このところノート・パソコンの市場に新しい動きがある。台湾ASUSTeK ComputerのEee PCに代表される,低価格で小型のノート・パソコンが次々と登場している。これまで,モバイルノート,ミニノートなどと呼ばれるタイプは,大きめのノート・パソコンより価格が高いのが一般的だった。それが5万円前後で購入できるようになった。

 もちろんスペック的には,いろいろと限定される部分があるので,これまでのパソコンと同列に比較はできない。しかし,デスクトップと同じOS,メーラー,ブラウザ,オフィス・ソフトなどが動作する。限られた用途なら十分使い道はありそうだ。

 低価格小型ノート・パソコンの開発元は台湾メーカーが多いが,大手の米Hewlett-Packardが「HP 2133 Mini-Note PC」を投入して以降,この分野の認知度は一般ユーザーにまで広がった感がある。そろそろオフィスや仕事での利用を考えている人がいるだろう。

 しかし,それ以前にオフィスにおけるノート・パソコンの利用度はどれくらいなのか。どんな風に使われているのか。ITpro読者に対して「ビジネスで利用するパソコンに関する調査」を実施した。調査期間は2008年6月3日から6月10日まで。2020人から回答を得た。

 その結果,約5割の方々がオフィスで何らかのノート・パソコンを利用している。軽くて,バッテリーの持ち時間が長いものが理想だが,会社支給のパソコンでは選択肢が限られているのが悩み,といった実態がわかった。

約半数が会社でノート・パソコンを使っている

 まず,仕事をしている方々に対して,勤務先でどんなパソコンを使っているかを聞いた(図1)。デスクトップ型が最も多いのは当然だろう。ノート型に比べて価格が安く,周辺機器や部品の交換がしやすいので長く使えるからだ。

 しかし逆に,デスクトップ型だけを使っている層はもはや5割に満たないという見方もできるだろう。そして約半数(49.3%=19.2+16.8+13.3)の人は,何らかのノート・パソコンを使っている。

図1●勤務先でのノート・パソコンの利用率は約半数
図1●勤務先でのノート・パソコンの利用率は約半数

 では,仕事上でノート・パソコンを社外に持ち出して活用している人はどれくらいいるのか。図2によると,常時持ち歩くという率は14.7%,時々持ち出して使うという率が27.6%だ。つまり,4割以上の方々は社外でもパソコンを使っているようだ。これに,自前のノート・パソコンを持ち歩いているという率を加えると5割を超える。

図2●4割以上は社外でもパソコンを使う
図2●4割以上は社外でもパソコンを使う

 これは事前に予想していた値よりも多かった。平日に電車内や駅のプラットフォームなどで,ノート・パソコンを使っている人はよく見かけるが,それでも全体からすれば3割程度だろうと思っていた。ITpro読者ならではの結果かもしれない。

軽さとバッテリー持続時間が重要ポイント

 モバイル活用の率が思いのほか高い。となると,ノート・パソコンを選択する際のポイント(図3)もおのずと見えてくる。やはり,携帯性を考慮して,「軽さ」が一番になっている(67.8%)。続いて「バッテリーの持ち時間(53.4%)」「堅牢性(42.8%)」といった項目に票が集まっている。

 軽さ・薄さが重要という一方で,画面サイズをポイントに上げる人も多い(37.4%)。画面のサイズ(表示サイズ)は大きいほうが明らかに作業しやすいからだ。本体が「小さい」(24.8%)ことよりも重視されている。最近のノート・パソコンはB5ファイル・サイズのものでも,XGA(1024×768ドット)以上が普通だ。そのあたりが臨界線かもしれない。

図3●重要ポイントは,軽さ,バッテリーの待ち時間,堅牢性の順
図3●重要ポイントは,軽さ,バッテリーの待ち時間,堅牢性の順

 ところで,この質問では別の意味で納得したことがある。それは「その他」の項目に,記述されていた答えだ。「会社指定の機種から選択」「仕事用のPCは自分で選べない」「会社支給なので選択権なし」といった意見が目立った。考えてみれば,会社で利用するパソコンを自由に選べないところは少なくないだろう。ノート・パソコンの選択について自分なりのポイントはあれども,納得できる機種は選べないというジレンマがあるわけだ。

 最後に,冒頭で触れた低価格小型ノート・パソコンについて聞いてみた(図4)。現段階では,すでに実機を持っているという人はまだ少ないだろう。だが,筆者のように気になっている人はいるはずだ。

図4●最近,続々登場している低価格小型ノート・パソコンはやはり気になる
図4●最近,続々登場している低価格小型ノート・パソコンはやはり気になる

 「大いにある」が34.5%,「少しはある」が41.5%という結果になった。低価格小型ノート・パソコンについて,7割以上が関心を示していることがわかる。

 ただ,仕事用パソコンとして,実際に普及するかどうかはまだわからない。図3の結果から推測すると,軽くてバッテリー持続時間が長くても,表示サイズが狭いのでは嫌われる可能性もある。一方で,5万円前後という安さは魅力でもある。

 社外で仕事をするためのツールとしては,ほかにもスマートフォンやPDAなどがある。特に,米Appleの「iPhone」やウィルコムの「WILLCOM D4」などの携帯端末は,価格帯や機能性で低価格小型ノート・パソコンの競合となる。これらが国内で出そろった後の2008年後半はおもしろいことになりそうだ。年末ぐらいにもう一度,社外活用の仕事ツールについての調査を行ってみたい。