データセンターをどのように選んだらよいのかは,ユーザーがデータセンターをどのような用途で利用するかによって異なってくる。例えば,アクセスの集中にも耐えられるようなWebサイトを運営するためなのか,それとも自社の情報システムを安全な場所に置きたいのかといったことだ。

 また,利用したい通信事業者が決まっているのであれば,それによってデータセンターの選び方が変わってくることがある。データセンター事業者の中には回線事業者の選択に制約を設けているところもあるからだ。通信回線を含めてシステムを二重化をしたい場合も同様。さらに,一つのデータセンターを利用するのか,複数のデータセンターに機能を分散させたり,あるいはバックアップの機能を持たせるのかといった構成プランによっても変わってくる。

月額利用料1000万円以上では約65%が複数センターを利用

図1●利用しているデータセンター数
図1●利用しているデータセンター数
1カ所のみの利用が7割を超える(有効回答数=493)。
 今回の調査では利用しているデータセンター数について調べたが,現状での利用数は1カ所のみが72.0%と圧倒的に多かった(図1)。複数のデータセンターを利用していたのは28.0%であり,内訳は2カ所が16.6%,3カ所以上は11.4%だった。複数のデータセンターを利用するとユーザー側の投資額も大きくなることから,回答者の勤務先の従業員規模が大きくなるにつれてデータセンター利用数が増加する傾向が見られた。

 さらに,企業規模よりもむしろ最も重要なデータセンターに支払っている利用料金によってデータセンター利用数の相違が大きいことが分かった(図2)。最も重要なデータセンターに月額1000万円超を支払っているユーザーでは,複数のデータセンター利用が回答者全体の比率の2倍以上に上った。

図2●利用料別のデータセンター利用数
図2●利用料別のデータセンター利用数
月額利用料1000万円超では複数のデータセンター利用の方が多い(nは有効回答数)。

 これよりも支払額が下がる500万円超1000万円以下でも,2カ所と3カ所以上の利用がそれぞれ23.1%で,合計46.2%に上った。サンプル数が少ないことを考慮する必要があるが,最も重要なデータセンターに高い料金を支払っているユーザーほど,データセンターを複数カ所利用するケースが多かった。つまり,最も重要なデータセンターに大型投資ができるユーザーがデータセンターを複数利用しており,逆に月額50万円以下のユーザーの場合は,1カ所のみの利用が9割近くを占めた。

「自社契約」「自社/グループが運営」「SIer/ASP経由」が1/3ずつ

 データセンターと一口にいっても,データセンター事業者を自社で選んで契約する以外に,自ら運営したり,SIerなどを通じて契約したりといったいくつかの契約形態がある。実際にどのような契約が多いのかを調べた結果は,回答者全体で「自社で直接契約」が最も多く,36.3%だった。ただ,2位以下との比率の差は小さく,「自社やグループ会社が運営」が31.6%,「SIerを通じて契約」と「ASPなどのサービスとして契約」が合わせて31.1%と続き,それぞれ約1/3ずつを占めた。

 最近はSIerやASPの動きが活発になっており,SIerやASPがユーザーにとってどのようなメリットを提供していけるのかが注目される。SaaS(Software as a Service)型のソフトウエアが中堅・中小企業にまで浸透した場合には,契約形態比率が大きく変動することになるだろう。

図3●レンタル・サービスとコロケーション・サービスの利用比率
図3●レンタル・サービスとコロケーション・サービスの利用比率
サーバー設置場所を借りて自社で設置するユーザーが2/3近い(有効回答数=433)。

 データセンターのサービスには,大きく分けてサーバーを貸すサービス(レンタル・サービス)とサーバーを設置する場所を貸すサービス(コロケーション・サービス)がある。利用の状況は図3のように,サーバー設置場所をラック単位などで借りて自社で機器設置しているユーザーが約65%だった。利用ラック数はユーザーによってバラツキがあり,従業員1000人以上のユーザー規模で平均75ラック強,同99人以下の規模で平均約14ラックだった。業種によってはより大きな差があり,金融/証券/保険業では平均377ラックと目立って多い。