中堅・中小企業を含めて,企業システムにおけるネットワーク利用は最早当たり前のことになっている。こうした状況で,セキュリティ対策ソフトは単なる導入率ではなく,どのレベルまでの対策を施しているかを問題にすべき時期となっている。

 今回の調査では,従来通りの切り口でパッケージ製品のシェアと満足度の結果をお知らせする。だが,来年以降の調査では,セキュリティ対策ソフト単体のパッケージ導入状況を聞くだけでなく,運用管理全体における位置付けまで調べるものに見直したいと考えている。

導入,利用予定ともウイルスバスターが半分を占める

図1●セキュリティ対策ソフトの製品シェア
図1●セキュリティ対策ソフトの製品シェア
(Nは有効回答数。一企業で複数製品を導入している場合は製品数でカウントするため,有効回答数は回答企業数1265を上回っている)
 ここ数年,セキュリティ対策ソフトの導入シェアは,トレンドマイクロの「ウイルスバスター」の独走状態にある。ウイルスバスターは企業向けのクライアント・パソコンだけでなく,コンシューマ向け市場での認知,実績でも群を抜いた存在である(図1)。

 トップはトレンドマイクロのウイルスバスターが49.5%で,ほぼ半分を占めている(前回は48.4%)。2位がシマンテックの「ノートンアンチウィルス」で28.3%(同31.4%)。3位がマカフィーの「McAfee」で13.5%(同14.5%)だった。なお,ここでのシェアは,セキュリティ対策ソフトの販売数量全体に対する各製品の販売数量の割合とお考えいただきたい。

図2●セキュリティ対策ソフトの利用予定シェア
図2●セキュリティ対策ソフトの利用予定シェア
(Nは有効回答数)
 セキュリティ対策ソフトの利用予定シェアは,トップがトレンドマイクロのウイルスバスターの51.3%(前回は48.1%)で,やはり半数を占める(図2)。2位がシマンテックのノートンアンチウィルスで25.7%(同31.1%)。3位はマカフィーのMcAfeeで13.1%である(同15.6%)。利用予定シェアを見ても,ウイルスバスターの「デファクト化」は今後も続くと予想できる。

 満足度を見ても,ウイルスバスターはシェア上位3製品において最も高い評価を得ている(77.2)。これに,マカフィーのMcAfee(74.4),シマンテックのノートンアンチウィルス(73.0)が続いている(図3)。

図3●シェア上位だったセキュリティ対策ソフトの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した
図3●シェア上位だったセキュリティ対策ソフトの満足度。5段階評価(0,20,60,80,100)の加重平均で算出した
(Nは有効回答数)

 セキュリティ対策ソフトはクライアント・パソコン向けとサーバー向けがセットで提案されることが多い。他のベンダーはウイルスバスターという単体製品に対抗するのではなく,ファイアウォールやウイルス対策ソフトを一体化したスイートタイプの製品や,運用管理ソリューションなど別の切り口で攻めることを考えるべきかもしれない。

 とはいえ,この分野におけるウイルスバスターの独走状況は,今後もしばらく続くことが予想される。短期的には他社がこの分野で一気に取って代われる状況にないことは確かである。

 次回は運用管理ソフトを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。