空きスペースあれど“満室”の実態
 データ・センターが不足していると言っても,実際にはスペースそのものが全くなくなっているわけではない。スペースが空いていても,サーバーを追加できない状況にあるのだ。

 最大の原因はブレード・サーバーの採用が進んでいること。ブレード・サーバーは,専用きょう体にフル実装すると,単位面積当たりの消費電力と発熱量,荷重が今までのハードウエアとは比較にならないほど大きくなる。データ・センターの供給電力と空調の能力が間に合わず,重量も床の耐荷重を超えてしまう。このため,わざとスペースを空けて運用しているのが実情である。

ブレードなのに集積できない

 データ・センターは1ラック当たり3kVA(ボルトアンペア)から4kVAの消費電力を想定したところが多いという。ところがブレード・サーバーは,1ラックで6kVA近くの電力を消費するものがあるという。製品によっては,1ラックの常識的な最大電源容量を超えてしまう。

 空調などの設備の入れ替えのように長時間の工事を伴う増強は容易ではない。既に多数のサーバーを運用しているデータ・センターでは,サーバーを止めることは許されないからだ。同様に,建屋全体の供給電力量や,床の耐荷重の上限を引き上げることも難しい。たとえ供給電力量を引き上げることができたとしても,それに合わせた自家発電装置の交換やUPS(無停電電源装置)の増強を伴うため,膨大な投資が必要になる。

 結果として,建設当時のスペックのまま運用しなければならず,ブレード・サーバーを利用する場合にはわざとスペースを空けざるを得ない。ある事業者は,「ブレード型の導入を検討したが,電力や発熱の問題でラックを埋められずにスカスカになる。これでは従来のラック・マウント型サーバーを入れても同じと感じたことがある」と言う。

 ただ,この2年ほどの間に新装・新設したデータ・センターは,消費電力の大幅な増大を見込んで建設されており,最新のブレード・サーバーにも対応できることが多い(図A)。

図A●データ・センターの設備の変化
図A●データ・センターの設備の変化 サーバー機やハード・ディスク装置(HDD)の高集積化などによって消費電力と発熱量が上昇。データ・センターの設備もサーバー機の進化に合わせて電力供給などを増強してきた。図中の数値は米国のThe Uptime Instituteによるデータ・センターの設備評価区分に基づく。[画像のクリックで拡大表示]

 ハウジング・サービスを利用する場合などは,ブレード・サーバーを使ってスペースを節約するできるかどうかが,データ・センター選びのポイントの一つになりそうだ。