「Active Directory」の導入率は39.8%で,63.1%の企業が私物ノート・パソコンのLAN接続を禁止している。その一方で,27.3%の企業ではWindows Updteがエンドユーザー任せになっており,46.8%の企業で,システム設定の変更が自由にできるパソコンの「管理者権限」をエンドユーザーに与えていた--。ITproが7月に実施したWindowsクライアント管理に関する実態調査で,このような現状が明らかになった。

 従業員が使用するパソコンを起点に発生するセキュリティ事故,例えばウイルス/ワームの蔓延や,機密情報の漏洩などが問題視されるようになって,かなりの年月が経過した。もはや,従業員が使用しているWindowsクライアント・パソコンの管理を「やっていない」と述べる企業は皆無であろう。とはいえ,その管理の実態は企業によって差があるはずだ。

 そこでITproでは,読者が所属する企業や団体において,どのようなWindowsクライアント管理が実施されているかを調査した。同様の調査は2005年2月から3月にかけて,「日経Windowsプロ」(休刊中)でも実施している(関連記事:意見が真っ二つに分かれたクライアント管理方針,あなたはどちらを選びましたか?)。本記事では両者を比較することで,Windowsクライアント管理の実態がこの3年半でどのように変化したかも考察している。

 今回の調査で提示した設問は,以下の通りである。Windowsクライアントがどのような方針に基づいて管理されているのかを,システム管理者やエンド・ユーザーの立場である読者に質問している。有効回答数は1826件で,調査対象のプロフィールは本記事末尾に掲載している。

  • あなたの関与しているWindowsシステムでは,Windowsのドメインを構築していますか?
  • Windowsクライアントをどのような方針で管理していますか?
  • Windowsクライアントのセキュリティ更新(Windows/Microsoft Updateなど)をどのように実施していますか?
  • パソコンの管理者権限(システム・ファイルやレジストリの変更,ユーザー登録やネットワーク設定など,パソコンの管理作業に必要な権限)がエンドユーザーに与えられていますか?
  • 私物のノート・パソコンなどを会社のネットワークに接続できますか?

4割に近づくActive Directory導入率

 まずは,Windowsクライアント管理の基本となるActive Directoryの導入実態を見てみよう(図1)。Active Directoryは,Windows Serverの「CAL(クライアント・アクセス・ライセンス)」だけで使用できる最も手軽なクライアント管理機能だ。今回の調査では,39.8%の読者が導入しているドメインとして「Active Directory」を挙げている。2005年の調査と比べて導入率は4.3ポイント増加し,4割に近づいている。

図1●Windowsのドメインを構築していますか?(複数回答可)
図1●Windowsのドメインを構築していますか?(複数回答可)
Active Directoryの導入率は4割に近づいた。2005年1月にWindows NT Server 4.0の延長サポートが終了したことから,NTドメインの使用は2005年に比べて激減している。

 導入しているドメインとして「NTドメイン」を挙げた読者の割合は15.9%だった。前回調査と比べて激減してるのは,やはり「Windows NT Server 4.0」のサポートが,2005年1月で終了したためだろう。もっとも,未だに1割以上の読者の元でNTドメインが使われているのは,驚きでもある。

 読者の勤務先の従業員数別で見たActive Directory導入率は,図2の通りであった。100人未満の企業では,Active Directoryの導入率が大きく平均を下回っているが,それ以上の規模になると,いずれも4割程度の導入率を記録している。100人以上の規模になると,Active Directoryのようなクライアント管理ソリューションが必要になるということを示しているだろう。

図2●従業員数別Active Directory導入率
図2●従業員数別Active Directory導入率
100人未満の企業では,Active Directoryの導入率は3割未満と低い。しかし100人を超える規模の企業では,総じて4割以上がActive Directoryを導入している。

未だに多い「クライアント管理はエンドユーザーの責任」

 続いて,読者の勤務先でWindowsクライアントがどのような方針に基づいて管理されているかを見てみよう(図3)。これは「Windowsクライアントの管理責任」が,システム管理者にあるのか,エンドユーザーにあるのかを聞いたものである。

図3●Windowsクライアントをどのような方針で管理していますか?(最も近いものひとつだけ)
図3●Windowsクライアントをどのような方針で管理していますか?(最も近いものひとつだけ)
システム管理者がWindowsクライアントを集中管理するか否かを巡っては,今回の調査でも意見が分かれた。

 今回の調査でも,Windowsクライアントを「システム管理者が責任を持って管理する」とした読者の割合が44.7%であるのに対して,「エンドユーザーが規則に従って管理する」とした読者の割合が34.6%と,意見は完全に分かれた。

 これは,クライアント管理をすべてシステム管理者が担当すれば,厳重な管理が実現するが,エンドユーザーの使い勝手は悪くなるためであろう。厳重なクライアント管理と,エンドユーザーの使い勝手はトレードオフの関係にあるわけだ。

 それでも,クライアント管理をエンドユーザーの裁量に任せているという企業の割合は,企業の規模が大きくなるにつれ減少している(図4)。未だにクライアント管理に関するルールすら設けていないという企業は,早急にルールの確立を目指すべきである。

図4●従業員数別で見たWindowsクライアントの管理方針
図4●従業員数別で見たWindowsクライアントの管理方針
システム管理者がWindowsクライアントを集中管理するか否かは,企業の規模に関係なく意見が分かれている。