今後利用したい」得票数7位,利用意向率12位)は,最大の『利用したい理由』が「提案」の47.8%。これは評価対象SIer15社中2番目に高い。「ブランドや企業イメージ」の26.1%も15社中2番目に高い値だ。しかし「導入後のサービス」は13.0%で15社中最も低い支持率となっている。なおNRIは,前回,前々回調査では「今後利用したい」とし『利用したい理由』を1つ以上選んだ有効回答が20票にも満たなかったため,参考値としても紹介はしない。

 次回11月21日公開の記事では,SIerの中で「利用したい理由」の有効回答数上位8位~15位の8社について,『利用したい理由』を報告する。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,情報通信製品/サービス・ベンダーとシステム・インテグレーター(SIer)の主要企業各68社について,職務(担当システム)の領域で「今後利用したい」と感じるかを聞き,「今後利用したい」とした回答者に,そのベンダー/SIerを「利用したい」と感じる理由をたずねた。
 選択肢は「コスト」,「提案,業務分析,情報提供」,「製品/サービスの機能」,「導入後のサービス(保守,稼働継続)」,「企業規模や体制」,「ブランドや企業イメージ」,「過去の導入/利用実績」,「その他」の8つを提示。その中から,「利用したい」と感じる理由を最大3つまで選ぶよう求めた。そのベンダー/SIerを「利用したい」とした回答者数(無回答者を除く。図中のn)を100%として,それぞれの理由が選ばれた比率を集計した。
 今回の調査で30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIerは,今日の記事で紹介した7社と,日本ユニシス,NECソフト,NTT-ME,富士通ビジネスシステム,日立電子サービス,住商情報システム,日立情報システムズ,新日鉄ソリューションズの合計15社だった。
 評価対象企業全136社のリストは,本調査の設問の原文とともに,日経マーケット・アクセスの有償会員向けサイト「日経MA-INDEX 企業情報システム」で公開している。
 調査実施時期は2008年10月中旬~下旬,調査全体の有効回答は3124件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1247件。

図●主なシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい」理由(回答数上位7社,n=46以上)
図●主なシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい」理由(回答数上位7社,n=46以上)