「日経マーケット・アクセスINDEX(日経MA-INDEX):企業情報システム」の2006年11月版では,国内の主な情報通信製品/サービス・ベンダーとシステム・インテグレーター(SIer)を対象に,利用者の満足度を聞いた。今日は主要ベンダーへの「価格」「性能・機能」「サポート」満足度の結果を紹介する。

「サポート」で富士通とNEC,「性能・機能」でIBM,「価格」でアドビが高評価

 今回のベンダーに対する満足度評価は,3項目とも有効回答数が30以上に達した対象企業が13社,このうち3項目とも回答数100以上が6社だった。回答数上位6社への評価は,図示したように「マイクロソフトの一人負け」だ。

 「性能・機能」満足度INDEX(算出方法は下記の注釈参照)では,首位の日本IBM(61.1点)から5位のデル(58.1点)までが3ポイント以内,「価格」満足度INDEXでも,首位のアドビシステムズ(60.8点)から5位の日本IBM(55.7点)までの幅は約5ポイント。「サポート・サービス」満足度INDEXは,首位の富士通(59.9点)と2位NEC(59.0点)が,3位の日本IBM(55.4点)から5位のアドビシステムズ(51.8点)の間にやや水を開けたが,それでも上位5社の差は約8ポイントしかない。

 これに対して,マイクロソフトは「性能・機能」満足度INDEXこそ50点ラインを超えた(51.1点)ものの,「価格」では49.9点,「サポート」では45.9点と低い評価。後述するSAPジャパンとレノボ・ジャパンとの3社で“後方集団”を形成している。

 一方,図示していないが「大変満足」と「やや満足」の回答者の比率を合計した「満足率」でみると,上位5社の中でもやや差が付く。「サポート・サービス」は満足率でも富士通とNEC(順に69.6%,68.5%)が,同率3位のデルと日本IBM(60.9%)以下をリード。「性能・機能」では,首位の日本IBMが満足率75.2%で,NEC,アドビ,富士通(順に72.3%,71.9%,71.3%)の2位グループからやや抜け出ている。 「価格」は首位のアドビが満足率で見ると78.1%で1社だけ抜けだし,2位のデル(71.8%)以下に大差をつけた。今回調査でのベンダーへの満足度評価3項目とも有効回答数30以上の13社中,満足率での最大値はこの「価格のアドビ」だった。無償配布しているPDF文書閲覧ソフト,アドビ・リーダーがこの評価の原動力だろう。

 ちなみに,「性能・機能」と「サポート」の有効回答数が30に満たなかったものの,「価格」では39件の有効回答を得たレッドハットへの評価が興味深い。「価格」満足度INDEXは50.4点でマイクロソフトと0.5ポイント差,満足率は51.3%でマイクロソフトを約6ポイントも下回っていた。オープン・ソース・ソフトに基盤を置くITビジネスは,利用者から「価格」での満足を引き出すのは難しいということだろう。

「サポート」で国産メーカーに肩を並べた日本HP,全項目最下位のSAP

 満足度評価3項目で,いずれも有効回答数を30以上集めたものの,100に満たない項目があった7社に目を移すと,満足度INDEXはシスコシステムズが「価格」(62.4点)「性能・機能」(64.1点)「サポート」(59.1点)ともにトップ。図示した13社全部の中でも,サポートで富士通を0.8ポイント下回って首位を取り損ねたものの,「価格」と「性能・機能」の2項目の満足度INDEXを制覇。特に「性能・機能」の評価は他社を圧倒した。満足度INDEXの64.1点は,今回のベンダー満足度INDEXでの3項目13社全体での最高値,満足率(77.3%)も13社のトップ。「大変満足」率17.3%も3項目13社の「大変満足」の中で最大だ。

 日本ヒューレット・パッカード(HP)とサン・マイクロシステムズの外資系サーバー2社も,今回調査では高い評価を得た。「性能・機能」ではサンが満足度INDEX 62.3点,満足率でも74.6%を獲得し,日本IBMに肉薄,NEC,富士通をわずかながら上回った。

 日本HPは,「性能・機能」はやや低迷(満足度INDEX 58.8点,満足率67.4%)し,デルと並んで“中位集団の最後尾”程度の評価。だが「サポート」は満足度INDEX 58.8点,満足率69.3%で,富士通,シスコ,NECと肩を並べるトップクラスの評価だ。

 「価格」では日本HP,サンが満足度INDEX(順に61.6点,60.5点),満足率(74.8%,74.7%)でNEC,デルをわずかながら上回り,サーバー・メーカーの中で最高レベルの評価となった。

 これに対して,満足度INDEX,満足率とも3項目13社の最下位と,不名誉な“完全制覇”を達成してしまったのがSAPジャパン。しかも満足度INDEXの50点,満足率の50%ラインを,3項目とも下回った。これは13社の中でSAPだけである。「サポート」の満足率35.5%,「大変不満」の19.4%はともに,3項目13社の中で最も悪い値だ。

 マイクロソフトとSAPジャパンの突出した低評価のため目立たないが,今回の調査ではレノボ・ジャパンに対する満足度も,この2社とあまり変わらない低さを示した。特に「大変不満」の比率が高いのがレノボの特徴で,「性能・機能」14.9%,「価格」14.0%とも13社中最大。「サポート」も17.0%が「大変不満」としており,マイクロソフト(18.8%)とSAPジャパン(19.4%)と同レベルだ。

◆注
 調査実施時期は11月上旬~中旬,調査全体の有効回答は2566件,うち情報システム担当者の有効回答は648件。満足度INDEXは選択式回答の「大変満足」を100,「やや満足」を67,「やや不満」を33,「大変不満」を0にスコア換算して平均した。
 大手情報通信製品/サービス・ベンダーの中から,ハード/ソフトや専門分野などのバランスを考えて,本図の13社とEMCジャパン,日本ネットワーク・アプライアンス,レッドハットの合計16社(外資系はすべて日本法人)をピックアップし,有効回答者全員に評価を求めた。
 日本オラクルはシーベル,ピープルソフト,JDエドワーズ,Retekなどを,EMCジャパンはVMware,ドキュメンタム,RSAセキュリティを,アドビ システムズはマクロメディアを含めて評価するよう求めた。
 トレンドマイクロ,NTTコミュニケーションズなどその他の大手ベンダー57社については,ベンダーと回答者をそれぞれ5グループに分けて,各回答者に11~12社だけを提示し評価を求めた。

図1●主要情報通信(ICT)製品/サービス・ベンダーへの満足度(全3項目の有効回答数が全て100以上)

図2●主要情報通信(ICT)製品/サービス・ベンダーへの満足度(全3項目の有効回答数が全て30以上,図1の6社を除く)