今、世界のWebを最も騒がせているのはTwitter、日本語名「ついったー」である。「『いまなにしてる?』を書き込むマイクロブログ」と紹介される無料サービスがどうWebを騒がせているのか、Webの何を変えていくのかについて書いてみたい。

今、そこで起こっているWeb

 自分も利用者だから分かるのだが、ついったーの最大の面白さは、世界中から、ほぼリアルタイムに近い情報が自分の目の前に飛び込んでくることにある。あるいは世界に対して、自分がリアルタイムに情報を発信できることだ。この面白さを感じて、ついったーの利用者が増えているのだ。

 最大で140文字までの情報を公開できるマイクロブログ、「いまなにしてる」をつぶやくゆるいコミュニケーションが売り物のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)という定義は間違ってはいない。だが、ついったーの面白さをうまく伝えているとはいえないだろう。

 普段はあまり意識していないが、インターネットの世界は意外に静的だ。検索したり、URLを入力したりして情報にアクセスしている。リアルタイムでやり取りできることで、情報の世界ははるかに豊かなものになる。そして、リアルタイムに情報を公開する方法はあるようで少ない。RSSリーダーが最もこれに近いものだろうが、受信と発信の双方の機能を備え、140文字という制限を課したついったーのほうが、リアルタイムに情報をやり取りしやすい。

 リアルタイムでやり取りされる情報は人間の判断や行動に影響を与える。筆者がこのことを最も強く感じるのは、ニュースを受け取るときである。ついったーを使い始めてから、ニュースに対する感度は確実に上がった。

 例えば今年4月の米オラクルが米サン・マイクロシステムズを買収したというニュースも米国で発表されてから数分後には、手元のパソコンで確認していた。この原稿を書いている間にも、イラン情勢を巡るニュースが次々に飛び込んできている。

CNNやウォールストリートジャーナルも

 日本のメディアはそれほどでもないが、少なくともIT系に関する限り、米国のオンラインメディアはついったーを使って、ニュースのタイトルとURLを発信するのが当たり前のことになってきている。IT系だけでなく、米CNNや米ウォールストリートジャーナルのような大手メディアも、専用のアカウントを取得して、ついったーで情報を発信している。

 いわゆるメディアだけではない。米グーグルやオラクルなどの企業は、各種の情報をついったーで公開している。グーグルは一体、どれほどの数のアカウントを使って情報を発信しているのか分からないほどだ。米デルは、ついったーを利用して、パソコンの特売情報を発信している。既についったーで300万ドルを売り上げたという。

 さらについったーは人のメディア化を推し進める。これは米国に限った話ではない。筆者の知人もついったーでさまざまな情報を発信している。その中には確実にニュースとしての価値を備えたものがある。人事、イベントを含め、企業からの公式な発表情報であるプレスリリースよりも面白いものも多い。ニュースが飛び出すメディアとしては、2ちゃんねる以来の存在という印象を持っている。

 リアルタイムの情報のやり取りは別にニュースだけに関係するわけではない。さまざまな楽しみ方がある。一つは実況だ。日本でもイベントでの出来事を実況するようについったーに書き込む人が増えている。大規模なイベントの際には、そこここから歓声が聞こえるような状態がついったー上に現れる。

 もちろん、つぶやきを読むことで親近感が強まった知人もいる。遠距離でなかなか話す機会のなかった知人との交流も復活した。余談だが、競合媒体のキーパーソンの最新動向も居ながらにして、ある程度は分かるようになった。こういった感覚はついったーを使う前には、経験したことがなかった。