少し早いが、2009年に向けて宣言したい。日経ソリューションビジネスという雑誌の編集長として、「100年に一度の誌面」を作るということを宣言したいのである。

 日経ソリューションビジネスのうたい文句は「顧客への最適提案でIT市場を攻略する」である。「100年に一度の提案」を実現させるための雑誌作りを目指す、と言い換えてもいい。

世界全体が緊急事態のなかにある

 100年に一度の誌面を作ろうと考えるのは、2009年がまさに100年に一度の緊急事態にあると考えるからだ。別にこれは個人的な見解ではないだろう。

 世界は今、大きく混乱している。株価は急落し、巨大な金融機関が経営破綻している。2009年には、日米欧の経済成長率がそろってマイナスに転じるとみられている。これは、第二次世界大戦が終わって以降、初めてのことである。

 大見得を切ったように思われるかもしれないが、この緊急事態を乗り越えるのは簡単ではない。100年に一度の誌面を作ることは、雑誌を作る者としての使命であると考えることもできる。

 ソリューションプロバイダの話題に戻ると、企業のIT投資も経済全体の動きに大きな影響を受けることになりそうだ。調査会社のIDCジャパンが2008年12月に、「全体の50%を超える企業が、世界金融危機の発生後2009年度(会計年)のIT投資予算を『削減する』と回答」という内容を含む緊急調査の結果を発表した。

 先行きが不透明ななかで、企業が支出を見直すのは自然なことだ。売上高の1%以上を占めると言われるIT投資に、この動きが及ぶのは当然である。だが、ITサービスを企業に提供するソリューションプロバイダにとって、IT投資の削減は死活問題だ。

 もっと重要なこともある。ITは企業活動、経営戦略と密接に結びついている。一律20%カット、あるいは最低でも1年間のプロジェクトの延期といったIT投資の見直しは、企業の成長力をそぐことにもつながりかねない。

 企業は生き物である。そしてITは企業に活力を与えることができる。ソリューションプロバイダが、萎縮している企業の投資意欲を再び燃え上がらせなければ、どの企業が積極的にITに投資しようと考えるのだろうか。

 もっと言えば、凍てついた顧客の心を動かすのは「創造性」あふれるソリューションだけではないかと考えている。以前にも見たことがあるような提案で、巨額の支出を伴うIT投資に踏み切る確率は低い。この辺りは、少し前の「失敗・提案・創造~ソリューションビジネス成功の法則」という記事で触れた通りだ。

創造的な提案で顧客を動かすために

 日経ソリューションビジネスにとって100年に一度の誌面とは、100年に一度の提案、すなわち100年に一度の危機を乗り越えることができる提案の実現を助けるもの、ということになる。このために求められるのは何だろうか。

 1カ月ほど、このことばかりを考えてきた。単に意外なものであればいいわけではない。「ソリューションプロバイダで営業活動を手掛けている」という、中心読者の期待に添うものであることは最低の必要条件だ。

 取材先との会話などを通じて、何とか柱となる三つのテーマが浮かんできた。「創造的なソリューション提案を支援します」「提案のキーパーソン育成を支援します」「時代に打ち克つ経営の革新を支援します」というものだ。

 最初のテーマについては説明する必要はないだろう。二つ目は、創造的な提案能力のある人材を育てることに雑誌を役立ててもらいたい、ということである。三つ目は、創造的な提案を可能にするソリューションプロバイダの企業体質を解き明かして、読者にお伝えしたいということである。

 これで方針が固まった。三つの中テーマに沿って、さらに編集部として何に注力すべきかを考えた。

 創造的なソリューションを提案するためには、顧客のニーズ、市場の動向、最新の商材を分析することが重要だ。生々しい顧客の声、まだはっきりと意識されていない最新動向、読者のみなさんがあっと驚くような商材を、2009年にはお伝えしたい。

 提案のキーパーソンを育成するために必要なことは何なのか。的確な顧客情報の収集と分析、創造性を感じさせる提案能力の強化、といったことになるだろう。このテーマで面白い記事をつくるためには、トップ営業と呼ばれる「ロールモデル」を取材で発掘することも必要になる。

 時代に打ち克つ経営の革新を支援するために必要な情報を、いかに提供していくか。このテーマで企画を考えるのが一番難しかった。悩んだ結果、多くのソリューションプロバイダが目標にしている「売上高営業利益率10%」をいかにして実現するか、といった視点での企画ができないか、と考えている。だれもが知っている大手だけでなく、知られざる高収益企業も徹底取材してみたい。

 100年に一度の誌面を作るためには、100年に一度の取材力が必要になる。最近では、この点も強く感じている。

100年に一度の津波を乗り越えよう

 この記事に限らず最近、「100年に一度」という言葉が頻繁に使われるようになった。その走りとなったのは、米国の前FRB(連邦準備制度理事会)議長であるアラン・グリーンスパン氏の言葉だ。

 同氏の「We are in the midst of a once-in-a century credit tsunami.」という言葉を聞いたり、目にされたりした読者も多いだろう。 「100年に一度の信用の津波の真っ直中にいる」とでも訳せばいいのだろうか。ロイターのWebサイトで、同氏のコメントを動画で確認することができる。

 100年に一度の津波を乗り越えるために、ともに全力を尽くそうではありませんか。年末年始も、このテーマについてはじっくりと考えたいと思っています。