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記者の眼

IT技術者よ、未来を語ろう

志度 昌宏=Enterprise Platform編集長 2009/01/23 ITpro

 2009年1月20日(米国時間)、バラク・オバマ氏が第44代米国大統領に就いた。注目の就任演説については賛否両論あるようだが、記者には、以下の内容が印象的だった。「高い目標を掲げ、その実現に向かって一人ひとりがなすべきことをしよう。そうすれば、目標は必ず達成できる。それが可能なことは、アメリカの歴史が証明している」。ひるがえって、日本のIT業界はどうか。記者自身の反省を含め、高い目標を掲げ、“責任”を果たそうとしているだろうか。

明るいニュースは自然発生しない

 経済危機に加え、国際社会における信頼を大きく損ねてしまった米国の大統領就任演説と、日本のIT業界を比べるなんて、といった声が聞こえてきそうだ。だが、日本のIT業界の取り組みと現状を見る限り、経営環境が急激に悪化しているだけでなく、ITに対する信頼感そのものを失いつつある。米国発の技術・製品に依存する日本のIT業界の姿が、米国とダブって見えはしないだろうか。

 例年、年末・年始は、メディアを対象にした懇親会や業界団体の賀詞交換会、新年祝賀会などが続く。今年、各会場における、各社・各団体トップによる挨拶に共通した話題の一つが、「暗いニュース、悪いニュースばかりでは、気持ちも萎える。メディアは明るいニュースを取り上げてほしい」ということだ。IT業界で言えば、3Kや派遣問題、情報漏洩やシステム停止、などである。2008年は実際、これらの話題が一般紙・誌でも大きく取り上げられた。

 しかし、である。IT業界や主要メーカー/ベンダーは、自らが期待する“明るいニュース”のネタを発信できているのだろうか。全くないわけではないし、記者の取材不足もある。それを割り引いても、IT業界が発するのは、新製品の機能が中心だ。ときには「顧客に、どんなメリットを届けたいのか?」と首を傾げることもある。明るいニュースは、メディアの側から勝手には生まれない。

このままでは、日本のITは悪役で終わる

 さらに、いくつかの凶悪事件などの影響で、ITは犯罪の温床といったイメージも強まっている。先日も、「ITの価値や存在意義を訴えるために、何かいい手段はないか」についてブレインストーミングしていたら、参加者の一人が「そういえば最近は、ITを扱うマンガやドラマなどは、恐ろしかったり暗かったりするものが多いですね」とつぶやいた。「万博といえば大阪」世代の記者たちの幼少期、テクノロジあるいは科学(当時は、ITという言葉はなかった)が描く未来社会は明るく、希望に満ちていたのとは対照的だ。

 企業情報システムを見ても、ここ数年は個人情報保護やセキュリティ対策、内部統制の強化などにより、使い勝手を制限する仕組みの導入が進んでいる(関連記事:若きSEは“使えないノートPC”を丹念に磨くなど)。ITを導入したがために、仕方なく取り組まなければならないITの増加は、ITへの信頼感を高めるはずがない。大手コンサルティング会社のコンサルタントによれば、コスト削減要求が厳しくなる中で、「ITを使わない改善策はないか」といった相談が増えているという。

 もちろん、ITが社会の役に立っていないわけがない。預金を引き出したり、電車が安全に運行されたり、自動車の運転が優しくなったり、などITなしには成り立たない社会の仕組みは数え切れない。ただ残念ながら、その仕組みを提供しているサーバーやソフトの存在は、一般利用者には見えない。それ以上に、これらサービスの提供者は、IT業界の顧客企業だから、仕組みの実現にどれだけ貢献したとしても、IT企業の存在が表に出ることは少ない。IT業界発で、明るい話題を提供しづらい理由の一つである。

一企業のための“解答”だけでは不十分

 しかし、記者は思う。自らの貢献を公表しづらいのは、余りにも一顧客のためのシステム構築、すなわち個別開発に事業の照準を合わせすぎているからではないかと。言い換えれば、顧客ニーズを聞き出し、それを実現することに集中してしまい、一企業が抱えるニーズを超える、“明るい未来”を描くことを忘れているのではないか、ということだ。

 記者は昨夏、宮崎県で農業の近代化に取り組む、新福青果の新福秀秋社長を取材する機会を得た。作付面積を広げたり、農作業の“見える化”で若手の参入を可能にしたりするなど、消費者に“安心・安全”な野菜を届けるための仕組み作りを急ぐ。その新福社長は、同社を訪れたITベンダーのトップたちについて、「まだまだ、分かっていない」と、ぽろっと漏らしていた。

 新福社長の真意は、「新福青果のために頑張るという。私がやりたいのは、農業そのものの改革であり、必要なのは、新たな農業のための仕組み」ということだ。健康や食の安全、教育の充実などへの期待が高まる社会環境にあって、IT業界には、一企業が競争に勝ち残るための解答ではなく、業界全体を変えるような新たな仕組みの提案・構築が求められている。そこでは、例えば新福社長のような存在から協力を得ながら、IT業界自らが未来を描かなければならない。

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