「ITとビジネスが密接になった」と言われて久しいが、実態は明らかではない。そこで今回の調査は、経営とITの関係を重点調査する新規テーマに加えた。ITがどれだけビジネスの変革に貢献しているか、すなわちITを活用したビジネスイノベーションへの取り組みを調べた。

 JUASではビジネスイノベーションを二つのタイプにわけた。一つは企業のビジネスモデルそのものを新技術で変える「ビジネスモデルの変革」、もう一つは日々の業務の内容を改善する「ビジネスプロセスの変革」である。これらの取り組みについて、IT部門と経営企画部門の双方に状況を聞いた。

IT部門は“脇役”

 まずビジネスイノベーションを企画・実行していく主体部署を尋ねたところ、IT部門は“脇役”との認識が明らかになった。IT部門、経営企画部門ともに「主体は業務部門」とする回答が最も多かった(図1)。

図1●ビジネスイノベーションの推進主体
図1●ビジネスイノベーションの推進主体
ビジネスモデルの変革とビジネスプロセスの変革について、実施主体をIT部門と経営企画部門に尋ねた
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 IT部門の回答を見ると、「ビジネスモデルの変革」に主体的にかかわっているとの回答はわずか18%。「ビジネスプロセスの変革」はそれよりも高いがそれでも28%だ。

 経営企画部門の認識はどうだろう。IT部門が中心となって「ビジネスモデルの変革」に取り組んでいるとの回答は10%、「ビジネスプロセスの変革」は21%といずれも芳しくない。

 IT部門は企業全体を横断的、客観的に見わたせる立場だ。他部署にはない特性を生かせば、ビジネスイノベーションにもっと積極的にかかわれるはずだ。そのためには経営層がIT部門を変革の主体部署として明確に位置づけ、変革のミッションを与えることが最も必要と考えられる。

 次にITを活用したビジネスイノベーションの進捗状況を経営企画部門に質問した。「同業他社並み」との回答が5割あったが、「遅れている」も3割あった(図2)。実態としてはまだまだ貢献の余地があるということだ。

図2●ビジネスイノベーションの進捗状況
図2●ビジネスイノベーションの進捗状況
経営企画部門に「ITを活用したビジネスイノベーションの進捗」を同業他社と比べてどう考えているかを尋ねた
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 ビジネスイノベーションを推進する人材は「確保できていない」との回答が68%で、「確保できている」の20%を大きく上回った。

 ビジネスイノベーションを遂行する上で経営はIT部門にどのような貢献を期待しているのか。そしてIT部門は期待に応えているのか。経営企画部門に質問した。

 経営層の期待が多かったのは、ビジネスモデルの変革よりもビジネスプロセスの変革に関する項目。「期待していて応えている」と「期待していて一部は応えている」を合わせた数字は、「現場の改善」で66%、「業務プロセスの革新」で61%、「組織を支える基盤の確立」で45%に上った。

 これに対して「ビジネス自体の変革」「商品/サービスの創造」「顧客の確保/拡大」といったビジネスモデルの変革にからむ項目に対する期待は相対的に低かった。「期待していて応えている」と「期待していて一部は応えている」の合計は、それぞれ31%、18%、21%にとどまった。

 ITを活用したビジネスイノベーションを推進するためには、「経営トップの理解」「IT部門の役割の拡大と位置づけの革新」「ビジネスイノベーションを推進する人材の育成/確保」「IT投資評価の品質向上」など、まだまだ数多くの課題が残されている。