調査内容 業務システムの導入・更新・再構築計画(性能・容量)
調査時期 2008年2月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3317件(1279件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に2008年2月に実施した調査で,回答者が業務としてシステムを担当している分野について,「更新・再構築時に必要となる処理性能(プロセサ能力や主記憶容量)やディスク容量は,稼働中の現行システムと比べて何倍程度か」を聞いたところ,刷新後の性能需要の平均値が最も大きかったのは「経営戦略支援(BI/DWH,社内ポータルなど)」の2.9倍。次いで「物流・在庫管理」が2.8倍,「クライアント上の処理の集約(シンクライアント)」と「情報流通・共有(メール,グループウエアなど)」が2.6倍で,この4分野が2.5倍以上だった。

 ディスク容量需要の平均値では「業務継続支援(BCP,バックアップ系など)」の3.9倍が最大で,「物流・在庫管理」「生産計画」「情報流通・共有」の3分野が3.5倍でこれに次ぐ高い需要を示した。

 図示していないが,個々の回答について「性能」と「容量」の回答の大きい倍率の方を取って「規模」とした場合,刷新後の規模の平均が最も大きいのは「バックアップ」と「物流・在庫管理」の3.9倍。次いで「生産計画」が3.8倍,「メールなど」と「BI/DWH」が3.7倍。刷新後の規模需要の平均値が小さかったのは「人事・給与」(2.5倍),「調達・購買」(2.7倍),「業務統制・文書管理」「対外情報提供(Webサイトなど)」(ともに3.0倍)。「性能」と「容量」のそれぞれの平均値に比べ「規模」で見た平均値が高めに出たのは,「生産計画」「バックアップ」「物流・在庫管理」のほか,「対外接続・データ交換・入力フロントエンド」(規模の平均は3.3倍),「シンクライアント」(同3.2倍)の各分野だった。

ディスク容量需要の比率が高いのはBCP/生産計画/会計,性能需要に偏るシンクライアント

 図から分かるように,今回提示した16分野の中で,ディスク容量需要が性能需要に対して大幅に高いのは「バックアップ」システムで,容量の倍率が性能の倍率の1.55倍。以下はやや差があって「生産計画」(1.44倍),「財務会計」(1.43倍),「人事・給与」(1.42倍),「業務統制・文書管理」(1.39倍)といったところが,ディスク容量の需要が相対的に高い。逆に性能需要の平均値がディスク容量需要の平均値を上回っているのは「シンクライアント」の1分野だけだった。

 ちなみに,回答者の業種や担当システムの利用者規模などの属性別での回答傾向では,特に大きな偏りが集中している分野や属性はないものの,性能需要の平均値では「業務統制・文書管理」の「上場企業」(2.59倍)が全回答者平均(1.97倍)より有意に高い。ディスク容量需要の平均値では「内部システム間接続・統合(ESB,製品/顧客/部品表統合マスターDBなど)」と「メール,グループウエアなど」の「利用者1000人以上」が有意に高い(ESBは全回答者平均3.14倍に対し4.66倍,メールなどは3.52倍に対し4.41倍)という傾向が見られた(いずれも有意水準5%)。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,業務システムの用途・目的として次の16種類を提示。その中から,回答者が現在システム担当業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)の中で,最も大きな比重を占めている用途・目的のシステムを最大3つまで選ぶよう求め,その3種の用途・目的のシステムについて,それぞれの今後の導入・更新・再構築の計画(時期と規模)について聞いた。
 提示したシステムの用途・目的は,「財務会計(単独)《性能,容量とも回答率49.4%》」,「連結会計,管理会計《性能回答率46.1%,容量回答率47.2%》」,「人事・給与《ともに48.1%》」,「販売・営業(管理・計数系)《順に55.2%,57.0%》」,「販売・営業(情報提供系)《同50.5%,50.0%》」,「物流・在庫管理《同49.5%,47.9%》」,「生産計画(グループ企業,協力企業を含む)《ともに49.0%》」,「調達・購買《順に39.3%,40.2%》」,「対外接続・データ交換・入力フロントエンド《同44.4%,45.7%》」,「対外情報提供(Webサイトなど)《同62.5%,63.1%》」,「内部システム間接続・統合(ESB,製品/顧客/部品表統合マスターDBなど)《同51.3%,52.8%》」,「業務継続支援(バックアップ系など)《同52.1%,55.5%》」,「業務統制・文書管理(ワークフローなど)《同49.8%,51.2%》」,「経営戦略支援(BI/DWH,社内ポータルなど)《ともに51.1%》」,「情報流通・共有(メール,グループウエアなど)《順に45.7%,47.6%》」,「クライアント上の処理の集約(シンクライアント)《ともに50.8%》」の16種類である。
 上記の《》内の数字は,その用途・目的を「最も大きな比重を占めている(最大3つ)」に選んだ回答者のうち,「既に稼働していて更新・再構築の方針が明確になっているものについて,現行システムの性能や容量を1.0とした場合に,次の更新・再構築時に必要となる処理性能やディスク容量の倍率」を明示した(「わからない」や無回答としなかった)比率である。
 本文中の「刷新後性能需要の平均」と「刷新後容量需要の平均」は,ともに「現行システムの性能や容量を1.0とした場合の比率」に対する選択式回答の「0.5未満」を0.25,「0.5以上~1.0未満」を0.75,「1.0以上~1.2未満」を1.10,「1.2以上~1.5未満」を1.35,「1.5以上~2.0未満」を1.75,「2.0以上~3.0未満」を2.50,「3.0以上~5.0未満」を4.0,「5.0以上~10.0未満」を7.5,「10.0以上」を12.5に換算して平均した。「規模の平均」の算出では,性能,容量のどちらか一方についての回答が「わからない」や無回答の場合,有効な回答(選択肢)の方をそのまま採用した。
 調査実施時期は2008年2月中旬,調査全体の有効回答は3317件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1279件。

図●現行システムの更新・再構築時に,必要と見込まれる処理性能(プロセサ能力や主記憶容量)やディスク容量(現行システムの性能や容量を1.0とした場合の比率,2008年2月調査)