業務アプリケーションなど情報システムのプラットフォームとなるコンピュータ,すなわちサーバー機には,様々な種類の製品がある。パソコンの技術や部品を流用したサーバーから大型のUNIXサーバー,あるいはメインフレームまで多岐に渡る。では,何を基準にして選べばよいのか。結論から言えば,昨今のサーバー選びでは,サーバー・ベンダーごとの戦略や方向性といった知識と,自らがサーバー機に求める要件(サービス・レベル)が,これまで以上に重要となる。

 サーバーに関する議論を見ていると,業務システムの稼働プラットフォームをサーバーという言葉でひとくくりにしているケースが多いが,こうしたくくり方は危険である。そもそも,サーバー機はそれぞれ,その種類に応じて価格帯がまったく異なる。安いパソコン・サーバーであれば数万円程度からの値付けであり,一方でメインフレームなら数億円規模にもなる。情報システムを支えるコンピュータと言っても,その価格帯によって製品の特性がまるで異なることを,まずは理解しなければならない。

 よく,サーバーOSのシェアを知りたいという質問があるが,この観点からすれば,サーバー上で稼働するOSについて,WindowsかUNIXかという単純な比較は現実的でないことが多い。何故なら,サーバー機の価格帯に応じて,OSのシェア分布がまるで変わってくるからだ。価格100万円未満で買えるコモディティ・サーバー市場で使われるOSは,そのほとんどがWindowsであり,Linuxがそれに次ぐ()。この一方,価格100万円を超えると,UNIXのシェアが増えていく。数千万から数億円規模の金額になると,メインフレーム用OSといった他のOSもシェアを獲得していく。

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図●サーバーの価格帯とOSのシェアの関係(出典:ガートナー)

求める信頼性次第でサーバー機の種類が自ずと決まる

 では,サーバー機の種類に応じて,なぜ価格がこうも違うのか。この問いに対する一つの重要な答えは,信頼性(サービス・レベル)の違いである。事実として,何億円もするコンピュータは止まらないことを想定してベンダーは製品を企画し,開発を行っている。一方で,単体の数万円のコンピュータには必ずしも無停止を期待することはできない。この違いが,サーバー機を語る上での,一つの重要なポイントとなっている。しかし,ここ数年,日本のサーバー・ベンダーは高価なサーバー機が高価である理由をほとんど説明できていない。そこで,コモディティ・サーバー機とメインフレームを比較するような乱暴な議論になっているのが現状だ。

 実際,市場を見ても,信頼性に対する潜在需要の割には,日本において,信頼性の高い高価なサーバー機は売れていない。逆に,海外ではこうしたサーバーは今でも売れている。日本では,ユーザーにとって,高価なサーバー機が選択候補にあがってくることは少ない。議論にあがってくるのは主に,安価なコモディティ・サーバー機をベースとした仮想化の話題などである。だが,コモディティ製品は,そもそもミッション・クリティカルな用途には適さない。現在語られているサーバー仮想化は話題の技術だが,ユーザーは,そもそも多くがコモディティ分野の話題である点を,まずは理解しておく必要がある。

 ユーザー企業は,サーバー機を,どのような業務に利用するのか,また,それぞれどのような信頼性が必要なのかを,もう一度しっかり考える時期に来ている。サーバー選びの基本とは,要求するサービス・レベルを決めて,そのレベルに応じた価格を支払う,というものである。価格と信頼性は対になっているため,反対に言えば,予算の都合によって,実現可能なサービス・レベルの上限が決まる。