調査内容 IT関連キーワードの認知度・業務への影響・利用状況
調査時期 2008年6月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3163件(1207件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスでは,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,最新あるいは注目のIT関連キーワードを毎月三つずつ挙げて,その認知度,業務への影響と利用の状況について聞いている。2008年6月の調査では,「OpenOffice.org(ソフトウエアの名称として)」,「HSDPA (High Speed Downlink Packet Access)」,「PUE(Power Usage Effectiveness)」の3つのキーワードを取り上げた。

OpenOfficeは「一部で試験運用」が12.4%

 「OpenOffice.org(ソフトウエアの名称として)」はマイクロソフト(MS)Officeに対抗する,オープンソースのオフィス・アプリケーション。同じくMS OfficeにWebベースのサービスで挑戦する「Google Apps」(2008年3月調査)は,認知度で2.21と平均値に近いスコアを獲得したものの,“業務への影響度”2.26,“応用/利用状況”1.23とも,本調査でこれまでに取り上げたキーワード66種の下から10番目以内と低スコアだった(「調査概要」参照)。

 これに対して「OpenOffice.org」は,認知度スコア2.96,業務への影響度スコア2.80,応用/利用状況スコア1.62を獲得。認知度スコアでは歴代8位,影響度と利用状況はほぼ平均値で,「Google Apps」を大きく上回った。特に利用状況の「一部で試験運用」の12.4%は過去最高値。「Google Apps」と比較すると,業務への影響度の「自分の業務とかかわる」と「将来かかわる可能性がある」の合計比率は15.7ポイント(Google Appsは56.2%,OpenOfficeは71.9%),利用状況の「全社的に運用」~「導入を計画」の合計比率は16.8ポイント(Google Appsは10.5%,OpenOfficeは27.3%)上回った。

iPhone 3Gで注目の「HSDPA」は「システム業務に関係ない」が4割

 「HSDPA (High Speed Downlink Packet Access)」は携帯電話の高速データ通信規格。イー・モバイルやNTTドコモが提供する,いわゆる「3.5世代,下り最大7.2Mbps」の無線通信に採用されている規格だ。2006年8月末からドコモが下り最大3.6Mbpsで,2007年12月からイー・モバイルが下り最大7.2Mbpsでのサービスを開始。2008年7月からソフトバンクモバイルが通信サービスを提供する,アップルiPhone 3GもこのHSDPAに対応した携帯電話だ。

 今回の調査での「HSDPA」への反応は,「聞いたことがない」が61.0%。業務への影響度はスコア換算すると2.38で下から5番目の低さ。「自分の業務とかかわる」9.9%は下から10番目,「自分の業務に関係ない」40.9%は上から6番目で,関心がまだ高まっていないようだ。

 利用状況では「全社的に運用」が3.1%,「一部で運用」が4.8%。「一部で試験運用」を加えて9.3%という結果だった(「全社的に運用」~「一部で試験運用」の合計の66種平均は15.9%)。

システム室の電力効率尺度「PUE」は「具体化してない」も約9割

 「PUE(Power Usage Effectiveness)」は,前回5月調査で取り組み状況を調査した「グリーンIT」関連のキーワード。データ・センターやコンピュータ・ルームの全体の消費電力の使用効率の尺度で,米国の環境保護庁(EPA),データセンターの省電力化を推進する業界団体「The Green Grid」などが指標として推奨している。しかし今回の調査では,情報システム担当者にはまだほとんど認知,活用ともされていないという結果になった。

 “認知度”で「PUE」は「聞いたことがない」が83.7%と高率。前回2008年5月調査で「MAID(Massive Array of Idle Disks)」が記録した過去の最大値80.4%を3.3ポイント,3位の2007年10月調査の「AIR」(73.6%)を約10ポイントも上回った。認知度スコア1.26も,MAIDの1.33,AIRの1.46を下回り,最低の認知度を更新している。

 「聞いたことがない」回答者を除外して集計している“業務への影響度”(n=174)でも反応は鈍く,「自分の業務に関係ない」(36.8%)は66種の上から12番目。“業務への影響度スコア”は2.44で66種の下から9番目。同じく「聞いたことがない」回答者を除外して集計している“応用/利用状況”も,「PUE」は「具体化していない」(89.6%)が66種の上から5番目,“応用/利用状況スコア”1.23は下から10番目だった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,IT関連の最近のキーワードの認知度,自身の業務への影響をどう見ているか,回答者の所属組織での利用状況を聞いた。
 「認知度」は四択の質問で「業務に通用する十分な知識がある」を5,「内容をある程度理解している」を3.67,「名前だけは聞いたことがある」を2.33,「聞いたことがない」を1点にスコア換算した。
 同様に「業務への影響」は三択で「自分の業務と深い関わりがある」を5,「今は関わりがないが,将来関係するかもしれない」を3,「自分の業務には関係ない」を1点に換算。
 「応用/利用状況」は五択で「全社的に運用されている」を5,「一部の部門,業務で運用されている」を4,「一部の部門,業務で試験的に運用されている」を3,「導入を計画している」を2,「導入/利用計画はまだ具体化していない」を1点に換算した。なお,認知度で「聞いたことがない」とした回答者の「業務への影響」と「応用/利用状況」への回答は無効として集計から除外している。
 ちなみに本調査は今回分を含めて,通算すると66種のキーワードについての“認知度”,“業務への影響度”,“応用/利用状況”を調べてきた。認知度スコアは「生体認証」(2006年12月調査)の3.51,「日本版SOX法」(2006年9月調査)の3.46,「ERP」(2007年12月調査)の3.44がトップ3(66種の平均は2.26)。業務への影響度スコアは「日本版SOX法」の4.13がやや突出しており,「Windows Vista」(2006年11月調査)の3.82,「SLA」(2007年7月調査)の3.65が続く(66種平均2.90)。応用/利用状況スコアでは「KM(ナレッジ・マネジメント)」(2006年10月調査)の2.37が「SLA」の2.34とほぼ同率のトップで,「ERP」の2.20がこれに次ぐ(66種平均1.64)。
 調査実施時期は2008年6月中旬,調査全体の有効回答は3163件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1207件。

図1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度・業務への影響・利用状況

図2-1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度

図2-2●情報システム担当者の最新キーワードの業務への影響

図2-3●情報システム担当者の最新キーワードの利用状況