コンプライアンス(法令順守)意識の高まりを背景に,電子メールを蓄積するメール・アーカイブに注目が集まっている。社員の電子メールの内容を,不祥事の追求材料に使うようになったためだ。電子メールのレスポンス低下やメールボックスの容量不足の解消だけでなく,コンプライアンス目的の導入が増えてきた。(加藤 慶信=日経ソリューションビジネス

 企業のコミュニケーション手段として,当たり前に使われている電子メール。それが今では企業の不祥事を追求する材料としても使われるようになった。こうしたコンプライアンス時代を背景に,注目が集まっているのが電子メールを蓄積するアーカイブのソリューション,メール・アーカイブである。

 これを活用すれば,社内外でやり取りしたすべての電子メールを保存できる。必要な内容を後から検索できるようにして,企業内で何らかの事件・事故が発生したときには,即座に原因の追跡や調査に使える(図1)。

図1●メール・アーカイブの主なニーズと機能
図1●メール・アーカイブの主なニーズと機能

 ベンダーの1社は,「電子メールのコミュニケーションが一般的になるとともに,電子メールの中身が重要になっている。誰が誰に,いつどんな内容を送信したか,電子メールのトレーサビリティが求められている」と話す。

 メール・アーカイブの導入は金融機関や官公庁で先行していたが,今は日本版SOX法対策などの影響で上場企業全体に広がっている。特に,2007年1月30日から本格出荷が始まったMicrosoft Exchange Server 2007への移行をきっかけに,併せてメール・アーカイブの導入を検討する企業が増えている。

製品/サーヒスの形態は多種多様

 メール・アーカイブは既に多くの製品が登場している。

 例えば,サーバー機やOS,ストレージなどを一体化したアプライアンス・サーバーがある。アプライアンスなら,導入前にSIベンダーからコンサルティングを受ける必要がなく,約1カ月程度で導入できる。ただし,導入後のサポートはハードウエア・ベンダーから直接受けることになる場合が多い。

 一方,ソフトウエアの形態で売っている製品は,Windowsサーバーやストレージ,データベース・サーバーを組み合わせる必要がある。冗長性や拡張性を高められる半面,システム構成はやや複雑。また,導入に当たってはストレージの容量やサーバーの処理性能などを決める事前調査やシステム設計が不可欠になる。あるSIベンダーは「導入には半年~1年かかる」と指摘する。

 ただし,アーカイブ用に導入したストレージは,電子メールだけでなく,データベース・サーバーのログなど他の情報システムのアーカイブにも流用できる。データ暗号化装置やストレージをアーカイブのための共通基盤とすることで,電子メールを足がかりに,各種情報システムのデータのアーカイブに着手できるようになる。

 企業が自前でアーカイブの仕組みを構築するだけでなく,プロバイダやホスティング事業者も,電子メールのアーカイブをサービス化して提供している。すべての送受信メールをアーカイブする単純なものから,あるキーワードを含んでいたり添付ファイルの付いた電子メールだけをアーカイブするといったフィルタリング機能を提供するものもある。月額料金は検索対象のユーザー数や管理者,ストレージの容量などで決まる。

 ホスティングの場合,アーカイブした電子メールの信頼性が担保されているかどうかが重要になる。あるベンダーは,SAS70/18号監査に対応した運用体制を維持することで,データの改ざんなどが生じないことを担保している。