調査内容 主要インテグレータへの満足度(その2:提案力)
調査時期 2008年8月中旬~下旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2780件(1157件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象として2008年8月に実施した調査で,国内の主なシステム・インテグレーター(SIer)の「提案力」に対する利用者の満足度を聞いたところ,IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS),野村総合研究所(NRI)のビジネス・コンサルティング系2社が70%台の満足率を得て突出。新日鉄ソリューションズ(NSSOL),日本アイ・ビー・エム・サービス(ISC-J),ネットワンシステムズがこれに続く高い評価を得た(前回2008年2月の調査結果は2008年3月12日付け記事,前々回2007年8月の調査結果は2007年10月3日付け記事を参照)。

新日鉄ソリューションズへの評価が6カ月前の調査より約30ポイント上昇

 今回2008年8月のSIer満足度調査で全6項目とも有効回答数30以上を得た評価対象企業30社の中で,「提案力」満足率(算出方法は下記の「■調査概要」参照)のトップは,IBCSの75.8%。IBCSの前回調査での「提案力」満足率INDEXは,回答数26で参考値扱いだが53.8%。前回調査で有効回答数30以上を得た28社中1位のネットワンシステムズ(53.7%)とほぼ同じ「提案力」満足率INDEXだった。

 また,今回調査で2位(満足率72.5%)のNRIは,前回調査の「提案力」満足率INDEXが47.1%(n=34)で,ネットワン,ISC-J(51.6%),大塚商会(50.6%),NECネクサソリューションズ(48.6%),NTTデータ(47.6%)に次ぐ6位の評価だった。

 前回調査と少し設問形式を変更した(前回は「そのSIerのその項目について評価可能」とした回答者に,「満足」を選ぶか否かの形で提示。今回は「そのSIerを利用している」とした回答者に,「満足」「不満足」の二肢形式で提示)影響もあってか,この「提案力」については各評価対象SIerとも概ね満足率が上昇している(有効回答数30以上を基準として,前回の「提案力」満足率INDEXの28社平均は40.3%,今回の「提案力」満足率の34社平均は56.4%)。中でも特に満足率が上昇したのはNSSOLで,前回の39.8%から約30ポイントの大幅なアップである。

 ちなみに,今回の調査では「そのSIerを利用している」の内容を,「製品やサービスの購入・請負・委託など,直接契約して利用」,「直接契約と,下請けなど間接的な形の,両方で利用」,「間接的な形でだけ利用」の3パターンに細分化して聞いている。この「提案力」について,「間接的な形でだけ利用」とした回答者を除いて集計してみたが,各SIerに対する満足率はほとんど変わらなかった(有効回答数30以上の20社の「提案力」満足率の平均が58.5%)。この「直接契約者のみ」の「提案力」満足率でのトップは,NRIで73.9%(IBCSは有効回答不足で参考値扱い)。次いでISC-Jの70.5%,ネットワン(68.4%),NSSOL(67.2%),伊藤忠テクノソリューションズ(CTC,66.3%)という結果になる。

野村総研の「提案力」は「流通」「製造」で評価高く「金融」で低い

 今回の「提案力」満足率上位のSIerについて,回答者の業種,担当システムの規模などの属性(「回答者が担当するシステムの範囲/分野」参照)別に見た場合に,特徴のあるところを挙げておく。トップのIBCSは「満足」という評価を下した回答者の絶対数が少ない(25票)が,「情報処理関連サービス(情報処理/ソフトウエア/SI・コンサルティング/VAR)」と「金融/証券/保険業」の両業種の回答者の満足率が100%で,全体の満足率75.8%を引き上げる原動力となっている。対照的に,NRI(全体の満足率72.5%)は「流通業」で100%,「製造業」で88.2%と高い支持率を得たが,「金融/証券/保険業」の回答者の満足率は46.7%と低めだった。

NSSOLは「戦略立案」,ネットワンは「運用/活用支援」段階の「提案力」に高い評価

 NSSOLは(全体の満足率69.2%)は,業種別ではあまり大きな開きはないが,「製造業」での82.1%がやや高めで,「情報処理関連サービス」の64.0%がやや低め。ただしNSSOLの「提案力」満足率は,回答者の担当システムのライフサイクル上の段階による違いが目だった。「戦略立案」の回答者では79.4%と高いが,「RFP/要求分析/要件定義」の担当者では52.2%と低下している。

 ネットワンシステムズ(全体の満足率64.8%)は「全社の情報システム」の担当者の「提案力」満足率58.3%に対し,「全社以外(部門~ワークグループの情報システムのみ)」の担当者から満足率77.3%と高めの評価を得た。担当システムの段階別でも「運用/活用支援」段階の担当者の「提案力」満足率が81.0%と高いのに対して,「システム戦略立案」段階の担当者は53.3%,「RFP/要求分析/要件定義」段階の担当者の満足率も53.8%と比較的低い値を示している。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,主要インテグレータに対する満足度を聞いた。
 大手SIerの中からメーカー系/独立系や専門分野などのバランスを考えて20社(下図の回答数上位20位までの20社)をピックアップし,有効回答者全員に評価を求めた。その他の大手SIer 48社については,SIerと回答者をそれぞれ3グループに分けて,各回答者に16社だけを提示し評価を求めた。評価対象としたSIer全68社のリストは,本調査の設問の原文とともに,日経マーケット・アクセスの有償会員向けサイト「日経MA-INDEX 企業情報システム」で公開している。
 今回の2008年8月調査ではまず「(評価対象の)このSIerを利用しているか」を聞き,「利用している」とした回答者にのみそのSIerについて,「サービス料金」「提案力」「業務・業界知識」「プロジェクト管理能力」「システム構築力」「運用サービス力」の六つの満足度評価項目にそれぞれ,「満足」か「不満足」の二者択一で回答するよう求めた。「満足」と「不満足」の回答数の合計を有効回答数とし,「満足」とした回答者の比率(%)を「満足率」とした。このうち「提案力」については下図に示した30社のほか,東芝情報機器(n=34,満足率41.2%),東芝ソリューション(n=33,満足率48.5%),アシスト(n=31,満足率61.3%),東芝情報システム(n=30,満足率50.0%)も有効回答数30以上を得たが,この4社は他の満足度評価項目で有効回答数が30未満だったため,今回の記事では図示していない。
 なお本文中で言及している2007年2月調査と2006年11月調査では,選択式回答の「大変満足」を100,「やや満足」を67,「やや不満」を33,「大変不満」を0点にスコア換算して平均した「満足度INDEX」の結果を示した。また前々回2007年8月調査と前回2008年2月調査では評価対象の各SIerについて「利用しているか」,「評価項目に該当するサービスやソリューションの提供を受けているか」を聞き,ともに「している」とした回答者数を100%として,その評価項目に「満足」とした回答者の比率(%)を「満足率INDEX」とした。
 調査実施時期は2008年8月中旬~下旬,調査全体の有効回答は2780件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1157件。

図1●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数上位10社)
図1●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数上位10社)

図2●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数11位~20位)
図2●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数11位~20位)

図3●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数21位~30位)
図3●主要システム・インテグレーターの提案力に対する満足率(回答数21位~30位)