この調査では運用管理ソフトとして,企業システムを統合的に管理する比較的大型の製品をイメージしている。このため,バックアップ,資産管理,ログ管理などの単機能ツールよりも,複数の運用管理機能を包含する「統合運用管理パッケージ」が上位にランクインしている。

 導入シェアは,日立製作所のJP1が29.6%でトップ,富士通のSystemwalker」が27.9%でこれに続く(図1)。これら上位2製品の統合運用管理パッケージから離されて,クオリティの資産管理ツール「QND Plus」が14.6%で3位だった。

図1●運用管理ソフトのパッケージ導入率(左)と製品シェア(Nは有効回答数)
図1●運用管理ソフトのパッケージ導入率(左)と製品シェア(Nは有効回答数)

図2●運用管理ソフトの利用予定シェア(Nは有効回答数)
図2●運用管理ソフトの利用予定シェア(Nは有効回答数)
実績のあるJP1が上位にくることは当然予想されたが,注目すべきは,Systemwalkerが意外にもJP1にキャッチアップしてきていることだ。この背景には,富士通の強力な販売チャネルや既存システム・ユーザーへの提案活動が実を結んでいることがあるようだ。

 さらに,今後の導入予定シェアも興味深い。サンプル数が124件と少ないため参考値として見ていただきたいが,富士通のSystemwalkerが27.4%で,日立製作所のJP1(26.6%)を抑えてトップになっている(図2)。

富士通Systemwalkerは年商100億円未満の企業ではシェア1位

 中堅・中小企業を対象とする今回の調査では,トータルの導入シェアはJP1がトップだった。だが,年商規模の小さい層(100億円未満)に限ると,Systemwalkerのシェアは35.7%で,JP1の22.6%を引き離してシェア1位を獲得している。今後もこの2社を中心として,統合運用管理システム(単機能の運用管理ツールは除く)の主導権争いが続くだろう。

 気になるのが,日本IBMの「Tivoli」やNECの「WebSAM」,日本ヒューレット・パッカードの「HP Software(旧OpenView)」といった製品群の存在感が,中堅・中小企業ではあまり感じられないことだ。理由として,日本IBMや日本HPは顧客が大企業に偏っていること,NECは運用管理ソフトの販売戦略で出遅れている点などが考えられる。

 満足度を見ると,シェア上位の5製品の中で最も高い評価を得ているのがクオリティのQND Plus(75.5)。次いでJP1(72.8),Systemwalker(72.1)となっている(図3)。

図3●シェア上位だった運用管理ソフトの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した(Nは有効回答数)
図3●シェア上位だった運用管理ソフトの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した(Nは有効回答数)

 満足度評価でトップとなったQND Plusだが,上位5製品の中でQND Plusだけが機能を絞り込んだ“資産管理”のツールであり,ほかの4製品は統合運用管理パッケージだ。QND Plusの評価が高い理由は,導入目的がはっきりしているため,費用対効果が判断しやすかったからと推測される。

 資産管理の分野では,従来のライセンス管理とともにクライアントに不審なアプリケーションがインストールされていないかを管理したいという需要が増えており,情報漏えい対策の観点からも必要性が増している。次回の調査からは「統合運用管理パッケージ」と「資産管理」「ログ監視」などの機能別パッケージ製品を分けて調査・分析することとしたい。

 次回は戦略系ITを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。