写真1●OPhoneのトップ画面。アイコンがiPhoneに似ている
写真1●OPhoneのトップ画面。アイコンがiPhoneに似ている
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写真2●OPhoneによるビデオ再生。実機ではワンセグのようにテレビ映像が見れるもよう
写真2●OPhoneによるビデオ再生。実機ではワンセグのようにテレビ映像が見れるもよう
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 中国で2009年7月中にも販売が始まる「OPhone」をご存知だろうか?中国の偽物携帯と思った方は残念。確かに,中国にはiPhoneと見た目がそっくりな偽物iPhoneである「HiPhone」や「CiPhone」があるらしいが,こうしたものとは本質的に異なる。OPhoneは世界最大の契約ユーザー数を持つ携帯電話事業者,中国移動(チャイナ・モバイル)が,真面目に作っている携帯電話プラットフォームなのだ。NTTドコモで言う「FOMA」に相当するものが中国移動のOPhoneである。

 OPhoneの実体は,米グーグルのAndroidをカスタマイズし,中国移動仕様に仕立てたもの。アプリケーションのランチャーのほか,ミドルウエアなどに手を入れている。Androidで用意されたAPI(Application Programming Interface)はそのまま残してあり,Android用のアプリケーションとも100%の互換性がある。「OPhone独自のAPIとして全体の10%程度を追加してある」(OPhoneに詳しい技術者)という。つまり,OPhone上ではOPhone専用のアプリケーションだけでなく,Androidのアプリケーションが動く。

 その見た目はというと,実はiPhoneそっくりだ(写真1写真2)。プリインストールされているアプリケーションの機能やそのアイコンのイメージもほぼ同じ。例えば,最新版のiPhone 3.0で初めて入った「Spotlight」同様の機能も入っている。これは本体に格納されたアドレス帳やメモ帳などを,横断的に検索できる機能だ。ただし,iPhoneにない独自の機能も持つ。例えば,中国版ワンセグである「CMMB」(China Multimedia Mobile Broadcasting)の視聴アプリケーションが入っている。既に中国ではCMMBを視聴できる携帯電話が販売されていることから,今月に発売されるOPhoneでも同じように動作すると思われる。

 興味深いのは,Androidの特徴の一つであるグーグルのサービスとの連携部分は完全に消してある点だろう。例えば,AndroidにはもともとGmailやGoogle Maps,アプリケーション・マーケット「Android Market」アクセス用アプリケーションなどが入っているが,こうしたものは一切取り除かれている。その代わりに中国移動のWebポータル「monternet」やメール・サービスに簡単にアクセスできるアイコンをランチャー画面に用意している。

ふがいない日本の通信事業者

 ところでなぜ,中国移動がiPhoneそっくりのOPhoneを提供するのか。同社の会長兼CEOである王建宙氏によれば,「通信事業者の収益基盤を端末メーカーに取られないようにするため」だという。iPhoneのように携帯電話メーカーが端末とアプリケーションや音楽の配信サービスをセットにして提供すると,携帯電話事業者は通信料金だけを稼ぐ単なるネットワーク屋になってしまう。アプリケーションやコンテンツの販売という“おいしい”部分を握られないためには,携帯電話事業者自らがこうしたサービスに乗り出す必要がある。そのための端末がOPhoneだというわけだ。実際,中国移動はOPhoneの販売と同時期に,OPhone用のアプリケーション・マーケットの提供を開始する計画を持つ。

 こうした事情があるとはいえ,日本人である記者の眼には,中国を代表する企業がiPhoneそっくりなものを作ることに違和感を感じる。一方で,Androidという改変自由なプラットフォームを使ってiPhone対抗の端末を作り上げるその行動力と闘争心にうらやましさも覚えた。というのも,NTTドコモが7月10日に国内初となるAndroid端末の出荷を開始したが,グーグルが提供する環境をそのまま使って出してきているからだ。OPhoneと同じようなコンセプトのものは期待しないが,どこかに“ドコモの意地”が見たかった。