今年の調査では,業務の効率化などを目的としたネットワーク活用動向を探るための問いを設けた。具体的には,シン・クライアントやビデオ会議,プレゼンス(在席情報把握)管理といったシステムやソフトウエアの利用状況を調べた。いずれもオール光化へ進む広帯域のネットワーク上で真価を発揮する技術である。

4割強がビデオ会議システムを導入

 導入率43.4%──。ビデオ会議システムは長らくブロードバンドのキラー・アプリケーションと言われてきたが,いよいよ企業の主要なコミュニケーション・ツールになった(図1)。業務効率化の機運の高まり,原油高による航空費高騰,中国をはじめ海外展開を急ぐ企業の増加などを背景として,出張費削減のためにビデオ会議を導入する企業は今後も増えると思われる。

図1●業務でビデオ会議システムを利用している企業の割合
図1●業務でビデオ会議システムを利用している企業の割合
4割強が利用。企業に浸透しつつある。

 例えばアジアを中心に多数の海外拠点を持つ電子部品大手の東光は,新型肺炎SARS(重症急性呼吸器症候群)が中国で騒動になっていた2003年ころにビデオ会議システムを本格導入した。当時,中国大陸への出張ができなくなったため,台湾と香港,中国広東省の汕頭市にある拠点間で利用を開始した。「使ってみて便利さがよくわかり,予想以上に頻繁に使われるようになった」(東光 情報システム部の有川寛マネージャー)。現在では日本やシンガポールを含めた20拠点弱で23台のビデオ会議端末を使う。今後はベトナムやマレーシアの拠点にも導入する予定だ。

 現在のビデオ会議システムは3種類に大別できる。従来型のSD(標準画質)の専用端末型と,最近多くの製品が登場してきたHD(高精細画質)の専用端末型,そしてパソコンに接続する低価格のWebカメラ型である。

 このうち,最も利用率が高いのがSDタイプで46.3%だった。これにWebカメラ型22.2%,HDタイプ10.9%と続く。ビデオ会議システムでは,1080pや720pといった高精細映像を使うことで高い臨場感を得られるHDの製品が話題を集めているが,まだ利用は進んでいない。

 ユーザーに聞くと,実際のところ,現時点ではHDへの需要はそれほど高くはないようだ。SDタイプを使う東光の有川マネージャーは,「海外拠点との会議がメインなので,多くの帯域を必要とするHDは使えない」とする。HDの端末には少なくとも1M~2Mビット/秒の帯域が必要。広帯域回線が高価な海外では利用は難しい。東光では1端末で2枚のディスプレイを用い,1枚に会議の映像を,もう1枚にExcelやPowerPointなどの資料を表示する。映像のビットレートは512kビット/秒の設定である。

 SDのビデオ会議を全拠点で導入するセントラルユニでも,「画質は今の製品で十分。それよりもモバイルでビデオ会議を使いたい」(総務部総務課の椛島恒夫氏)という。同社は医療設備の施工を手掛けるが,「施工現場でビジュアルにコミュニケーションしたい。可搬性を考えると,システムとしてはパソコンにカメラをつなぐ方式になるだろう」(同)としている。