調査内容 IT関連キーワードの認知度・業務への影響・利用状況
調査時期 2008年9月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3158件(1196件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスでは,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,最新あるいは注目のIT関連キーワードを毎月三つずつ挙げて,その認知度,業務への影響と利用の状況について聞いている。2008年9月の調査では,「ECM(Enterprise Contents Management)」「IPv6(internet protocol version 6)」「IT全般統制」の3つのキーワードを取り上げた。

全社情報管理の「ECM」は「将来かかわる」が5割強

 企業や組織の文書データ,Webページで公開している情報,グループウエア上で共有している情報など,さまざまなコンテンツを統合的に管理するツールや仕組みが「ECM(エンタープライズ・コンテンツ管理)」。検索機能,ワークフロー機能やアクセス制御・ログ機能,バージョン管理機能,紙の文書をスキャナや複合機を使ってデジタル・データ化するための入力支援機能,入力フォーム作成機能など,各社の「ECMツール」と称する製品が持つ機能はマチマチで,どれが「ECMツール」として最低必須な機能か,いささか分かりにくいのが現状だ。ともあれ,前出のJ-SOX対応のための内部統制の支援ツールとして,ECM製品を投入したり強化するベンダーが相次いでいる。

 今回2008年9月調査のキーワードとしてこの「ECM」を提示した結果は,認知度スコア1.87,業務への影響度スコア2.56,応用/利用状況スコア1.36(スコア換算式は下の「■調査概要」を参照)。本調査で今回も含めこれまでに提示した75種のキーワードの平均(順に2.24,2.92,1.65)を下回った。認知度の中で「業務に通用する知識がある」が1.5%とやや際立って低い(75種中下から9番目,平均は5.7%)が,「聞いたことがある」は36.2%と高め(75種中上から8番目,平均は26.8%)。約50%を占めた「聞いたことがない」回答者を除いて集計した“業務への影響度”では,「将来かかわる可能性がある」が53.4%(平均値51.4%)とやや高めだった。“応用/利用状況”では「全社的に運用」~「一部で試験運用」の合計が1割弱に終わっている。

J-SOXのシステム面を規定する「IT全般統制」は「全社的に運用」が20.9%

 日本版SOX法(J-SOX)の適用開始からほぼ半年が経過した。財務報告に重要な影響を及ぼす業務プロセスで利用しているITシステムの,開発や変更,運用・保守,アクセス管理など,主にIT部門が担当する業務のプロセスを明確化するのが「IT全般統制」である。

 今回2008年9月調査のキーワードとしてこの「IT全般統制」を提示したところ,2006年9月調査での「日本版SOX法」(認知度スコア3.46,業務への影響度スコア4.13,応用/利用状況スコア2.14)に対して,認知度と影響度のスコアは下回ったものの,応用/利用状況のスコアは大きく上回った。

 これまでに提示した75種のキーワードの中で,「IT全般統制」の認知度スコア2.78は「ブレード・サーバー」(2006年12月調査)と並ぶ15位タイ。特に「業務に通用する知識がある」の14.1%は,2007年12月調査の「ERP(統合業務パッケージ)」(20.7%),2007年11月調査の「シングル・サインオン(SSO)」と2007年7月調査の「SLA」(ともに16.6%),2006年10月調査の「KM(ナレッジ・マネジメント)」(16.4%)に次ぐ,5番目に高い比率だ。

 「聞いたことがない」とした回答者を除いて集計した“業務への影響度”スコアでは,「IT全般統制」の3.59は歴代4位。前出の「日本版SOX法」,2006年11月調査の「Windows Vista」(3.82),2007年7月調査の「SLA」(3.65)の次に高い。「自分の業務とかかわる」と「将来かかわる可能性がある」の合計88.7%は,「日本版SOX法」の95.9%,「Windows Vista」の93.7%に次ぎ,2006年9月調査の「Web2.0」と並ぶ歴代3位だ。

 同じく「聞いたことがない」とした回答者を除いた“応用/利用状況”スコアは,「IT全般統制」が2.49で「日本版SOX法」を上回り,前回2008年8月調査の「LTO(Linear Tape-Open)」(2.66)に次ぐ歴代2位。特に「全社的に運用」の20.9%は,これまで最高だった「ERP」の15.6%に5ポイント以上の大差でトップの高率だ。

NGNを支えIPv4枯渇対策の核となる「IPv6」,認知度高いが利用度伸びず

 現在の32ビット・アドレスによるインターネット・プロトコル「IPv4」では,2011年,早ければ2010年半ばにも,新規のグローバルIPアドレスの取得が困難になると言う予測が,最近メディアで取り上げられている。128ビット・アドレスによる「IPv6(internet protocol version 6)」はすでに1990年代半ばに標準化されていたが,このIPv4アドレス枯渇問題,Windows Vistaでの標準採用,NGN(Next Generation Network)の商用サービス開始という追い風を受けて,10年余りの雌伏期をようやく脱しそうである。

 今回2008年9月調査のキーワードとして「IPv6」を提示した結果は,認知度スコアでこれまでのキーワード75種中5番目に高い3.22をマーク。「生体認証」(3.51,2006年12月調査),「日本版SOX法」(3.46),「ERP」(3.44),「Windows Vista」(3.33)に次ぐスコアで,特に「聞いたことがない」率の5.1%は過去4番目の低さ(日本版SOX法,生体認証,Windows Vistaに次ぐ)だった。

 「聞いたことがない」回答者を除く“業務への影響度”スコアの2.98は,75種の平均値2.92をわずかに上回った。「自分の業務とかかわる」は75種の平均値22.2%に対し「IPv6」は20.4%とやや低いが,「将来かかわる可能性がある」は平均値51.4%を上回る58.0%を得て,75種中の13番目に食い込んだ。

 しかし,「IPv6」の“応用/利用状況”スコアは1.38で,キーワード75種の平均スコア1.65を大きく下回っている。「全社的に運用」とした回答者の比率はわずか1.7%。「全社的に運用」~「一部で試験運用」の合計が10.7%(75種の平均は18.5%),「導入を計画」を加えても18.8%(同28.6%)という結果だ。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,IT関連の最近のキーワードの認知度,自身の業務への影響をどう見ているか,回答者の所属組織での利用状況を聞いた。
 「認知度」は四択の質問で「業務に通用する十分な知識がある」を5,「内容をある程度理解している」を3.67,「名前だけは聞いたことがある」を2.33,「聞いたことがない」を1点にスコア換算した。
 同様に「業務への影響」は三択で「自分の業務と深い関わりがある」を5,「今は関わりがないが,将来関係するかもしれない」を3,「自分の業務には関係ない」を1点に換算。
 「応用/利用状況」は五択で「全社的に運用されている」を5,「一部の部門,業務で運用されている」を4,「一部の部門,業務で試験的に運用されている」を3,「導入を計画している」を2,「導入/利用計画はまだ具体化していない」を1点に換算した。なお,認知度で「聞いたことがない」とした回答者の「業務への影響」と「応用/利用状況」への回答は無効として集計から除外している。
 調査実施時期は2008年9月中旬,調査全体の有効回答は3158件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1196件。

図1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度・業務への影響・利用状況
図1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度・業務への影響・利用状況

図2-1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度
図2-1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度

図2-2●情報システム担当者の最新キーワードの業務への影響
図2-2●情報システム担当者の最新キーワードの業務への影響

図2-3●情報システム担当者の最新キーワードの利用状況
図2-3●情報システム担当者の最新キーワードの利用状況