2009年内の登場が見込まれるVista後継OS「Windows 7」。移行すべきか悩ましいのはもちろんのこと,4Gバイトを超えるメモリー容量が珍しくなくなった昨今,32ビット版と64ビット版のどちらを選ぶか迷う場面が増えるはずだ。果たして64ビット版を積極的に導入する理由を見いだせるのか。Windows 7およびVistaのそれぞれで,32ビット版と64ビット版の速度差を検証するベンチマーク・テストを実施した。

画面●32ビット版Windows 7ベータのリソース・モニタ
画面●32ビット版Windows 7ベータのリソース・モニタ
通常は4Gバイトのメモリーのうち3.2Gバイトしか利用できない。
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 計測対象は,Windows 7ベータ版(以下Windows 7)およびWindows Vista SP1(同Vista)それぞれの32ビット版と64ビット版。32ビット版は,4Gバイトを超えるメモリーを搭載しても,3.2Gバイトしか利用できない(画面)。64ビット版であれば4Gバイトをフルに利用できるものの,今のところほとんどのアプリケーションは32ビット環境のエミュレーション(WoW64)として動作するため,オーバーヘッドが生じる。このトレードオフが,Windows 7とVistaのそれぞれのベンチマークの結果にどう表れるのかに注目したい。

 測定環境のマシンは,CPUがCore 2 Duo 6300(1.86GHz)で,メモリーは4Gバイト。32ビット版で利用できるのは3.2Gバイトまでで,64ビット版は4Gバイトすべてを利用できる環境での測定となる。ベンチマーク・ソフトは,英SiSoftwareの「Sandra」,米Futuremarkの「PCMark05」と「PCMark Vantage」の3種類。SandraでCPUやメモリー・アクセスなどの基本性能を,PCMarkの両ソフトで実アプリケーション性能を,それぞれ測定した。

基本性能:WoWのオーバーヘッドは約2%,Windows 7とVistaで大差なし

図1●Windows 7ベータ/Vistaの32/64ビット版における基本性能テスト
図1●Windows 7ベータ/Vistaの32/64ビット版における基本性能テスト
英SiSoftwareの「Sandra」で計測した。
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 最初に計測したSandraによる基本性能ベンチマークは,それぞれのテスト項目で単位が異なるため32ビット版Vistaを1とした相対性能で示した(図1)。結果は順当なものとなった。

 まず,マルチメディア系の単精度/倍精度の浮動小数点演算を模した「Multi-Media Float x4 iSSE2」「Multi-Media Double x2 iSSE2」と,鍵長256ビットのAES暗号化処理「AES256 CPU Cryptographic」の3テストでは,Windows7,Vistaとも64ビット版が優位となった。32ビット版に比べて50~60%高速化している。

 一方で,それ以外のほとんどのテストでは,64ビット版の性能が2%前後下がるという結果が出た。単純な演算を繰り返すテストのため,WoW64によるエミュレーションのオーバーヘッドの影響を受けたようだ。

 Windows 7とVistaを比べると,わずかにWindows 7の方が低速である。ベータ版としてテスト用のプログラム(デバッグ・コード)が不利に働いたのだろう。

実アプリ性能1:64ビット版は最大約6%低速,Windows 7はメモリー管理で一歩リード

図2●Windows 7ベータ/Vistaの32/64ビット版における32ビット・アプリケーション性能テスト
図2●Windows 7ベータ/Vistaの32/64ビット版における32ビット・アプリケーション性能テスト
米Futuremarkの「PCMark05」で計測した。
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 実際のアプリケーション利用を想定したテストは,PCMark05とPCMark Vantageの両ベンチマーク・ソフトで計測した。PCMark05は2005年登場のベンチマーク・テストで,32ビット・コードのみを含む。展開前のファイル容量は約90Mバイトで,4Gバイト容量のメモリーが当たり前の今となっては軽量なテストと言える。

 一方,後継のPCMark Vantageは,32ビット・コードと64ビット・コードの両テストが可能で,展開前のファイル・サイズが680Mバイトと一気に増えた。PCMark05が中程度の負荷,PCMark Vantageが負荷の高い処理という前提でのテストである。

 PCMark05の結果は,64ビット版が32ビット版に比べて最大6%ほど低速になる結果となった(図2)。64ビット版で高速化しているテストは,Vistaの「File Compression」などわずかしかない。

 目立つのは,メモリー・アクセス性能をランダムなアドレスで測定する「Memory Latency - Random 16MB」テストで,Windows 7が32/64ビット版とも10%ほどVistaより高速なことだ。メモリー管理のシステム・サービスは,プログラム・コードが新しいWindows 7の方がチューニングを進めているのかもしれない。