調査内容 主要SIerに対する「利用したい理由」(その1)
調査時期 2008年7月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3062件(1126件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業情報システムの担当者(ITpro Researchモニター登録者)を対象に行った2008年7月調査で,「今後利用したい」という回答を得たSIer(8月21日付け記事参照)に対する「利用したい理由」を,得票数45以上の6社(大塚商会,NTTデータ,NECフィールディング(Fielding),キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ),富士通エフサス(Fsas),日立情報システムズ)について分析した。なお,ベンダーに対する「利用したい理由」の分析は,8月22日付け記事8月25日付け記事で紹介している。

SIerを選ぶ理由で「実績」「導入後のサービス」が上昇

 今回の調査で30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIer12社(「調査概要」参照)の単純平均は,「過去の導入/利用実績」が41.0%(前回2008年4月調査では18社平均で31.9%,今回調査のベンダー26社平均は44.4%)で最も多く,前回より約9ポイントも高まった。次いで「導入後のサービス(保守,稼働継続)」が31.8%(前回調査のSIer平均は27.9%,今回のベンダー平均は20.1%)。前回調査では2番目に高率だった「製品/サービスの機能」は今回28.8%(同31.2%,55.2%)でやや低下。「提案、業務分析、情報提供」(同25.5%,13.8%)も今回23.5%で,ベンダー平均は上回ったものの前回調査より低下している。

 「ブランドや企業イメージ」(前回SIer平均18.2%,今回ベンダー平均22.4%)は15.2%にダウン,「企業規模や体制」は11.6%(同11.9%,9.9%)でほぼ変わらず。前回調査で『SIerを利用したい理由』として最も支持率が低かった「コスト」(同11.2%,14.7%)は,今回やや上昇して13.1%を占めた。

 SIerを『利用したい理由』の平均をベンダーの平均と比較すると,「提案」と「導入後のサービス」でSIerがベンダーを約10ポイント上回っている。「企業規模や体制」の比率もわずかだがベンダー平均を上回った。「過去の実績」は前回調査ではベンダーがSIerを10ポイント近く上回っていたが,今回は約3ポイント差に接近。「コスト」での支持率の差も前回の約5ポイントから今回は2ポイント弱に縮まった。「機能」と「ブランド」は前回同様,ベンダーがSIerに勝っている。

大塚商会は「コスト」での強い支持を拡大

 今回最も多数の回答者から「今後利用したい」とされたSIerは,前回調査と同じく大塚商会。有効回答数30以上を得たSIer12社の中で,『利用したい理由』に「コスト」を上げた回答者の比率は,大塚商会の27.0%(前回23.2%)がトップ。2番目に「コスト」の得票率が高かったFsasの17.0%に約10ポイント差を付けている。

 前回と比較すると大塚商会への『利用したい理由』では,「過去の実績」が約8ポイント上昇(前回34.8%→今回42.7%),「導入後のサービス」も約6ポイント増えている(前回31.3%→今回37.1%)。

 「今後利用したい」得票数2位のNTTデータに対する『利用したい理由』は,前回調査では「提案」が最大(36.5%)だったが,今回は「過去の実績」が34.7%を占めて最大。「提案」は32.0%にやや低下した。

 NTTデータの『利用したい理由』での「ブランド」は,前回調査では32.4%でSIer18社中3位だった。今回は28.0%に低下したものの,2位(日立情報システムズの19.6%)以下に大差を付けてSIer12社のトップである。ただしNTTデータでは,「導入後のサービス」(前回は31.1%)が今回は大幅に低下し20.0%,12社平均を約12ポイントも下回った点も注目される。

FieldingとFsasは「コスト」と「ブランド」で明暗

 「今後利用したい」の得票数3位のFieldingと5位のFsasは,ともに国産メーカー系で保守・運用サービスに強みを持つSIer。Fieldingは「導入後のサービス」で前回(50.6%)よりやや低い47.1%ながら連続でトップを獲得。Fsasは前回の41.0%よりややアップした42.6%で,前回と同じくSIer中3位と,地盤は揺るいでいない。

 FieldingとFsasで明暗が分かれたのは「コスト」と「ブランド」での比率。「コスト」ではFsasが前回調査より約6ポイント上昇(前回11.5%→今回17.0%)して大塚商会に次ぐ支持率を得たのに対し,Fieldingはほぼ前回並み(13.6%→12.9%)。逆に「ブランド」はFieldingが約8ポイント上昇(前回7.4%→今回15.7%)したのに対し,Fsasは約2ポイント低下(8.2%→6.4%)で12社中11位だ。

キヤノンMJの「提案」と「機能」が上昇

 得票数4位のキヤノンMJは,「提案」と「機能」の2項目の支持率が,前回調査より約12ポイントも上昇したのが目立つ。特に「機能」は前回32.2%→今回44.8%でSIer12社のトップ。前回11.9%で18社中16位だった「提案」への支持率も今回24.1%(12社中7位)にアップした。しかし「導入後のサービス」(前回33.9%)は8ポイント・ダウンの25.9%となっている。

 得票数6位の日立情報は,前回同様“SIerの平均的なイメージ”に近い。「導入後のサービス」(21.7%)と「過去の実績」(32.6%)の2項目で12社平均を8~10ポイント下回っているが,他の5項目は12社平均と2~4ポイント差に収まっている。前回18社中2位の高率だった「企業規模や体制」が低下(19.2%→8.7%),逆に「コスト」の支持率は前回より7ポイント以上アップ(7.7%→15.2%)して12社平均を上回った。

 次回8月27日公開の記事では,SIerの中で「利用したい理由」の有効回答数上位7位~12位の6社についての,『利用したい理由』を報告する。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,情報通信製品/サービス・ベンダーとシステム・インテグレーター(SIer)の主要企業各68社について,職務(担当システム)の領域で「今後利用したい」と感じるかを聞き,「今後利用したい」とした回答者に,そのベンダー/SIerを「利用したい」と感じる理由をたずねた。
 選択肢は「コスト」,「提案,業務分析,情報提供」,「製品/サービスの機能」,「導入後のサービス(保守,稼働継続)」,「企業規模や体制」,「ブランドや企業イメージ」,「過去の導入/利用実績」,「その他」の8つを提示。その中から,「利用したい」と感じる理由を最大3つまで選ぶよう求めた。そのベンダー/SIerを「利用したい」とした回答者数(無回答者を除く。図中のn)を100%として,それぞれの理由が選ばれた比率を集計した。
 今回の調査で30人以上から『利用したい理由』の回答が得られたSIerは,今日の記事で紹介した6社と,伊藤忠テクノソリューションズ,NTT-ME,新日鉄ソリューションズ,富士通ビジネスシステム,NECソフト,日立電子サービスの合計12社だった。
 評価対象企業全136社のリストは,本調査の設問の原文とともに,日経マーケット・アクセスの有償会員向けサイト「日経MA-INDEX 企業情報システム」で近日中に公開する予定。
 調査実施時期は2008年7月中旬,調査全体の有効回答は3062件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1126件。

図●主なシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい」理由
図●主なシステム・インテグレーター(SIer)に対する「利用したい」理由(回答数上位6社,n=45以上)