技術関連の公共政策推進を目指す米シンクタンクのInformation Technology and Innovation Foundation(ITIF)は米国時間3月13日,ITが経済活動に与える影響について調査した報告書を発表した。それによると,情報技術・電気通信関連のハードウエア/ソフトウエアやサービスなどに対する投資は,IT分野以外への投資に比べて労働者の生産性を3~5倍に向上させられるとしている。「ITは生活の質を向上させるだけでなく,経済成長の大きなけん引役を担っている」(ITIF)。1995~2002年の間に米国における生産性の向上にITが貢献した割合は全体の3分の2を占め,労働生産性に限定した場合はITがほぼ全面的に貢献した。

 オーストラリア,カナダ,フィンランド,フランス,ドイツ,韓国,日本,オランダ,スイスといった国々の企業も,ITを活用することで生産性が大幅に伸びている。また開発途上国では,ITによる恩恵が先進国ほど大きくないものの,1993~2001年のIT支出はOECD(経済協力開発機構)諸国平均の2倍の速さで成長したという。ITIFは,「経済と社会のあらゆる側面にITが統合されたことで,デジタル対応の経済モデルが構築され,経済の成長と繁栄に大きく貢献するようになった」と説明する。

 ITが米国の雇用の与えた影響をみると,2006年3月時点で376万件の雇用を創出しており,これは民間企業における総雇用の3.36%に相当する。しかし2000年にピークを迎えて以降,経済成長を上回るほどIT求人は伸びていない。これはIT業界自体の生産性が高く,少ない労働者で効率的に生産活動を行えるためだという。

 しかし,IT業界がその業界規模を上回るほどの雇用を創出できないとしても,高度なスキルを要する高収入の職を提供できる。米国の平均年収が3万8000ドルであるのに対して,IT関連職の平均年収は7万ドルである。

 同報告書では,今後もデジタル革命の恩恵を受けるには,1)ITを中核に据えた経済政策,2)経済セクターにおけるデジタル革新の奨励,3)IT投資を促進する税政策の実施,4)デジタル格差の縮小,5)ITの成長を阻害しない,などが重要だとしている。

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