先月(2009年4月)からUQコミュニケーションズのモバイルWiMAXのサービス「UQ WiMAX」を利用しています。一般を対象としたモニター募集に応募して当選したものです。幸い,オフィス,自宅ともにサービス・エリアとなっており,最新のモバイル通信技術を試すことができています。

 実効速度は,2Mビット/秒強程度。同じ場所でイー・モバイルでも1Mビット/秒は出ていますから,圧倒する速さというほとではないようです。今後,基地局の整備が進むことにより,速度も上がっていくと期待しています。

 問題になるのは,多くの人が指摘するようにサービス・エリアの狭さです。自宅やオフィスがサービス・エリアであっても,郊外や地方都市などに出かけたときのことを考慮して,ある程度エリアが広がるまでは手を出さないと考えている人も多いでしょう。

 このエリアの狭さを何とかカバーできるのでは,と思わせる動きが3月にありました。NTTドコモと日本通信が「レイヤー2相互接続」を完了したことです(関連記事)。日本通信はレイヤー2接続の完了に伴い,月次契約なしに1分単位でNTTドコモの3Gサービスを利用できるサービス「ドッチーカ」を始めました。

 記者のように,普段は東京23区内で活動している人間は,平素はUQ WiMAXを利用し,郊外や地方に出かけるときだけ,スポットでドッチーカを使えばよいわけです。東京にいる時は高速なサービスを,出張中などは速度は落ちるもののカバー・エリアの広いサービス,と使い分けることができます。

 ここで気になるのが料金です。UQコミュニケーションズの料金は,月額4480円。現時点でライバルとなるイー・モバイルは2年間の継続利用という条件があるものの月額4980円で,その差は500円。日本通信のドッチーカは1分10円なので,1時間で600円です。

 月に1回出張する人がホテルで1時間利用する程度なら,「UQ WiMAX+ドッチーカ」を利用するかどうか迷うところです。しかし,滞在時間の長い東京で高速なサービスを利用できる,契約期間の縛りがない,イー・モバイルに比べてドコモのサービス・エリアが広い,などの違いを考慮すれば,「UQ WiMAX+ドッチーカ」はもう少し高く評価できるでしょう。

 この料金は2社のサービスを別々に利用したときの単純合計です。あるMVNO(仮想移動通信事業者)がUQコミュニケーションズとドコモ(またはイー・モバイルなど)のそれぞれと契約し,エンドユーザーに対してワンストップでサービスを提供すれば,価格を下げる余地はあるはずです。

 ここまでの話を「地方在住の自分には関係ない」と思った読者も多いでしょう。しかし,上記の例で「郊外や地方都市」と「東京都心」を逆にした議論も可能です。普段は3GなりHSDPAなり“地元で最速”のサービスを利用し,東京に出張したときにUQコミュニケーションズのMVNOが提供する時間課金サービスを利用するのです。

 まだこうしたサービスの提供に名乗りを上げている企業はありませんが,UQコミュニケーションズのサービスに対するMVNOの関心は高いようです(関連記事)。十分なニーズが見込めるなら,そう遠くない時期に登場することでしょう。

1年後もMVNOに選ばれるか

 このようにWiMAXにとってMVNOは,自社サービスのエリアの狭さをカバーし,本来は営業対象外となるエリア外の居住者にも回線を販売してくれる存在といえます。では両者はいつまでも共存共栄していけるのでしょうか。今後,MVNOがWiMAXの足を引っ張る可能性もゼロではなさそうです。

 そのきっかけになるのは,早ければ2010年に始まる予定のモバイルWiMAXより高速なLTE(3.9G)です。LTEは当初は大都市限定でしょう。しかし,この記事の前半で議論したように,ユーザーが3Gや3.5G(そのころには3.5Gのエリアもさらに広がっているでしょう)のMVNOを併用すれば,エリアの問題はそれなりにカバーできます。高速を望むユーザーは,LTEのエリアが十分に広がる前でも,WiMAXからLTEへ早々に乗り換えられるわけです。

 一方で,前半の議論と異なる点もあります。「大都市ならLTE,地方主要都市ならUQ WiMAX,それ以外なら3G(3.5G)」といった具合に,UQ WiMAXが第3のポジションを占める可能性があることです。エンドユーザーはMVNOのサービスをうまく利用すれば,3つのサービスのいいとこ取りができます。

 そのためには,WiMAXは「エリアはLTEより上,速度は3.5Gより上」との評価を固めておかなければなりません。LTEのサービス開始時点で,WiMAXがエリアでLTEを,実効速度で3.5Gを圧倒的に(エンドユーザーに分かりやすい形で)リードできていなければならないわけです。

 そうでなければ,MVNOもエンドユーザーも「エリアは3.5Gよりダメ,速度はLTEよりダメ」としてUQ WiMAXに見切りを付けてしまうのではないでしょうか。