「4人に1人はプロマネ志向,3人に1人はエンジニアを貫く」---。ITpro読者に対するアンケート調査から,IT関係者が抱く率直なキャリア意識が浮かび上がってきた。

 本調査は,ITproが「ITエンジニア/マネジャーのキャリア意識に関する調査」と題して,2月27日から3月4日まで実施。450人から有効回答を得た。

 まず,回答者の「現在から将来に向けたキャリア意識」の傾向を大きくつかむため,「プロジェクト・マネジャー(以下,プロマネ)志向」「エンジニア志向」「それ以外のITにかかわるキャリアを志向」といった選択肢を用意し,択一で選んでもらった(図1)。

 (注)プロマネ志向とは「システム開発・運用のプロジェクト・マネジャーなど,マネジメント中心の仕事をしたい」という意識,エンジニア志向とは「ITアーキテクトや業務系SE,基盤系SE,運用管理技術者,プログラマなど,エンジニアとしての仕事を続けたい」という意識,を指す。それ以外のITにかかわるキャリアとは,コンサルタント,営業,マーケティング,品質保証,教育などの職種を指す。

図1●現在から将来に向けたキャリア意識
図1●現在から将来に向けたキャリア意識
 
職種 比率
経営者/CIO(最高情報責任者) 2.4%
コンサルタント 3.8%
プロジェクト・マネジャー 13.1%
ITアーキテクト(主に情報システムのアーキテクチャ設計に携わるエンジニア) 5.3%
業務系SE(主に業務アプリケーションの設計・開発に携わるエンジニア) 19.3%
基盤系SE(主にシステム基盤やネットワークの設計・開発に携わるエンジニア) 9.6%
運用管理技術者(主に情報システムの運用管理に携わるエンジニア) 14.4%
プログラマ(主にソフトウエアの実装に携わるエンジニア) 7.8%
カスタマサービス(保守,サポートなど) 4.0%
マーケティング/営業 7.6%
その他 10.9%
無回答 1.8%
表1●回答者の職種(有効回答数450)

 その結果,最も多かった回答は「エンジニア志向」で全体の34.2%。次いで,「それ以外の(エンジニアでもプロマネでもない)ITにかかわるキャリアを志向」が25.6%,「プロマネ志向」が22.4%だった。エンジニア志向とプロマネ志向の比率は,ほぼ3対2である。

 IT業界でプロジェクト・マネジメントの重要性が繰り返し指摘されるなかで,プロマネ志向の回答者は全体の4分の1に満たず(22.4%),一見少ないと思えるかもしれない。しかし,エンジニア志向の回答者の(34.2%)の3分の2もいると考えれば,決してそうではないことが分かる。

 実際,回答者の「現在の職種」(表1)をみると,プロマネ(13.1%)はエンジニア系職種(ITアーキテクト,業務系SE,基盤系SE,運用管理技術者,プログラマを合わせたエンジニア系が合計56.4%)のほぼ4分の1。現実のシステム構築プロジェクトに参加するメンバーの職種構成を思い浮かべれば,3分の2という数字がいかに大きいかが分かるだろう。逆に,IT(=情報技術)という名の付く世界で,しかも,インターネットを中心に技術が目まぐるしく変化するなかで,エンジニア志向の回答者が全体の3分の1(34.2%)しかいないことが目を引く。

プロマネ志向はマネジメントの仕事そのものに興味ややりがい

 プロマネとエンジニアを志向している回答者のそれぞれに対して,志向する理由や,それぞれの仕事をしていくうえでの悩み・問題について聞いてみた。

 まず,プロマネ志向の回答者に対する調査結果から見ていこう。プロマネなどマネジメント中心の仕事をしたい理由として,最も多かった回答は「プロジェクト・マネジメントには,やりがいや達成感がある」(55.4%)である(図2)。次いで「マネジメントそのものに興味がある」(52.5%)が多かった。

図2●プロマネなど,マネジメント中心の仕事をしたい理由(複数選択)
図2●プロマネなど,マネジメント中心の仕事をしたい理由(複数選択)
  図3●プロマネとして仕事をするうえでの悩みや問題(複数選択)
図3●プロマネとして仕事をするうえでの悩みや問題(複数選択)

 このように,プロマネ志向の回答者の過半数が,マネジメントという仕事そのものに魅力を感じていることが分かる。30.7%が挙げた「高い処遇が期待できる」も,マネジメントの仕事の魅力の一部と考えられているようだ。「人材モデルとして参考になる(理想とする)プロジェクト・マネジャーが身近にいる」という回答は,1割強にとどまった(11.9%)。

 これらとは対照的に,マネジメントを志向する“消極的な理由”もある。特に多かったのは,「職場の要請で,プロジェクト・マネジメントの仕事をすることが求められている」で,プロマネ志向の回答者の4割近くが挙げた(39.6%)。「エンジニアとしての能力を長く発揮し続けるのは難しい」という回答も,3割を超えている(31.7%)。

 次に,プロマネとして仕事をしていくうえでの悩みや問題を聞いたところ,ダントツで多かったのは「自分には,プロジェクト・マネジメントの知識やスキルが不足している」という回答で,54.5%と過半数を超えた(図3)。前述したように,職場の要請でプロマネを志向している回答者も多いだけに,これから手がけようとしている仕事と自身のスキルのギャップに悩んでいるエンジニアも少なくないだろう。

 続いて多かったのは,「人材モデルとして参考になる(理想とする)プロジェクト・マネジャーが身近にいない」(32.7%)と,「職場の環境で,プロジェクト・マネジメントの経験を積む機会が与えられない」(30.7%)だった。

 プロマネとエンジニアとでは,求められるスキルや知識が大きく異なるので,特に現在エンジニアで将来プロマネを目指している回答者にとって“人材モデルの不在”はつらい状況だろう。また,プロマネは座学だけでなく経験を重ねて獲得するスキルや知識が多い職種だけに,特にスキルや知識の不足を感じている回答者にとって“機会不足”の問題は深刻だ。