マイクロソフトが2009年3月に正式版をリリースしたInternet Explorer 8。新機能の目玉の一つである「Webスライス」のサイトへの実装方法と使われ方を調べてみた。実装自体のハードルはさほど高くなさそうだが,キラーコンテンツを見つけるのは難しそうだという印象を抱いた。
Webスライスはその名前の通り,Webページの一部を,ブラウザ画面とは別の小さな画面(「プレビュー画面」と呼ぶ)に切り出して表示させる仕組みである(図1,図2)。Webスライスとして切り出す個所はWebサイト作成者が定義する。ユーザーがその個所をIE8に登録すると,どのページを見ていても,お気に入りバーをクリックするだけでそこをプレビュー画面に表示できる。いちいちページ全体を表示し直さなくても,最新の情報を見られるわけだ。
Webスライスとして登録したページをブラウザが読みに行く間隔は,ユーザーがIE8で設定できるほか,Webサイト作成者が設定できる。情報が更新されていたときには,お気に入りバーに太字で表示される。また,プレビュー画面に付随するボタンをクリックして,最新の情報を強制的に表示させることもできる。
Webサイト作成者はプレビュー画面に,Webスライスを設定したページとは別に用意したページを表示させることも可能である。これは例えば,Webスライスを設定した個所に含まれる情報を,プレビュー画面用にコンパクトに見やすく加工して提供するなどの用途に利用できる。
実装のハードルは高くなさそうだが…
筆者はマイクロソフトが提供しているWebスライスの仕様書(Web Slice Format Specification - Version 0.9)を参考にして,簡単なサンプルを作成してみた。基本的に,作成済みのWebページからWebスライスとして切り出したい個所のタグにclass指定を追加すれば済む。HTMLを何とか読み書きできるレベルの筆者であっても実装は容易だった。
更新を通知するページやプレビュー画面のページを別に用意するときも,それらをHTMLで関連付けするだけで済む。こちらもお約束の記法に則って書くだけなので難しいことはなかった。企業のWebサイトで実用的にWebスライスの機能を提供するには,更新を通知するページやプレビュー画面のページを定期的に自動生成する仕組みが必要になるが,それはWebスライスに限った話ではない。
より難しいのは,どのような内容の情報をどのような構造で提供するのか,ということだろう。そこで,マイクロソフトが2月に開催したIE8の発表会で紹介したサイトで,Webスライスがどのように使われているのかを見てみた。
比較的多く見かけたのがニュース情報の提供である。別のサイトを見ていても,お気に入りバーをクリックしてプレビュー画面を開けばすぐに,最新のニュースを確認できるというわけだ。
確かに便利そうではあるが,これはRSSによるニュース提供とさほど変わらないようにも思える。また,多くのサイトで,RSSではニュースをすべて提供しているのに対し,Webスライスではプレビュー画面に納めるためもあってか,ある程度数を絞って提供している。これはRSS利用者からすると,物足りなく感じるかもしれない。
Webスライスはニュース配信よりも,RSSでは逐一配信しにくい,「定点観測」で状況の推移をチェックする用途に向いているようにも感じる。実例では,オークションの最新情報,価格の最安値情報,各地の天気情報,などである。ただ,こうした情報の場合,プレビュー画面の情報だけでユーザーの欲求が満たされてしまい,元のページを訪れるユーザーが減ってしまうような情報は提供しにくいように思える。
このように考えると,Webスライス普及のキラーコンテンツになりそうなコンテンツは,現時点では見当たらない。思いもかけない使われ方が登場するのを期待しつつも,IE8が普及するにつれてWebスライスも徐々に普及していくという見方が妥当なようである。