大型の不況が到来している。これから厳しい状況をSIerが生き抜き、成長していくためには、専門性と顧客満足、効率性を向上させることが重要である。

コスト削減の犠牲者にならないために

 SIerは、ITにかかわる何らかのソリューションを提供して収益を上げる。不況下で、多くの企業は業績の拡大やビジネスの革新ではなく、コスト削減への寄与をITにも求めるようになってきた。

 この時代に生き抜いていくためには、価格に敏感になっている企業に、それでもつきあう価値があるSIerだと思わせることだ。これができなければ、「コスト削減の犠牲者」としてSIerの業績は悪化の一途をたどることになる。

 不況下で経営が厳しいのはどの企業も同じである。支出の削減を進めると同時に、多くの企業が答え、あるいは救いを求めている。答えを示すことができれば、ITコストの削減を企業から突きつけられることは一気に減るはずだ。

 もちろん、何の根拠もないご託宣ではだめだが、合理的な根拠に基づいて、取るべき方策を示してくれる専門家への関心は確実に高まっている。例えば、先進的な技術を用いた安価で高機能なシステムの開発実績などは、多くの企業にとっての答え、少なくともヒントになり得る。専門家としての意見をSIerが示せるわけである。

 技術力ばかりではない。説得力のある定量的なデータで、企業の業務を改善させる提案を示すことができれば、企業の関心を得ることができる。IT投資の費用対効果を明確に示すことによって、自らの専門性を示していると言い換えてもいい。

 SIerはこれまで何年にもわたって、ソリューションを企業に提供してきた専門家である。じっくりと実績を振り返って、自らの強さを再認識する作業は、必ずビジネスのプラスになるはずだ。

満足しているから選ぶ

 顧客満足度をさらに向上させるのも一つの方法だ。

 今の時期に、新規顧客を開拓するのは簡単ではない。既存顧客からの発注を確実にものにできるかどうかが、業績に大きな影響を与える。

 しかも多くの企業は、コストの最適化を進めるという理由で、取引するIT会社の数を絞り込みつつある。顧客満足度を向上させ、たとえ発注の絞り込みが進んでも選ばれる企業になることの意味は大きい。

 残存者利益という言葉がある。ここまで極端ではないにしても、絞り込まれた後のIT会社になれれば、これまでなら他社が獲得していた案件によって、顧客との取引が拡大することもあり得る。

 ほかのメリットもある。顧客満足度が高まれば、同じ顧客が何度も発注してくれる可能性が高まる。顧客が自発的に発注してくれるようになれば当然、営業経費を削減することができる。顧客満足度の向上は自社のコスト削減につながるのだ。

 顧客満足度を上げたからといって、売上増に直接結びつくわけではない。このため、顧客満足度の向上に二の足を踏む企業もあるだろう。だが今こそ、先をにらんで顧客満足度の向上を意識すべきである。