「自宅パソコンのWindows Vista導入率は14.2%」「いずれ導入したいという回答を含めて導入に前向きなユーザーは7割近いが,3年以内と具体的に考えているユーザーとなると2割に落ちる」。ITpro読者に対して実施したアンケート調査から,このようなWindows Vistaに関する状況が明らかになった。

 ITproは7月26日から31日にかけて「パソコンOSに関するアンケート」と題する調査を実施。5376人から回答を得た。一般向けにWindows Vistaが発売されたのが1月30日。ちょうど半年たった時点でのWindows Vistaの普及状況などを調べた。また,自宅だけでなく企業への導入状況も調べるために,設問は自宅と勤務先の両方を用意した。

 まず,パソコンOSに何を使っているかという設問に対しては,自宅,勤務先ともWindows XPが圧倒した。その割合は,それぞれ65.3%,72.7%に上る(図1)。注目のWindows Vistaは,自宅への導入率は14.2%。今回の調査は対象がITpro読者ということもあり,回答者の43.3%がコンピュータ関連技術職である。一般コンシューマと比べると,高めの数字が出ていると予想できる。回答の自由記入欄などにも,Vistaの導入目的を「検証のため」や「業務上,Vistaに慣れておく必要があった」などとする記入が散見された。

図1●使用しているパソコンOS(複数の場合はメインのOS)
自宅でWindows Vistaを使っているとするユーザーは14.2%。一方,勤務先では3.1%と,まだ非常に少ないことが分かった。

 では,この14.2%をどう評価すべきか。半分近くがコンピュータ関連技術職にしては,比較的低い数字だと言えそうだ。というのも,現在のパソコンの買い替えサイクルが5年程度だとしても,年間で5分の1のパソコンが買い替えられる計算になる。半年では10%。さらにVista発売前にはパソコンの買い控えも起こり,その分の上乗せもあるはずだ。にもかかわらず,ITに対する強い関心があり,新しいOSを使ってみたいとの思いが強いと考えられるコンピュータ関連技術職が半分近くを占める集団に対して調査した結果が,14.2%である。単純な買い替え需要の4割増しの数字というのでは,やはり,Vistaの導入機運はさほど盛り上がっていないと言わざるを得ないだろう。

 一方,勤務先でWindows Vistaを使っているという回答は3.1%だった。調査対象の半分近くがコンピュータ関連技術職であっても,この数字である。企業へのVista導入が遅々として進んでいない実態が明らかになった。とはいえ,今回の調査はあくまでも「個人」に聞いたもの。回答者が勤務先でWindow Vistaを使いたいと思っているとしても,Vistaを導入する際には,システム管理者などによるアプリケーションの動作検証などが欠かせない。簡単に新OSは使えないのが実情だ。そういう意味では,3.1%という数字はある程度,予想の範囲内と言えよう。

 なおマイクロソフト日本法人に聞いたところ,Windows Vistaの企業への導入率は現状で約2.5%程度だという。これは,同社がボリューム・ライセンスを発行している(つまりマイクロソフトがお付き合いしている)企業において,Windows Vistaを導入した企業の数である。個人に聞いている今回の調査結果と単純な比較はできないが,今のところ,「企業のWindows Vista導入率は数パーセントのしかも下の方」という感覚で大きくは外れていなさそうだ。

 さて,Windows Vistaを導入済みと答えた回答者に対しては,さらにその詳細を聞いた。回答数は,自宅ユーザーが761,勤務先ユーザーが165である。

 まず,使用しているWindows Vistaの「エディション」を聞いたところ,自宅では「Home Premium」が47.4%でトップだった(図2)。Vistaの特徴の一つでもある「Windows Aero」は「Home Basic」では利用できない。Home Premiumが多いということは,ある程度予想できたことだ。しかし第2位に「Ultimate」が入ったことには驚かされた。しかもその割合は,第1位のHome Premiumとの差が9.8ポイントの37.6%に上る。UltimateはVistaの中では最も高価で,Vistaの全機能を備えたなエディション。Vistaが発売されて半年後の現状では,先進的なパワー・ユーザーの割合が比較的高いという事実が浮かび上がる。

図2●使用しているWindows Vistaのエディション
トップは,自宅がHome Premium,勤務先がBusinessで,いずれも5割近い。第2位は自宅,勤務先ともにUltimate。それぞれ3割以上を占めた。

 ちなみに,自作ユーザーの利用が多い秋葉原のあるショップの店員に聞いたところ,パソコン・パーツとセット販売してショップが購入者にライセンスする形のDSP(Delivery Service Partner)版では,UltimateがHome Premiumの2~3倍売れているという。

 一方,勤務先で第1位だったエディションは「Business」で46.7%だった。これも妥当な線と言えるだろう。ただし第2位は,自宅と同様にUltimateだった。その割合は30.9%である。

 次に,Windows Vista導入済みユーザーに対して,Vistaの入手経路を聞いた(図3)。そうしたところ,自宅,勤務先ともに「Vista搭載パソコンを購入」が半数を超えた。Windows Vistaは,Aeroなどを使おうとすると,Windows XPよりも高いハードウエア・スペックが必要になる。古いWindows XPマシンでOSだけVistaに入れ替える,という手段が取りにくいのだ。このため,従来のOSの切り替え時以上にハードウエアとOSをいっぺんに変えるというユーザーが多いようだ。

図3●Windows Vistaの入手方法
自宅,勤務先ともにVista搭載パソコンを購入したという人が5割を超えた。自宅の第2位はDSP版で2割を超えている。

 ただし自宅への導入では,DSP版で入手したという回答も2割以上あった。DSP版とは前述したように,パソコン・パーツとともに購入する形のことである。主にパソコンの自作ユーザーが取る入手形態だ。自作ユーザーが,Vista導入に併せてハードウエアの増強を行うためにパーツを購入し,それとともにDSP版のWindows Vistaを購入している姿が目に浮かぶ。ただ,DSP版はパッケージ版よりも安価である。このため,必要か否かにかかわらず1000円程度のフロッピ・ディスク・ドライブとともに購入するケースもある。

 Windows Vistaを導入済みのユーザーの状況はある程度分かった。では,Vistaの未導入ユーザーはWindows Vistaの導入をどのように考えているのだろうか。そこでVista未導入ユーザーに対しては,Vistaの導入意向を聞いてみた。Vistaの未導入ユーザーのうち,Windows XP/2000/ME/98/98SEを使用しているユーザーに絞って集計した結果が図4である。結果は,自宅パソコンに関しては,「すぐにでも導入したい」が2.1%,「1年以内には導入したい」が9.8%,「2~3年内には導入したい」が8.6%,「いずれは導入したいが今のところ考えていない」が47.8%となった。これらを合計すると,時期はともかく68.3%がVistaの導入を前向きに検討していると言える。

図4●Windows XP/2000/ME/98/98SEユーザーのVista導入意向
「いずれ導入」を含めて導入に前向きなユーザーは,自宅で合計7割弱,勤務先で合計5割強。勤務先は,導入したくないとの回答が3割以上ある。

 とはいえ,半数近くのユーザーは「いずれ導入」という回答である。「すぐ」「1年以内」「2~3年内」という回答は合計20.5%にとどまった。前述したように,Windows Vistaの導入にはパソコンの買い換えが伴うケースが多い。このため,投資額としては高くなりがちだ。「Vistaは使ってみたいけれども,パソコンの買い換えまで考えると,そう簡単には決められない」。このように考えているユーザーが多数を占めているようだ。

 しかもマイクロソフトは,Windows XP Home Editionのサポート期限を2014年4月まで延長することを決定済みである(延長サポート)。その一方で,Windows Vista Home Basic/Home Premiumのサポート期限は,現在のところ正式には2012年4月までである(メインストリーム サポート,XP Homeと同様にいずれ延長サポートが設定される可能性は高い)。こうした状況を考えても,使用中のパソコンが使える限りWindows XPで良いと考えているユーザーは少なくなさそうだ。それが2割以上の「Windows Vistaを導入したいとは思わない」という数字に表れているとも言える。

 勤務先では,その傾向はより顕著だ。36.4%の「いずれ導入」を含めて,Vista導入を前向きに検討しているユーザーは5割強にとどまる。一方で,「導入したいとは思わない」が32.7%という高い数値を示した。今のところ,仕事で使うOSとしては,「Windows Vistaは必要ない」と考えているユーザーが多いと言えよう。

 ただし今回の調査は,Vista導入を意志決定するシステム管理者に対して行ったものではない。Vistaを使いたいと思っていても会社の方針でVistaの導入が見送られたり,逆に使いたくないと思ってもVistaが導入される可能性はある。この数値だけをもって,企業へのVista導入は進まない,とは一概に言えないだろう。

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