調査内容 IT関連キーワードの認知度・業務への影響・利用状況
調査時期 2007年10月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 2173件(877件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数

 日経マーケット・アクセスでは,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,最新あるいは注目のIT関連キーワードを毎月三つずつ挙げて,その認知度,業務への影響と利用の状況について聞いている。2007年10月調査では,「EIP(企業情報ポータル)」,「AIR(Adobe Integrated Runtime)」,「スマートフォン」を取り上げた。

 企業内の多様な情報システム上のデータを,Webブラウザなどから一括して閲覧可能にする「EIP(企業情報ポータル)」。2000年~2001年頃には日経BP社のIT専門誌でも特集がたびたび組まれるほど注目を浴びた。ここ数年,SOAやWebサービス,マッシュ・アップなど,システム間連携の新しい手法や概念が実用域に達するとともに,それらの新技術で実現するアプリケーションの一つとして,EIPも再び注目されている。

 結果は,認知度と業務への影響度については,「EIP」はこれまでの調査で提示してきたキーワードの中でごく平均的な回答傾向を示した。しかし,利用状況で「EIP」は「全社的に運用されている」に13.3%を獲得。これは前回2007年9月調査での「マスター統合/コード統一」(13.8%)に次いで,調査開始以来2番目に高い値だった。

 「AIR(Adobe Integrated Runtime)」はインターネット経由でもオフラインでも使用できる,Webブラウザに代わるクライアント環境として米アドビ システムズが開発している。WindowsやMac OS,Linuxや将来的には携帯電話など各種のOS環境に共通して使用可能,HTMLの制約に縛られるWebブラウザよりも多彩なユーザー・インタフェースを表現できる,などとされている。

 ただしまだベータ版の段階で,最終的な完成は2008年早々の見込み。今回の調査ではあえてアドビのブランドを付けず,「AIR(開発コード名:Apollo)」として提示した。その結果は,企業情報システムの担当者に「AIR」はまだ知られていないというもの。認知度は「業務に通用する十分な知識がある」が0.6%で,本調査の過去最低をマーク(従来の最低は2007年8月調査の「XBRL」の1.1%)。「聞いたことがない」の比率が73.6%で過去最大(従来の最大は同じ「XBRL」の70.0%)。「聞いたことがない」という回答者は除外して聞いた業務への影響度も,「自分の業務と深い関わりがある」が6.1%でこれまた本調査の過去最低(従来の最低は2007年8月調査の「Ruby」の6.5%),「自分の業務には関係ない」が過去最大(従来の最大は同じ「Ruby」の45.0%)。結果として,認知度・業務への影響・利用状況の3スコアとも,「AIR」は過去最低を記録した。

 米アップルの「iPhone」や,米グーグルの「gPhone」ならぬ共通ソフト環境「Android」など,2007年後半は米国発の高機能な携帯電話に関する話題が目立った。しかし高機能な携帯電話を企業情報システムに組み込んで活用することなら,日本の実績は世界でトップクラス。「スマートフォン」についても業務への影響度や利用状況に高い反応が出る,と予想したのだが,結果は大きく予想と異なった。

 認知度では「聞いたことがない」がわずか8.6%。これは過去4番目に低い値(「日本版SOX法」「Windows Vista」「生体認証」に次ぐ)で,「スマートフォン」という言葉はよく知られている。しかし業務への影響度では,「自分の業務と深い関わりがある」が8.8%と低い。これより低い数字だったのは前出の「AIR」「Ruby」「XBRL」のみ。逆に「自分の業務には関係ない」の45.8%は「Ruby」の45.0%よりも大きく,今回の「AIR」に次ぐ2番目に大きい値だった。

 利用状況でも「スマートフォン」は意外なほど低スコア。「導入/利用計画はまだ具体化していない」という消極的な回答が86.2%で,「AIR」「XBRL」と2007年2月調査の「SaaS」に次ぐ4番目だった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に,IT関連の最近のキーワードの認知度,自身の業務への影響をどう見ているか,回答者の所属組織での利用状況を聞いた。
 「認知度」は四択の質問で「業務に通用する十分な知識がある」を5,「内容をある程度理解している」を3.67,「名前だけは聞いたことがある」を2.33,「聞いたことがない」を1点にスコア換算した。
 同様に「業務への影響」は三択で「自分の業務と深い関わりがある」を5,「今は関わりがないが,将来関係するかもしれない」を3,「自分の業務には関係ない」を1点に換算。
 「応用/利用状況」は五択で「全社的に運用されている」を5,「一部の部門,業務で運用されている」を4,「一部の部門,業務で試験的に運用されている」を3,「導入を計画している」を2,「導入/利用計画はまだ具体化していない」を1点に換算した。  調査実施時期は2007年10月中旬,調査全体の有効回答は2173件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は877件。

図1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度・業務への影響・利用状況

図2-1●情報システム担当者の最新キーワードの認知度

図2-2●情報システム担当者の最新キーワードの業務への影響

図2-3●情報システム担当者の最新キーワードの利用状況