「日経マーケット・アクセス」が2008年8月に行った調査からSaaS/ASPを利用するメリットについて報告する。

 調査では,現在SaaS/ASPを利用しているユーザーが利用を始める前に想定したメリットと利用を始めてから実感しているメリットを尋ねている。すると両者の間にかなりの差があることが判明した(図1)。ここでは利用前,利用後ともに1位~3位までの理由を選択してもらい,1位を5点,2位を3点,3位を1点として回答率に加重して得点を算出している。

図1●SaaS/ASPを利用するメリット
図1●SaaS/ASPを利用するメリット

 事前の想定では「管理・運用費が安く済む」「初期コストが安く済む」というコスト面のメリットが圧倒的に多く考えられていた。その次に「システム構築が短期間でできる」「システム部の負荷が減る」といったシステム部のメリットが続き,以下は大きな差があった。

 一方,利用後の実感でも「管理・運用費が安く済む」という点では利用前に近い得点が得られたが,「初期コストが安く済む」は50ポイント以上も利用前の想定から得点が下がった。反対に「システム部の負荷が減る」は20ポイント以上得点が上がった。

 また,これからSaaSを利用しようと計画中の回答者の場合,コストへの期待と並んで「システム部の負荷が減る」ことへの期待が大きかった。システム構築が短期間でできることや全社のシステムを共通化しやすいといったシステム構築関連の期待も比較的大きかった。

利用者が多いほどコストメリットが大きい

 これだけコストへの期待があるなか,実際にトータルコストはどれだけ変わっただろうか。実はトータルコストには,サービスを利用する従業員数が大きく関係することが判明した(図2)。サービスを利用する従業員数が500人未満の場合平均4.11%コストが上昇したと答えているのに対して,500人以上では平均11.74%減少している。SaaSは中堅・中小企業に向くと言われているが,コスト面で見る限り,利用人数が多いほどメリットが大きくなる。

図2●SaaS/ASP採用によるトータルコストの変化
図2●SaaS/ASP採用によるトータルコストの変化