「日経マーケット・アクセス」が2008年8月に行った調査からSaaS/ASPを利用するデメリットについて報告する。

 調査では,現在SaaS/ASPを利用しているユーザーが利用を始める前に想定した不安やデメリットと利用を始めてから実感している問題点やデメリットを尋ねた(図1)。メリットについてと同様,ここでは利用前,利用後ともに1位~3位までの理由を選択してもらい,1位を5点,2位を3点,3位を1点として回答率に加重して得点を算出している。

 利用前の不安としては「サービスの可用性が十分か分からない」というのが圧倒的。次点の「ネットワークが使えないと業務が滞る」と50点を超える差があった。それに対して利用後の回答では可用性の問題は得点80と半分近くにまで下がった。

 その一方で,「ネットワークが使えないと業務が滞る」という回答の得点は50点アップした。「アプリケーションがカスタマイズできない」という回答も30点以上上がった。

 サービスの可用性もネットワークが使えなくなることも,ユーザーにとっては可用性につながる問題だが,事前の懸念がサービス自体にあったのに対し,実際に利用してみるとネットワークの方が問題になりやすかったということだろう。今後NGNのような信頼性の高い回線がどれだけ企業ユーザーに受け入れられるかにもSaaSの普及が関係してきそうだ。

 このほか「本当に安くなるのかどうか分からない」「セキュリティ面の危険が大きい」の2項目は利用後に問題とする回答者が利用前から大分減っている。

 また,これからSaaSを利用しようと計画中の回答者の場合,「セキュリティ面の危険が大きい」という懸念が既に利用している回答者と比べて非常に高かった。「本当に安くなるのかどうか分からない」「アプリケーションがカスタマイズできない」という懸念も既に利用している回答者の利用前の懸念より30点近く高かった。セキュリティとコストに関しては既存利用者ではあまり問題になっていないが,カスタマイズについては既存利用者も多くが問題点としている。SaaS/ASPの事業者側としては問題の解決や懸念の払拭(ふっしょく)が必要だろう。

図1●SaaS/ASPを利用するデメリット
図1●SaaS/ASPを利用するデメリット