データセンターというと,通信キャリアやインターネット・プロバイダーなどの通信インフラ提供企業を思い浮かべる人が多いかもしれないがシステム・インテグレーターが運営するデータセンターもあれば,ASPサービス提供者がデータセンターの機能を提供しているケースなどもある。それぞれ専業があり,それに応じて各データセンターにも特色があるが,「SIerを通じて契約」しているユーザーや「ASPなどのサービスとして利用」しているユーザーの場合,現状に満足しているだろうか。

Sier経由のユーザー,1割以上が変更決定または検討中

 一つの指標としてユーザーのデータセンター変更意向を見てみると,「SIerを通じて契約」しているユーザーの場合,データセンターを「既に変更すると決めている」という回答が3%あり,ユーザー全体の比率よりも若干高かった。さらに「現在変更を検討中」を合わせると11.3%と1割を超え,やはりユーザー全体の回答比率よりも少し高かった。

 第4回の記事「3割以上が02年以前から利用,乗り換え予備軍に」の中で報告したように,「SIerを通じて契約」しているユーザーと「ASPなどのサービスとして契約」しているユーザーを合わせると,データセンター・ユーザー全体の約1/3を占める。SIer経由の契約が約2割,ASP利用が約1割である。SI経由でのユーザー,ASP利用のユーザーのいずれも「現在変更を検討中」としたユーザーはそれぞれ7~8%に上った。「近い将来変えたい」を加えると,さらに比率は上がる。

 データセンターを変更したいと考えているユーザーは,いったいどのような理由で変更を考えるようになったのだろうか。理由として挙がったのは,「データセンターを統合したい」,「保守メニュー」,「月額料金」,「ネットセキュリティ」などだった。データセンターの統合は変更希望者の事情によるものだが,「保守メニュー」が変更の理由となるのは,サービスの種類や内容,あるいは質に不満があったからだろう。より充実した内容や豊富なメニューを求めていると考えられる。

 変更理由の一つとして月額料金が挙げられているように,料金が高い点を不満に感じているユーザーは回答者全体と同様に圧倒的に多い。しかし,その一方で保守メニューに不満を持つユーザーもいることからすれば,データセンターは場所やサーバーを貸すだけでなく,コンピューターの保守・運用をはじめとする様々な付加価値を売るという進み方もありそうだ。また,それが他の事業者との差異化にもつながるだろう。

 SIer経由,ASP利用によるユーザーについても,データセンターの選択に大きな影響を及ぼす利用開始時期を調べると,「SIを通じて契約」しているユーザーではデータセンター・ユーザー全体の傾向(第4回記事を参照)と同様に,利用年数6年以上のケースが多かった。「2002年以前」からと回答したユーザーが28.6%と3割近くに上る。2003年以降は,各年とも十数パーセント程度ずつ分散していた。

 ASP利用によるデータセンター・ユーザーも最近のユーザーばかりではない。SIer経由と同様に最も多かったのは「2002年以前」(23.6%)からの利用だった。かつてのコンピュータ・センターあるいは計算センターを利用してコンピュータの処理能力の提供サービスを受けていたユーザーなどが多く含まれているようだ。このほかには,2005年から2006年にかけて利用開始が集中しており,2005年または2006年の2年間にデータセンターの利用を開始したユーザーが合わせて40%を占めた。