調査内容 2009年の注目分野へのIT投資予想額
調査時期 2008年9月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3158件(1196件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った中短期のIT投資計画調査で,来年(2009年)に回答者の企業がIT投資する予想額を40分野(下の「■調査概要」を参照)について聞いたところ,前回調査(2008年1月実施,2008年の投資計画),前々回調査(2007年6月実施,2007年度の投資計画)と同じく「基幹系」の導入や再構築が上位を占めたものの,投資予想額の平均値はほとんどの項目で8カ月前の調査より大幅に減少した。

 投資予想額の平均値のトップは前回調査と同じく「基幹システムの再構築(自社開発で)」で約3500万円。ただしこの値は,前回調査より約1400万円も縮小している。2位は「基幹システムの再構築(パッケージの改版/入れ替え)」で約3300万円(前回は約3400万円)。前回調査で平均予想額が約4000万円だった「基幹業務パッケージ(ERPなど)の新規導入」は今回,約2260万円と前回の半分近くにまで縮小した。

 前回調査でこれら基幹系3項目に次ぐ大きなウエートを占めていた「内部統制」関連の2項目(業務処理統制,IT全般統制とも前回は2500万円弱)も,今回は1200万~1500万円近く平均値を下げた。

SaaSへの投資予想額は8カ月前より3割ダウンの約500万円

 一方,今回から対象分野に加えた「グローバルな全社・グループ統合システム(連結会計・生産・物流管理など)」は約1800万円と40種中5番目に大きな投資見込みをマーク。同じく新設項目の「自社やグループ内システムの運用外注(外部データセンター利用)」の投資予想額の平均値は,3位の「基幹業務パッケージ(ERPなど)の新規導入」とほぼ並ぶ約2250万円だった。

 この,運用アウトソーシングへの投資予想額の高さとは対照的に,「SaaS(Software as a Service),ASPサービス」の今回の平均予想額は約500万円。前回調査での約700万円より約3割ダウンした。

平均額が前回調査より伸びたのはWindowsのバージョンアップとNGN

 前回調査と比較可能な投資対象分野(キーワード)28種の中で,前回調査より平均投資予想額が増えたのはわずか3項目。「Windows Server 2008(導入に伴うハードウエアへの投資を含む)」が約430万円アップ,「Windows Vista(同)」も約30万円アップ,「NGN(Next Generation Network)対応の通信機器:(音声・動画以外の)高速データ通信系用途」が約50万円アップだった。

 同じくNGN関連の「NGN対応の通信機器:音声・動画系用途」への平均投資予想額も,前回調査よりマイナスではあるが最もマイナス幅が小さく(約80万円),プラスだった上記の3項目に次ぐ位置にある。大半の投資対象分野に対する平均投資予想額が縮小した中で,「Windows Server 2008/Vista」と「NGN」の二つのキーワードが,2009年の有望市場として踏みとどまった形だ。

 明日からは,2010年と4年後の2012年の重点投資項目の結果を紹介する。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者に,以下のITキーワード40種を挙げて,2009年,2010年,4年後(2012年)の投資意向を聞いた。
 2007年6月調査では,「内部統制:業務処理統制」,「内部統制:IT全般統制」,「基幹業務パッケージ(ERPなど)」,「CRM(顧客情報管理)システム」,「RFID(無線ICタグ)」,「企業内blog,企業内SNS,企業内Wiki」,「企業内IP電話,無線IP電話」,「NGN(Next Generation Network)対応の通信機器:音声・動画系用途」,「NGN対応の通信機器:(音声・動画以外の)高速データ通信系用途」,「サーバー仮想化」,「ストレージ仮想化」,「ブレード・サーバー」,「シンクライアント」,「SaaS(Software as a Service),ASPサービス」,「SOA (サービス指向アーキテクチャ)」,「ITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)第3版」の16種を提示して,2007年度の投資額2008年度の投資額の前年度比増減率2010年度の重点投資分野を聞いた。
 2008年1月調査では「情報漏洩対策」,「基幹システム(自社開発での再構築)」,「基幹システム(パッケージのバージョンアップないしリプレース)」,「モバイル活用(ネットワーク・サービス)」,「モバイル活用(クライアント,端末)」,「BCP/ディザスタリカバリ」,「BI/KM/データ・ウエアハウス」,「Windows Vista」,「Windows Server 2008」,「IT投資対効果測定の標準化,定量化」,「内部要員のスキル・レベル確認」,「内部要員のレベルに応じたスキル養成」の12種のキーワードを加え,2008年の投資額2009年の投資額の前年比増減率2011年の重点投資分野を聞いている。
 今回の調査ではさらに「グリーンIT」,「クラウド・コンピューティング」,「グローバルな全社・グループ統合システム(連結会計・生産・物流管理など)」,「位置情報・地理情報利用のアプリケーション」,「テレビ会議,Web会議,ネットミーティング」,「10Gビット/秒イーサネット(10GbE)」,「自社やグループ内システムの運用外注(外部データセンター利用)」,「同業他社とのシステム共同利用」,「顧客,取引先,投資家向け情報提供用Webサイト(パソコン用)」,「顧客,取引先,投資家向け情報提供用Webサイト(携帯電話用)」,「商品販売,有償コンテンツ配信用Webサイト(パソコン用)」,「商品販売,有償コンテンツ配信用Webサイト(携帯電話用)」の12種のキーワードを追加。「Windows Vista」,「Windows Server 2008」については「導入に伴うハードウエアへの投資を含む」と明記した。
 今回の調査での「2009年の投資額の見込み」は,「御社において上記各分野への投資は,年間でどの程度の額になると予想されますか」(最も近いものを一択,1案件が複数の項目に該当する場合,案分せずに,該当の各項目に最も近い投資の見込みを選択)という形で,選択式で回答を求めた。
 本文中の「平均の予算額」は,選択式回答の「ゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した値である。
 調査実施時期は2008年9月中旬,調査全体の有効回答は3158件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1196件。

図●2009年の注目分野別IT投資予想額
図●2009年の注目分野別IT投資予想額