企業の規模や業種に関係なく,今やWebサイトの無い企業を見つけることの方が難しい。ところが,そのWebサイトを訪れるインターネットユーザーがどのようにサイトを利用しているのかをきちんと把握し,その行動履歴を基にサイトを改善していくといったプロセスを着実に実行している企業は,まだそう多くはないようだ。

 筆者は,これまで「日経ネットマーケティング」誌面でアクセス解析の活用に関する記事を何度か書いてきた。その過程で見えてきたのは,先進的な企業は次々と高度な活用法を会得していく一方で,初歩でつまづく企業も相変わらず多いという傾向だ。どうやら,アクセス解析を本格的に始めようとする企業やその担当者が失敗しがちな落とし穴があるということらしい。

 その代表例が「アクセス解析ツールの優劣を気にしすぎて燃え尽きる」ことではないかと思っている。アクセス解析のツールを新規に導入したり,入れ替えたりするときに,どのツールを使うのがいいのか,初心者の中には“熱心に考えすぎる”人が多いようだ。

方式の違いや価格など,確かに悩む点は多い

 確かにアクセス解析ツールの選定では,考えるべき点はいろいろと多い。例えば,アクセス解析のデータの取得方法。アクセス解析ツールについて“勉強”を始めると,大きく分けて「ログファイル方式」「Webビーコン方式」「パケットキャプチャー方式」の3種類があることに気付くだろう。ツールによっては複数の方式に対応しているものもあるが,どれか1つを採用しているものが多い。方式による一長一短もあるので,自社で導入するツールは,どの方式のものを利用するのがいいのかを,まずは考える必要はある。そして,同じ方式を採用するツールでも,機能に差があったりもする。

 これも当たり前の話だが,導入時や運用時の費用も重要だ。アクセス解析ツールには,「Google Analytics」など無料で使えるものもある。高いか安いか以前に,そもそも「有料のツールが必要なのか」という検討が必要かもしれない。

 こうして導入時に数多くの項目を検討・評価すること自体は悪いことではない。問題なのは,せっかく導入しても,導入後に本格的な活用に至らないことだ。あるアクセス解析ツールの提供企業の担当者によると「ツールの選定時に,機能の有無や違いを比較する○×表を独自に作る人がいるが,そういう担当者に限って,使いこなしてくれない」という。これでは何ために導入時にエネルギーを注いだのかが分からない。

 導入後にアクセス解析ツールを使わないのは,「データの見方や生かし方が分からない」ことが最大の理由なのではないだろうか。アクセス解析ツールの導入自体はゴールではない。データをWebサイトの改善に生かすことが本来の狙いだ。

 そんなことは分かっていても,アクセス解析の仕事を専任で与えられる人は少ないのが実情である。多くの担当者は,ほかの業務と兼任で行うことが多い。別の仕事で手が回らない中で,「分からない」という問題はは解消できず,結局アクセス解析がおざなりになっていくというのが,「燃え尽きる」典型的なパターンといえそうだ。

米国のマーケティング担当者は「燃え尽きない」

 以前,アクセス解析ツールを提供する米ウェブトレンズ社のジェームス・マクドーマット氏に「米国のマーケティング担当者はアクセス解析ツールの導入で“燃え尽きる”ことはないのか」と聞いたことがある。すると即座に「それは無い」と言われてしまった。米国企業では「ツールを導入したことに対するリターンが問われる」ため,担当者が必死に成果を出そうとするのは当然かもしれない。幸か不幸か,担当者がそんな風に追いつめられる日本企業はまだ少ない。

 では,初心者がツールを使いこなしてアクセス解析を「ものにする」ためには,何から始めたらいいのだろうか。解析ツールの提供企業が提供するサポートサービスを利用するのも一つの手だ。最近ではアクセス解析の活用に関する書籍も多数登場している。最終的な解決策ではないが,燃え尽きないためには,まずは新たな刺激やモチベーションを得ることが不可欠。さまざまな情報源からアクセス解析への新たな知見を見いだして,活用へのヒントを得ることが重要だろう。

 なお,日経ネットマーケティングは7月31日に,実践セミナーとして「中小企業のためのアクセス解析導入・活用講座」を開催する。興味のある方はぜひご参加いただきたい。