IT分野で仕事をしている人の中には,「パソコンの自作」が趣味の一つだという人は多いだろう。筆者もその一人である。

 Windowsで言えば3.1,米Intel社のi486を搭載したいわゆる「DOS/Vパソコン」の時代から,かれこれ15年近くパソコン自作を続けている。今どきのメーカー製パソコンの方が安くつくケースもあったりするが,自分の好きなパーツを選んで自分の手で組み上げるのは,メーカー製パソコンを買うのでは決して味わえない楽しさがある。

 そんな筆者だが,実は最近,このパソコンの自作という行為に少々マンネリ感を感じ始めているのも事実だ。完全に飽きてしまって「もうやめよう」などとまでは思わないが,最新のCPUやマザーボード,ビデオ・カードを買ってきて新しいパソコンを組み上げても,ドキドキ,ワクワクできる期間が以前と比べてかなり短くなってしまっているのだ。

 マンネリ感を感じる原因は,単純に年のせい,長く続けているせいかと思ったが,どうやらそうでもなさそうだ。同じように続けている他の趣味は,ほとんどそうした感覚を持たずに継続できている。

 根本原因がどこにあるのか,しばらくは分からなかったが最近ようやく理解した。それは,どんなにこだわって作っても,完成するのが結局,「誰でも作れるありふれたWindowsパソコン」に過ぎないということだ。

 最新のCorei7プロセッサを使った爆速マシンだろうが,AtomやNanoプロセッサを使った小型・省電力パソコンだろうが,結局はWindows XPやVistaが動く普通のパソコンの域を脱せない。Windows Vistaの登場により,Vistaが超快適に動くパソコンを作れば世界が変わるかもと思った時期もあったが,そんな変化は一向に起こらないのはご存知の通り。筆者は日経Linuxという雑誌に所属しているので当然Linuxを入れたりもするが,作るのが普通のパソコンである限り,Linuxだったら決定的に何かが違うということも正直ない。

 同じようにパソコン自作を趣味にしていて,マンネリ感を感じている人は少なからずいるだろう。そんなあなたや私にとっての特効薬がついに見つかった。「組み込みボードを使った超小型パソコンの自作」である。

BeagleBoardが火をつける

 2009年はきっと,自作組み込みパソコンが流行り始めるに違いないと筆者は見ている。根拠はもちろんある。一般ユーザーでも気軽に楽しめる低価格で高性能な組み込みボードが実際に市場に登場し始めているのだ。

 組み込みボードとは何か,知らない人のために簡単に説明しておこう。組み込みボードとは,主に工業用途で販売されている小さなボード・コンピュータである。CPUやメモリーなどが最初から基盤に搭載された状態で販売されており,ユーザーは通常これに自作のプログラムを組み込んで動かすために購入する。従来,こうした組み込みボードは,ちょっと高性能な製品なら価格は数万~10万円以上というのが当たり前の世界だった。

 そんな中,さっそうと現れたのが2008年後半に発売された「BeagleBoard」である(写真)。約78×75mmという極小サイズながら,ディスプレイ出力やUSBポート,SDカード・スロット,オーディオIN/OUTなどを備えている。

写真●BeagleBoard
写真●BeagleBoard
約78×75mmの基板上にUSBやディスプレイ出力,音声入出力など多数のインタフェースが実装されている