企業のビジネスを支えているのはITサービスだが,そのITサービスを支えているのが運用管理という仕組みである。ITIL(Information Technology Infrastructure Library)という標準的なITサービス管理の枠組みが浸透したこともあり,現在ではITILのプロセスを意識した製品が提供されている。
おそらく多くの人は運用管理=統合運用管理製品を思い浮かべるかもしれないが,今はそれに加えて多様なジャンルが加わっている。これはGartnerが発表している「IT Operations Management」の「Hype Cycle」を眺めるとよく分かる。
ちなみにHype Cycleとは,技術動向のトレンド/成熟度を表現するために用いられるツール。黎明期(Technology Trigger),流行期(Peak of Inflated Expectations),幻滅期(Trough of Disillusionment),回復期(Slope of Enlightenment),安定期(Plateau of productivity)に区分して表現される。
トレンドがどのように変遷しているかを端的に理解するために,最新版の2008年6月版とその前年の2007年6月版におけるIT Operations Managementから代表的な技術の位置付けを確認すると次のようになる(表1)。
「仮想化」,「SaaS」,「自動化」で状況が変化
全体を俯瞰(ふかん)して分かるのは,仮想化を対象としたり,SaaSによって提供される管理技術が新たに登場したことと,運用自動化の分野で製品技術を取り巻く状況が変わったことだ。
仮想化技術自体は数年前から一般化しているが,それにともなってサーバー運用も複雑化の一途をたどっている。物理サーバーを単体で運用していた頃よりも障害切り分け作業が困難になっていることは,システム運用担当の方なら身に染みていることだろう。このあたりのニーズは製品ベンダー側もよく承知しており,仮想化サーバー内部を物理サーバーと同等レベルで可視的に管理することができるツールが市場に登場し始めている。
「クラウド元年」という言葉を昨年から耳にする通り,2008年から急激にネットワーク越しで提供されるサービスも盛んになった。これにともなって,従来のオンプレミスで賄っていた運用管理ツールも,社外のSaaSベンダーが提供する運用管理ツールをブラウザを介して利用する形に切り替えるユーザー企業が現れている。
例えば,障害報告をとりまとめる「インシデント管理」,それらがどのようなIT機器に紐付くかを整理する「構成管理」,ITサービスの利用状況を可視化する「サービス・レベル管理」などをインターネットを介して利用できるサービスが北米では既に複数存在しており,日本でもサービス開始を検討しているベンダーがいる。
「オーケストレーション」のキーワードが関係する運用自動化の分野は成長が著しく,これまで手動で対処していたメンテナンス作業を容易にプログラム化するツールが登場しており,既に先進的な海外企業のIT環境を支えている。特定のログ・ファイルから指定個所の文字列を切り出し,それを数値として認識させてしきい値と比較させるという単純な実行だけではなく,その結果次第で複数の実行オプションから適切なアクションを選択することまでの自動化を簡単に実現できる製品が登場したことで,2008年に入って普及が進んだと思われる。




