『日経マーケット・アクセス』は,「SaaS/ASP利用実態調査2008」という特別調査報告書をこのほど発行した。ITpro Research会員などITの先進ユーザーのSaaS/ASPの利用実態を2008年8月に調べた結果をまとめた。回答者は予備調査によって選別し,SaaS/ASPを既に使っているユーザーおよび,現在利用を計画しているユーザーに限定して調査した。この中から主な結果を抜き出して4回にわたって報告する。


 初回はユーザーが使っているサービスの種類と実際にかかっているコスト,サービス稼働までの期間といったユーザーの利用状況を分析する。

 本調査ではSaaS/ASPの利用分野を10個に分けている。これらのうち,既に使っているユーザーがどの分野で利用しているかを尋ねた(図1)。なお,複数利用している場合は一番重要な分野について回答してもらっている。

図1●SaaSで利用しているアプリケーションの種類
図1●SaaSで利用しているアプリケーションの種類

 電子メール,SNSなどのコミュニケーション系アプリケーションが一番多く,次は基幹業務の会計,人事・給与などとなっている。生産や顧客管理,営業など基幹業務系アプリケーションは比較的満遍なく分布しているが,非定型業務ではコミュニケーション系の利用が中心という偏りが見られる。なお「その他」には「プロジェクト管理,IP電話,ストレージ,eラーニング,動画サイト構築」といったアプリケーションが入る。

 以下では図1の「会計,人事・給与など」から「特定業種向け」までを「基幹業務系」,「モバイル・サイト構築」から「その他」までを「非定型業務系」として集計している。

初期コストは基幹業務400万円,非定型業務200万円

 SaaS採用において一番ユーザーが気になり,また期待もしているのがコストだろう。そこで,ユーザーがSaaSのサービスにどれだけのコストをかけているか尋ねた。

 まず,初期コストは全体の平均が300万円弱(図2)。前述のアプリ種別に見ると基幹業務系では約400万円,非定型業務系では約200万円かかっている。基幹業務では100万円近辺初期コストにかかっているユーザーと1000万円を超えるユーザーが多く,非定型業務では5000円未満から1000万円超まで様々な回答がまんべんなく得られた。

図2●SaaS導入にかかった初期コスト
図2●SaaS導入にかかった初期コスト

 また,1アカウント当たりの年間コストは全体が約1万6000円(図3)。これも基幹業務系が高く,その違いは初期コストより大きい。非定型業務が7000円程度で済んでいるのに対し,基幹業務では2万8000円。4倍かかっている。さらに非定型業務では価格帯が安いほど多くの回答があったのに対して,基幹業務では5000円,1万円程度に回答が比較的多く集まり,5万円程度や10万円を超えるという回答もかなりあった。

図3●SaaSの1アカウント当たり年間コスト
図3●SaaSの1アカウント当たり年間コスト

 最後に稼働までの期間であるが,これも基幹業務の方が半年程度なのに対して,非定型業務では4カ月程度と短くなっている(図4)。アカウントのコストと同様,非定型業務では基幹が短いほど回答が多いという傾向があり,基幹業務では,もっと長い期間の回答が多かった。

図4●サービス稼働までの期間
図4●サービス稼働までの期間