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記者の眼

自治体にとって内部統制は改革の好機

 3月期決算の上場企業が相次いで、J-SOX(日本版SOX法)に基づく内部統制報告書を開示している。6月末までに、3月期決算の企業の内部統制報告書がでそろった(参考記事)。

 実は、内部統制の議論が進んでいるのは民間企業だけではない。自治体でも同様の議論が進行中だ。自治体職員でもご存じでない方が多いかもしれないが、総務省の「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」が2009年4月に最終報告書を公表した(参考資料)。

 最終報告書の分量は212ページにも及ぶ。そのうち報告書の本文が81ページ、残りは参考資料である。参考資料には、国内外の具体的な取り組みが記述してあり、自治体の方には非常に参考になるだろう。

基本的な枠組みは民間と同じ

 自治体の内部統制といっても、民間企業と基本的な枠組みは同じである。以下が、最終報告書における内部統制のフレームワーク(目的と基本要素)である。

●目的
(1)業務の有効性及び効率性
(2)財務報告の信頼性
(3)資産の保全
(4)法令等の遵守

●基本要素
(1)統制環境
(2)リスクの評価と対応
(3)統制活動
(4)情報と伝達
(5)モニタリング
(6)ITへの対応

 これらは、J-SOX施行に際して金融庁が公表した「基準」および「実施基準」におけるフレームワークと同じだ。民間企業で内部統制プロジェクトにかかわった方には、おなじみの項目だろう。

 自治体が民間企業と異なるのは、内部統制に関する法的根拠がないということだ。民間企業の場合は、金融商品取引法という法制度の裏づけがあったため、上場企業すべてが内部統制の体制を整備するに至った。これに対し、自治体では内部統制プロジェクトを立ち上げようという気運は低い。

 加えて、民間企業と自治体では内部統制の意味合いも大きく異なる。民間企業と自治体では、業務特性が違うからである。

 内部統制のフレームワークでは目的として4つの項目を掲げている。初年度を終わった民間企業の場合、とりあえず法対応のために「財務報告の信頼性」に重きを置き、業務の効率性などは後回しにした。営利を追求する民間企業の場合、財務報告プロセス、すなわち決算が企業価値や現場の評価において重要視されており、また不正が起こりやすいポイントでもあるからだ。

 一方、自治体では期中の収益がほとんどないため、決算よりも予算編成が重要なプロセスだと位置づけられる。このため、財務報告の信頼性を重視した民間企業の内部統制プロジェクトをそのまま自治体で実践しても、体制を整備する意義は小さい。

 それでは、自治体で内部統制プロジェクトを立ち上げる必要はないのか。筆者は、内部統制プロジェクトが自治体改革を推進する切り札になるのではないかと思っている。

内部統制が自治体の「検証機能」強化につながる

 そもそも、自治体改革が進まない理由は何か。これを突き詰めると、PDCA(計画・実行・検証・改善)サイクルのうち、「C」すなわち検証の機能が弱いからである。これには大きく2つの理由がある。

 1つ目が、「行政無謬(むびゅう)神話」とも呼ばれるものだ。これは「行政は悪さをしない」「行政が行うことは正しい」というもので、このために過去の行為を検証することを軽視されるのである。

 しかし一般市民は、この神話が幻想であることを知っている。自治体の職員も本音の部分では気がついている。それでも、建前上は行政は無謬であるので、検証のプロセスが根づかない。

 もう1つの理由は、改革の旗振り役がいないか、いたとしてもある期間を経るといなくなってしまうことである。民間企業の場合、複数の業務や事業にかかわる大改革を実践する時には、経営トップが旗振り役となる。逆に経営トップが旗振り役にならないと、その改革は失敗に終わることが多い。

 経営トップを自治体に当てはめると、知事や市長などの首長となる。改革派の首長も少なくないが、行政改革に詳しい識者の間では、よく「改革派の首長は2期が限界」と言われている。改革には職員や民間企業、市民の痛みが伴う。このため、持っても2期で、3期目には落選してしまうというのである。

 筆者は、この2つの課題を解決するのが内部統制プロジェクトではないかと考えている。内部統制は持続的にリスクをモニタリングすることが大前提である。このことはPDCAサイクルが継続することを意味する。

 行政無謬神話の下では、建前上は一度作ったプロセスに重大なリスクは存在しないはずだ。しかし環境変化の激しい現在、たとえ当初に重大なリスクがなくても、後でリスクの度合いが変わってくることが多い。行政が無謬だと仮定しても、PDCAサイクルを回すことは不可欠なのだ。

 もう1つの旗振り役のほうは、構造的な問題なので根本的な解決は難しい。しかし、旗振り役が個人ではなくて、組織的なプロジェクトとして機能すれば同等の役割は果たせる。

 では、どうすれば組織が旗振り役を担えるのか。内部統制の目的を、当初は現場の職員にメリットがあるものとすればよいのである。具体的には4つの目的のうち、(1)の「業務の効率性」の優先順位を最も高くすればよい。サービス内容が質・量とも増えるのに職員数を増やせない現場のために、業務の重複や無駄を棚卸して改革することで、現場の仕事を楽にする---これを内部統制の基本方針として掲げるのである。

 このように言うと、専門家にはお叱りを受けるかもしれない。しかし、法的な外圧や財務的なメリットがない以上、改革を担う個々人にメリットがあるようにしなければ、物事は進まないだろう。

 J-SOXでも、民間企業は初年度に「財務報告の信頼性」を重視し、「業務の効率性・有効性」は次年度以降の課題としていた。自治体でも当初は「業務の効率性=現場の仕事を楽にする」を優先課題として掲げ、次年度以降にこのほかの目的へ広げていけばよいのではないだろうか。

 こうした取り組みは、別に内部統制プロジェクトでなくても取り組むことはできる。しかし、営利の追求のために改革が不可欠な民間企業と違って、自治体の場合は何かのきっかけがないと改革への声が挙がりにくい。

 自治体では今、首長はもちろんのこと、現場の職員でも多くの人たちが改革が必要だという思いを抱いている。民間企業が内部統制を整備している今こそ、内部統制をテコに行政改革を進める好機ではないだろうか。

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