「企業ユーザーが新たに導入しているクライアントOSは,Windows VistaよりもWindows XPの方が多い」---。Windows 2000やWindows 98系の旧式OSからのリプレース先として選ばれているOSは,やはりというか,まだまだWindows XPが主力のようだ。Vistaを導入した理由では,将来の全社展開のための動作検証や性能評価といった先行導入事例が,いまだに目立つ。ITpro読者に対して実施したアンケート調査から,Windows Vistaに関するこうした現状が明らかになった。

 ITproでは,2008年3月26日から4月2日にかけて,「パソコンOSに関するアンケート」と題して,通算で2回目となるWindows Vistaの導入に関するアンケートを実施,1304人から回答を得た。今回の調査は,8カ月前の2007年7月26日から31日にかけて実施した第1回調査の続編に当たる。前回は,Vista発売からおよそ半年を待って導入状況を調べた。一方,今回の第2回調査はVista Service Pack 1(SP1)登場のタイミングで実施した。なお,図のグラフ・データでは便宜上,今回の調査を2008年,前回の調査を2007年とする。

Vistaを抑えてXPのシェア拡大が目立つ

 まず,勤務先のクライアントOSに何を使っているかという設問に対しては,8カ月前と同様,Windows XPが圧倒した。そのシェアは,8カ月前が76.9%,今回が82.2%である(図1)。ここで注目すべきは,そのシェアの伸びだ。実に5.3ポイントも伸ばしている。一方でWindows XPのライバルであるWindows Vistaの場合は,3.2%から3.9%へと,わずか0.7ポイントしかシェアを拡大できていない。

クライアント・パソコンのOSの推移
図1●クライアント・パソコンのOSの推移
よく使うクライアント・パソコンのOSについて聞いたところ,勤務先では8カ月前と比べてWindows XPのシェア拡大が目立つ。Windows 2000や98系からの移行先として,最新OSであるWindows Vistaよりも,枯れて安定したOSであるWindows XPを選んでいる様子がうかがえる。

 Windows 2000と98系を合わせると,8カ月前に14.5%を占めていたシェアは,現在では10.7%にまで落ち込んでいる。こうした旧式OSから移行する先として,Windows VistaよりもWindows XPを選ぶユーザーが多い,という状況が見て取れる。このように,Windows XP人気が依然として衰えていない理由は,Windows XPがまだまだ現役のOSである上に,登場してからの年月が長いため,安定したOSとして高い評価を得ているからではないだろうか。壊れたパソコンの買い替えなどの小規模な案件では,その時点での全社標準OS(Windows XP)に合わせる,という事情もあるかも知れない。

 一方,自宅のパソコンではどうかと言うと,8カ月前と比べてWindows Vistaの構成比率は14.2%から16.8%へと微増。一方でWindows XPは65.6%から65.0%へと,変化という変化が見られない。Windows Vistaがプリインストールされているパソコンが多いことを考えると,8カ月も経過した割にはWindows Vistaのシェアの伸びが小さいように感じるが,これはITpro読者が会社同様に自宅でもWindows XPを志向していることによるのではないかと記者は思う。

買いやすいHome Premiumが優勢に

 Windows Vistaの4つの主要なエディションは,価格が安い順に,Home Basic,Home Premium,Business,Ultimateとなる。Home Basicは機能を切り詰めてあり,AeroなどのVistaの目玉機能も備えない。一方でUltimateは,この4つのエディションの中ではフル機能版にあたる。残る2つは,Home Premiumが一般消費者向け,Businessが企業向けの製品となる。Home Premiumは,Businessが備えないマルチメディア機能を持つが,一方でBusinessはHome Premiumが備えない,業務用途に向いた運用管理機能を備える。

 勤務先でWindows Vistaを導入しているユーザーに対して使用中のエディションを聞いたところ,8カ月前の調査とはいくぶん異なった興味深い結果が得られた(図2)。8カ月前には実に46.7%を占めていたBusinessのシェアが現在では38.8%にまで落ち込み,反対に9.1%に過ぎなかったHome Premiumが18.4%と増加している。

使っているWindows Vistaのエディションの推移
図2●使っているWindows Vistaのエディションの推移
勤務先のWindows Vistaのエディションは,運用管理機能が充実しているBusinessのシェアが下がる一方で,より入手しやすいHome Premiumの比率が向上している。自宅においても,フル機能のUltimate比率が下がる一方でHome Premiumのシェアが拡大している。店頭で入手しやすく価格も比較的安価なエディションが成長するということは,それだけWindows Vistaが一般化してきたということの証なのではないだろうか。

 Home Premiumの特徴は,価格が下から数えて2番目とエディションの中では比較的安めである点と,プリインストール機がどこでも簡単に手に入ることである。では,こうした入手しやすいHome Premiumが企業でシェアを急拡大したのは,いったい何故なのか。

 記者が想像するに,8カ月前の段階では,主に情報システム部門などのコアなユーザーが,アプリケーションの動作確認や性能検証といった評価作業でBusinessを導入していた。こうした先行事例が目立っていた。それが,現在では業務部門などのライト・ユーザーが,どこでも簡単に買えるHome Premium搭載機を購入しているのではないだろうか。大企業などではOSは全社一括導入のケースが多いように思うが,もし中小企業などで自由にパソコンを買える立場であれば,量販店でHome Premium搭載機を1台だけ買ってくるといったケースもあるだろう。

Vistaへの抵抗感は薄れてきている

 実際,Windows Vistaへの抵抗感は,徐々に薄れてきているように思う。アンケート結果にも,それは表れている。勤務先でWindows Vistaを導入していないユーザーにWindows Vistaの導入意思を聞いたところ,8カ月前と比較して,若干の進展が見られたのである(図3)。

Windows Vista導入意欲の推移
図3●Windows Vista導入意欲の推移
時間の経過とともに,Windows Vistaへの抵抗感が薄れてきているのがうかがえる。Service Pack 1も登場し,そろそろ枯れたOSとして認知されつつあるのではないだろうか。

 導入意思を持っていると判断できる「すぐにでも導入したい」から「いずれは導入したいが今のところ考えていない」までの4つの回答のシェアは,8カ月前の50.6%から63.1%へと上昇。一方で,「導入したいとは思わない」と導入意思がない回答をしたユーザーのシェアは,8カ月前の33.9%から29.0%へと減った。このことから,企業ユーザーのWindows Vistaへの抵抗感は薄れてきていると言ってもよいのではないだろうか。

 自由記入欄では,VistaというOSそのものには抵抗はないが,単に「Service Pack 1が安定したら移行予定」という,OSが枯れて安定してから導入を始めるという保守的な見方が目立った。これには説得力がある。Windows XPが人気である理由も,歴史が長く安定しているということであろう。Windows VistaがService Pack 2を出す頃になると,現在のWindows XP並みの好評価を得るのかも知れない。反対に,革新的な見方として興味深かったのは,「Vistaは飛ばしてVistaの次のOSを入れたい」とする期待感だった。