家庭系パソコンのリサイクル制度が始まった2003年10月以降に「個人所有のパソコンを処分(売る,譲渡する,廃棄するなど)したことがある」という回答者は50.9%だった。このうち,処分方法として「メーカーのリサイクルセンターへ送った」という回答者は17.4%。多くのパソコンが,市中の廃品回収業者に引き渡されるなど,その後に適正に再資源化処理されるかどうか不透明な状況にあることがわかった。

 パソコンのリサイクル制度は,事業系パソコンで2001年4月から,家庭系パソコンについては2年半遅れの2003年10月から始まった。それから数年が経過したが,法に従ってメーカーが構築した回収・再資源化ルートで処理されるのは,年間約750万台排出される使用済みパソコンのうち十数%程度と見られている(2004年度の推定)。その一方で,使用済みパソコンの約3割が中国などに輸出され,一部は不適正な処理によって現地に深刻な環境汚染をもたらしていることがわかっている(関連記事1)。

 そこでITproでは,11月7日から13日にかけて「使用済みパソコンの処理方法に関するアンケート調査」を実施した。個人所有のパソコンの処分方法や,現在のリサイクル制度の問題点および見直しの方向性を探ることが目的である。アンケートには1874人から回答を得た。

家庭用パソコンの使用年数は4年以上?

  冒頭に紹介したように,家庭系パソコンのリサイクル制度が始まってから現在までの4年間に「パソコンを処分したことがある」という回答は,50.9%とほぼ半数だった(図1)。

図1●2003年10月以降,個人所有のパソコンを処分(売る,譲渡する,廃棄するなど)したことがあるか
図1●2003年10月以降,個人所有のパソコンを処分(売る,譲渡する,廃棄するなど)したことがあるか

 このうち「処分したパソコンにPCリサイクルマークが付いていた」という回答はわずか4.7%にとどまる(図2)。

図2●処分したパソコンにはPCリサイクルマークが付いていたか
図2●処分したパソコンにはPCリサイクルマークが付いていたか

 「PCリサイクルマーク」とは,リサイクル制度が始まった2003年10月以降にメーカーが出荷した個人向けパソコンには必ず付いているもので,リサイクル料金を支払い済みという証である(パソコンの購入代金に含まれている)。このマークが付いているパソコンならば,処分する時に新たな料金を負担することなく,メーカーのリサイクルセンターに回収・再資源化処理してもらえる。

 調査では,この4年間にパソコンを処分した人の86.0%が,「PCリサイクルマークが付いていなかった」と回答した。ほとんどの家庭用パソコンは,4年以上使われているということだ。「付いていたかどうかわからない」という回答も9%あった。リサイクル制度のことを知らずに処分してしまった人もいたのではないか。

メーカーのリサイクルセンターの利用率は17%

 次にパソコンの処分方法について聞いたところ,3位までの回答数にはほとんど差がなかった(図3)。最も多かったのは,「メーカーのリサイクルセンターへ送った」という法規定に基づく処分方法だが,パソコンを処分した人全体から見ると17.4%を占めるに過ぎない。

図3●パソコンをどのように処分したか
図3●パソコンをどのように処分したか

 2番目に多かったのが,「市中の廃品回収業者に引き渡した」(16.8%)。そのうちの86.2%が無料で引き渡しており,適正に再資源化処理される可能性が低い処分方法と言わざるを得ない。もちろん回収業者から再資源化業者にわたり,分解されて,金属やプラスチックなどの資源になることもあるだろうが,中国などに輸出されて現地の汚染源になっている可能性もある。

 中古機器販売業者には引き取ってもらえず,かといってリサイクルセンターに送れば数千円のリサイクル費用がかかる。残る選択肢として廃品回収業者を選ぶのだろうが,せめてどのように処理されるかを引き渡し時に確認してみてはどうだろうか。

 3番目に多かった処分方法は,「店頭で中古機器販売業者に売却した」の16.6%。この場合は,中古パソコンとしてリユースされる可能性が高い。ただし売却されたパソコンの多くはPCリサイクルマークが付いていないことから,最終的に適正に処理されるかどうかは,その後の所有者の良識的な判断に委ねるしかなさそうだ。

 「自治体回収に出した」という回答も14.7%とかなりの割合を占めた。粗大ゴミとして出すだけではなく,パソコンを分解して部品や素材に分け,不燃ゴミに出したり,金属を資源回収に出したりするケースも見られた。「知人などに譲った」(13.8%)も意外に多く,そのほとんど(94.7%)が無償での譲渡である。

 「インターネットで売却した」という回答は案外少ない。「個人に売却した」(6.2%)と「中古販売業者に売却した」(3.4%)を合わせても1割に満たない。やはり中古品は「現物」の評価が重要ということか。

 「その他」(4.9%)の処分方法では,会社で取り引きのある産廃処理業者に委託した,メーカーが国内から撤退したのでパソコン3R推進センターに委託した,メーカーの下取りに出した──などの記述が目立った。