中堅・中小企業の業務システムも,ようやく本格的なパッケージ利用の時代に入ったといえるだろう。前回の同調査でも明らかだったが,基幹系業務システムのパッケージ化比率は,ほぼ100%へ向かって収束しつつある。従来からパッケージとして導入されてきたグループウエアなどのコラボレーション系アプリケーションと併せて,中堅・中小企業でもITアプリケーションのパッケージ化がここ数年でデファクトになったといえる。

 さらに,2007年半ばから大きな話題となって注目を集めているのが,ネット経由のサービスとしてソフトウエアの機能を提供する「SaaS(Software as a Service)」だ。業務システムの機能をSaaSで提供するベンダーも,すでにいくつか登場している。

 しかし,実際にSaaSが盛り上がり見せているのは,CRM(顧客関係管理)など,まだ一部のカテゴリに過ぎない。現在は,SaaSを推進するための「基盤作り」が進んでいる段階であり,実際にアプリケーションがSaaS化するのはもう少し先になりそうだ。その理由には,SaaSを必要とする分野が顕在化していないこと,ベンダー側のビジネスモデルが確立していないことなどがある。

 中堅・中小企業にとって,パッケージ利用の下地がようやく出来上がり,その有効性が問われている段階だ。社会的な基盤としてのITやネットワーク・インフラは整いつつあるものの,SaaS化への距離感は相当にあると言わざるを得ない。

一目瞭然な業務システムのパッケージ化率の高さ

 かつてはオーダーメイドで作られていた業務アプリケーションのほとんどが,パッケージ化された。これは「経営の業務システムのIT化が汎用性を持った」ことの証明と言えるだろう。

 主要な業務アプリケーションのパッケージ導入率を見ると,財務会計は92.1%,人事管理90.5%に達している。ほんの数年前まで,オーダーメイドがほとんどだった販売管理ですら,パッケージ導入率は63.0%で過半数を超えている()。

図●業務アプリケーションのパッケージ導入率(Nは有効回答数)
図●業務アプリケーションのパッケージ導入率(Nは有効回答数)

 今後は,ユーザー企業ごとの業務プロセスを前提にシステムを開発する際にも,「フレームをパッケージで構成して,微調整する」ことが当たり前になる。さらには,SOAのような考え方に立てば,将来は「機能を部品化して,最適なものに近いアプリケーションとして構築できる」ようになるはずだ。

 今回の連載では,こうした時代背景を踏まえた上で,アプリケーション分野ごとに中堅・中小企業でどのような製品が使われているか,どのように評価されているかを定量的に分析した結果を紹介していく。

 主要なアプリケーション,財務会計や販売管理などの基幹業務系パッケージ,グループウエアなどのコラボレーション系パッケージ,CRMやSFAなどのフロント系パッケージの利用実態と評価,さらには今後の利用意向なども分析する。

 次回は,まずグループウエアを取り上げる。

 なお回答企業プロフィールなどの調査概要については,こちらをご覧ください。

■伊嶋 謙二 (いしま けんじ)

【略歴】
ノークリサーチ代表。大手市場調査会社を経て,98年にノークリサーチを設立。IT市場に特化した調査,コンサルティングを展開。特に中堅・中小企業市場の分析を得意としている。07年には中堅・中小企業のIT部門向けQ&Aサイト「シス蔵」をテクネット社と立ち上げた。