「仮想化のしやすさでブレードサーバーを選択するユーザーが増えている」(NECの谷長主任)。ブレードサーバー上で仮想化環境を構築する際には、まず搭載可能なCPUやメモリーの拡張性を押さえておく必要がある。物理サーバー上で多数の仮想マシンを稼働させると、それだけCPUやメモリーのリソースが必要になるからだ。

 CPUやメモリーの拡張性に加えて、仮想化技術を標準で搭載するブレードサーバー製品も相次いで登場してきた。これらは、独自の仮想化技術を搭載する製品と、VMwareやCitrix XenServerなど汎用的な仮想化ソフトを組み込んだ製品の大きく二つのパターンに分けられる。

 独自の仮想化技術を搭載したブレードサーバーを提供するのが日立製作所だ。同社は、「BladeSymphony」ブランドで展開するブレードサーバーのハイエンド製品「BS1000」で、「Virtage」と呼ぶ独自の仮想化機構を標準で搭載するモデルを提供している。

 Virtageは、ハードウエアベースで仮想化を実現できるのが特徴だ。CPUブレードには、仮想化を実現するためのファームウエアを組み込んだ自社開発のチップセットを搭載。このため、仮想化ソフトのインストールや設定をしなくても、電源を入れれば迅速にハイパーバイザー方式の仮想化環境を実装できるというわけだ(図3)。同社エンタープライズサーバ事業部の宇賀神敦統合プラットフォーム販売本部本部長は、「基幹システムに対しても、Virtageによる安定した仮想化環境を提供できる」と強調する。

図3●日立製作所は、独自の仮想化機構「Virtage」を標準搭載した「BS1000」を用意
図3●日立製作所は、独自の仮想化機構「Virtage」を標準搭載した「BS1000」を用意
ファームウエアを組み込んだチップセットをCPUブレードに搭載し、ハードウエアベースの仮想化環境を構築できる
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 しかも、BladeSymphony用の運用管理ツール「BSMS」(BladeSymphony Manage Suite)を使えば、物理サーバーと仮想マシンを一元的に管理することが可能になる。

 一方、VMwareやCitrix XenServerなどを搭載した製品を提供するのが、日本IBMやデル、日本HPなどだ。SDカードなどに仮想化ソフトを組み込んだモデルを用意している。

 日本IBMの「IBM BladeCenter HS21 XM 仮想化専用モデル」は、Xeon E5450(3GHz)を最大2ソケット、メモリー容量最大32GBまで拡張可能なスペックで、無償の組み込み専用仮想化ソフト「VMware ESXi」を内蔵モジュラー・フラッシュ・ドライブに搭載した状態で提供する。製品到着後に電源を入れると、VMware ESXiが起動。管理者パスワードとIPアドレスを設定するだけで、仮想マシンの作成やゲストOSの導入が可能になる。

 デルは、VMware ESXiまたはCitrix XenServerを組み込んだSDカードをPowerEdge M805と同 M905に搭載して提供。さらに仮想化環境を評価する「仮想化ヘルスチェックサービス」や「仮想化マネジメントソリューション」などサービス充実を図る。

 仮想化を視野に入れたブレードサーバー導入では、仮想化ソフト搭載の有無だけでなく、支援サービスの充実度も選択の基準となる。