写真1●新型インフルの体験型シミュレーションの様子
写真1●新型インフルの体験型シミュレーションの様子
[画像のクリックで拡大表示]
写真2●真剣なまなざしで議論する参加者
写真2●真剣なまなざしで議論する参加者
[画像のクリックで拡大表示]
写真3●公共交通機関の稼働は2分の1になる
写真3●公共交通機関の稼働は2分の1になる
[画像のクリックで拡大表示]

 致死率が60%とも言われる新型インフルエンザの発生と流行が危ぶまれている。実際、1月6日には中国・北京で新型インフルの一種である鳥インフルエンザによって、19歳の女性が死亡したと報じられた。

 新型インフルは「起こるかどうか」ではなく「いつ起こるのかという段階」という専門家の警告が真実味を帯びてきたわけだ。筆者もこうした状況になってきたので、「企業のためのパンデミック対策」というセミナーを急遽企画した。専門家や先進ユーザーの事例で対策の勘所をつかんでもらうのが狙いである。

 企業にとっては、従来からある緊急時対応の事業継続計画(BCP)などが役に立たない可能性がある。と言うのも、地震など“従来型”の緊急事態であれば、幹部や管理職などが災害本部に集まって情報を共有し、対策を立てるのが有効。しかし新型インフルでは人対人の感染を避けるため、できる限り接触しないことが求められる。しかも新型インフルには今のところ特効薬が存在しない状況である。

 こうしたなか筆者は昨年12月、新型インフルがもたらすであろう企業への脅威と混乱を取材した。もちろん実際の感染状態ではなく、体験型のシミュレーションである(写真1)。BCPについての情報交換をするための特定非営利活動法人(NPO)の事業継続推進機構(BCAO)が実施したものだ。

 社内で危機管理を担当しておられる方も多いようで、会場の参加者のまなざしは真剣そのもの(写真2)。約100人のBCAO会員が10人弱ごとの11班に分かれ、それぞれ持ち株会社内の企業体の危機管理担当者を演じた。

 臨場感を与えるのが、事務局側が提示するシナリオである。3時間の間に、新型インフルの発生、4日後、11日後、1カ月後と状況が目まぐるしく変わっていく。例えば、新型インフルの発生から11日後には社内の感染者が200人、公共交通機関の稼働は2分の1といった具合である(写真3)。当初立てていた対策が通用しなくなることもある。

 この制約条件の下で、それぞれの企業として重要な判断を下していくわけだ。具体的には、どの時点で自宅待機にしどの社員を出社させるのか、オフィスをいつ閉鎖するのか、どの事業を縮小しどの事業を継続するのか、というものだ。

 シミュレーションを通して貴重な意見が聞けたので、いくつか紹介したいと思う。