「目の付けどころが良い」---。記者は,こうした製品/サービスが大好きである。純粋にその製品の存在自体が役に立つだけでなく,その着眼点の素晴らしさが記者の脳みそに良い刺激となり,新たなアイデアの糧となるなど,発想を豊かにしてくれるからだ。今回は,ここ2カ月ほどの間に遭遇した,目の付けどころが凄い3製品を紹介したい。

「誰がための製品か」が説得力を生む

 1つめは「Autoブラウザ名人」(製品記事)。Webブラウザ操作が必要な場面において,人間の代わりにWebブラウザを操作してくれるロボット・ソフトである。ここで重要なポイントは,単にURLによるHTTPリクエストやHTTPデータ転送を再現しているのではなく,WebブラウザというGUIアプリケーションを外部から制御し,実際に操作する点だ。つまり,ユーザーによるWebブラウザ操作をロボットが代わりにやってくれるのである。

 確かに,あらかじめ決められたURLに対して定期的にリクエストを発行するだけなら,その手のツールを用意すればいいし,自作も容易だ。定型業務をバッチ・ファイルで自動化する手法は,コンピュータ利用の基本中の基本である。ところが,世の中は自動化が容易な処理ばかりとは限らない。最後には,どうしても自動化が難しい作業が手元に残ってしまう。Autoブラウザ名人は,対象がWebブラウザに限定されるものの,こうした手間のかかる処理から人間を解放する。

 もちろん,これまでにも同じ用途として使えるソフト(つまり同じ機能を持つソフト)はあった。「機能テスト・ツール」と呼ばれる製品ジャンルがそれだ。機能テスト・ツールは,Windowsアプリケーションに対するユーザーのマウス/キーボード操作をレコーディング(記録)してスクリプトを自動生成し,必要に応じてスクリプトを編集できるようにしたものだ。そして,ユーザーがアプリケーションを操作する代わりにスクリプトを自動実行させ,アプリケーションが正しく期待通りに動作しているか否かを調べる。

 ここで,Autoブラウザ名人に感心したのは,「そもそもが機能テスト・ツールとして作られた製品ではない」という点である。最初からユーザーの操作を代行する目的で製品化されている。記者は,ここにしびれた。アプリケーション開発工程/テスト工程での機能テストや負荷テストというのは,あくまでも品質向上のためにあり,エンドユーザーの日常業務を代替することを第一の目的としては掲げていない。だが,Autoブラウザ名人にとっては,それこそが第一なのである。

「製品とのマッチング」が機能を生かす

 次に紹介するのは,無線LANルーターの「Aterm WR8150N/WR4100N」(製品記事)。無線LANルーターでありながら,無線LAN機能をOFFにできるところと,その手順としてボタン一つで済む点に,記者はまいってしまった。無線LAN機能をOFFにすることの狙いは,もちろん省電力である。

 もっとも,ノート型パソコンなどは,同様の機能をすでに搭載している。バッテリで駆動させることを前提としたノート型パソコンでは,無線LANやBluetooth機能のON/OFFによって駆動時間に差が出てくるからだ。しかし,ノート型パソコンにとって無線LAN機能のON/OFFとは,数ある機能の中の一つに過ぎず,製品の“アイデンティティ”と呼べるほどのものではない。

 ここでAterm WR8150N/WR4100Nが革新的なのは,無線LANルーターという単機能の機器でありながら,その主要機能である無線機能をOFFにしてしまうという大胆な発想だ。極めて目立つ特徴であり,付加価値でもある。これこそ製品の“アイデンティティ”と呼ぶにふさわしい。ちなみに,ボタンによるON/OFFに加えて,時間帯などによるON/OFFのスケジュール化も可能である。

「これまでなかった」製品はシンプルにキャラが立つ

 最後に「OpenAccess for ODBC for Salesforce DataSource」(製品記事)を紹介したい。SaaS型CRM(顧客関係管理)サービスのSalesforce CRMに対して,SQL言語でアクセスするためのODBCドライバである。この一文だけで存在意義のすべてを言い表せるところがシンプルで力強く,製品としてキャラが立っている。ODBC経由のSQLクエリーをHTTP(SOAP)を用いたSalesforce専用のクエリーに変換してくれるのだ。いままでは,こうした製品は,あまりなかった。