「年金個人情報提供サービス」をご存知だろうか。社会保険庁のWebサイト上で自分の年金加入記録を確認できる無料サービスである。基礎年金番号と氏名、住所を登録し、8~10文字のパスワードを設定すると、2週間程度でIDとパスワードが郵送で届く。

 2008年12月に申し込んでおいたIDとパスワードが1月になって届いたので、同サービスにログインしてみた。ログインには発行されたID、パスワードとあらかじめ設定しておいたパスワードの三つを使う。ログイン後に出てくる最初の画面で、今までに加入した年金制度と取得・喪失年月日、加入月数を確認できる。これらの情報は2008年に届いた「ねんきん特別便」の記載内容とまったく同じだ。

 年金個人情報サービスには、さらに「国民年金詳細」「厚生年金詳細」というページが用意されている。利用者は、国民年金詳細のページで加入期間中の月別納付状況を、厚生年金詳細で加入期間内の標準報酬月額と標準賞与額を、それぞれ知ることができる。標準報酬月額とは毎月の給与額の平均値を社保庁が決めた金額区分に当てはめた金額を指す。1等級の9万8000円から30等級の62万円まで全部で30の区分がある。

 厚生年金の納付額は、この標準報酬月額と標準賞与額を基にして決まる仕組みだ。標準報酬月額が高ければ納付額も高く、標準報酬月額が安ければ納付額も安い。この納付実績で、将来もらえる年金の金額が決まる。

 ちなみに2008年9月、改ざんが問題になったのは、この標準報酬月額である。給与を低いことにして標準報酬月額と年金の納付額をそれぞれ下げ、納付率を見かけ上、向上させようとしたと指摘されている。標準報酬月額が改ざんされた年金記録は6万9000件以上あるという。

使い勝手はかなり悪い

 話を「年金個人情報提供サービス」に戻そう。ねんきん特別便で得られなかった情報を得られるのだから、このサービスは一応の存在価値があると思うが、大きな問題もある。使い勝手が悪いのだ。

 まず、IDとパスワードの発行までに時間がかかる。筆者は2008年12月17日に登録したが、自宅にIDとパスワードが届いたのは2009年1月6日だった。申し込んでから短期間で利用可能にすることを売り物にしている各種Webサービスを考えると、ざっと2週間かかる年金個人情報提供サービスは見劣りする。

 ただ、申し込んでその場ですぐ使えないと困るサービスとも言えないから、IDとパスワード発行に時間がかかるのは、まだ許せる。問題は、このIDとパスワードは一切変更できないことだ。発行されたIDとパスワードはともにアルファベットの大文字、小文字、記号と数字からなり、入力が非常に面倒である。できれば、覚えやすいものに変更したいところだが、それは一切できない。

 結局、ログインのために毎回、社保庁から郵送された封書を開いてIDとパスワードを確認しつつ入力しなければならない。Webサービスを活用するために、紙に記載された情報が手元に必要というのはどうかと思う。筆者はクレジットカードの支払確定額照会サービスなどをWeb上で利用している。こうしたサービスはログイン後に、IDやパスワードをある程度変更できる。

 ようやくログインして、「厚生年金詳細」の画面を開いてみた。「あれ、ねんきん特別便と何も変わらない」。これが筆者の印象である。詳細画面で確認できる標準報酬月額はどこに記載されているのだろう。改めて画面を見直してみると、ブラウザ下部の見慣れないところにスクロールバーがあった。これを使って画面を右にスクロールしてみると、右端に標準報酬月額が記載されていた。

 表示のレイアウトが崩れた理由は、筆者が日ごろ使っているFirefoxで表示したためである。よく見ると、利用可能なブラウザはMicrosoft Internet Explorer 5.5以降、と書かれている。実際、Internet Explorerを使ってみると問題なく表示できた。

 年金個人情報提供サービスの発行ID数は140万件強という。基礎年金番号の発行件数の1%強に過ぎない。サービスそのものの周知が足りない面もあるのかもしれない。使い勝手の悪さを考えると、これらのIDがすべて使われているとは限らない。これでは、利用者数はなかなか伸びないのではないだろうか。