データセンターはインターネットやWebサイトの普及,セキュリティー・ニーズの高まり,ASPやアウトソーシング・サービスなどの登場とともに,これらのニーズを取り込みながら発展してきた。このためユーザーがいつデータセンターを利用し始めたのかという時期は,ニーズを知るうえで有力な参考情報となる。

 ユーザーのデータセンター利用開始時期を調査した結果では,会社法が成立し,上場企業の内部統制システムの構築基本方針策定が義務付けられた2005年以降の利用が4割を占めた(図1)。直近の約3年間でデータセンターの利用が急増したことが分かる。2005年は個人情報保護法が施行された年でもある。Winnyによる情報漏えい事件なども急速に増えた。さらに2006年頃からは,事業継続ニーズの高まりを受けて,BCP(事業継続計画)を想定した機能を強化するデータセンターが登場してきた。

図1●データセンター利用開始時期
図1●データセンター利用開始時期
2002年以前からのユーザーが31.6%に上る(有効回答数=493)。

変更決定/検討中が約13%に上る

 その一方で,国内のDSL加入者数が急速に伸びて500万件を突破した2002年以前にデータセンターの利用を開始したユーザーも3割を超えた。2002年よりも前というと,データセンターが売りにしていた機能は現在とは若干異なり,インターネットへの高速接続や高速通信によるwebサイトの安定稼働などを主要なアピール・ポイントとするデータセンターが多かった。

 最近は災害対策の強化を求めるユーザーが増えるなどニーズが変化しており,新たなニーズに対応するデータセンターも登場してきた。このようなことからすると,2002年以前などの早い時期からのユーザーが今後,他のデータセンターへの乗り換えを検討する可能性は高いと考えられる。

 また「2002年以前」には,国内でインターネットが広く普及する以前,あるいはデータセンターというよりもむしろコンピュータ・センターと呼ばれていたころのユーザーも含む。このようなユーザーも,最新の災害対策やその他の機能を求めてセンターの乗り換えを検討する可能性は高い。

 実際に,最も重要と位置付けるデータセンターのユーザーに乗り換え意向を調査したところ,2002年以前にデータセンターの利用を開始したユーザーでは4.5%弱が「既に変更することを決めている」と回答した。ユーザー全体の回答では変更決定済みという回答は2.6%であり,わずかだが2003年以降の利用開始ユーザーに比べると変更を決定したユーザーの比率は高い。「現在検討中」も合わせると13%弱に上る。

月額「1000万円超」を支払うユーザー,3/4が2002年以前から利用

 データセンターを変更するとしたら,どのような点を重視するかを尋ねた結果では,重要なデータセンターの選択理由と同様に「料金」を挙げるユーザーが最も多かった。そこで,実際に支払っている月額料金と利用開始年の関係を見ると,図2のようになる。

図2●データセンターの月額利用額と利用開始年の関係
図2●データセンターの月額利用額と利用開始年の関係
月額利用料「1000万円超」は3/4が2002年以前に利用開始(nは有効回答数)。

 まず目に付くのは月額「1000万円超」の部分である。月額「1000万円超」を支払っているユーザーの76%,つまり3/4は2002年以前にデータセンターの利用を開始したユーザーだということが分かった。利用開始年からみて設備が古くなっているデータセンターもあると考えられるため,かなりのユーザーが実際にデータセンターの変更に動くと予想される。

 支払料金帯別のユーザー比率は,月額「10万円以下」と同「10万円超50万円以下」がそれぞれ全体の約1/4,「100万円超500万円以下」が約20%,「1000万円超」が約10%だった。