ITサービス会社による不正会計や粉飾決算が、今年も残念なことに続出した。アクセス、旧アスキーソリューションズ、ニイウス コーなどの不正が明らかになり、経営再建中のアクセスを除いて大半が経営破綻した。
これ以前にもIT業界では、IXIやメディア・リンクスといった企業の粉飾決算が社会問題となった。2006年の会社法施行で内部統制とコンプライアンスの強化は進んできたはずだが、大手ITベンダーまで巻き込んだ上場企業の不正が繰り返されてきたのが現実である。
これらの企業は、設立した当初から不正を働こうとしてきたわけではないはずだ。果たして、どういった企業がどういった理由で、不正会計に踏み切ることになったのか。
この真実に迫るべく、日経ソリューションビジネスで特集を組むことになった。今も記者は、不正会計や粉飾決算にかかわった企業の関係者に直接取材したり、逮捕・起訴された元幹部の裁判を傍聴したりしながら、不正会計や粉飾決算の実例について取材を進めているところだ。
「良き家庭人」が不正にかかわる
実は取材を進めるうちに気付いたことがある。不正に関係した人々について取材してみると、高い目標を掲げた熱心な営業マンだったり、上司の指示に忠実な部下だったりすることが多い。いかにも犯罪者というイメージからは程遠く、むしろ仕事熱心な普通の会社員なのである。
架空循環取引の当事者となった企業が関係する裁判では、良き家庭人であり仕事熱心なビジネスパーソンが、指示を受けて不正に手を染めていく過程が明らかにされた。情状証人である妻の言葉に涙を流す被告の様子を忘れることができない。
なかには、不正を不正と認識しないまま粉飾決算などにかかわったケースもあるようだ。例えば、粉飾決算に関連した罪を犯した疑いで逮捕・起訴されたあるITサービス会社の元役員は当初、一時的な穴埋めのつもりで売り上げを前倒し計上していたのだという。「長く続けるつもりはなかった」はずが、雪だるま式に不正が膨らんでしまった。
これらの経験から、不正会計は決して他人事ではなく、読者の皆さんの周囲にもあり得る身近なものだとの思いを強くしたのである。
一方で不正が常態化していることも
知らず知らず、あるいは嫌々ながら不正に関係した例がある一方で、積極的に不正に関与する人や企業が存在することも事実である。
明らかになった架空循環取引の事例を見ると、複数の大手ITベンダーが商流に名を連ねていた。架空取引の一部はある人物が仲介しており、「この人に会えば売り上げを確保できる」との噂が一部の営業担当者に広がっていた、との話も耳にしている。営業担当者が営業成績の水増しを狙い、スルー取引に手を出すことが常態化していたからと言われても仕方あるまい。
確かに、ITサービス会社はソフトウエアという目に見えない成果物を扱う。現実として、監査法人のチェックの目もくぐり抜けやすいということもあるだろう。「対象となる“商品”が存在する証拠としてCD-ROMやソースコードを見せられたら、納得するしかない」と話す会計士もいる。
だからといって、このことが不正会計や粉飾決算に踏み切る理由にならないのは当然のことだ。収益力が低いにもかかわらず株式を上場したため、株主の期待に応え続ける手段がほかになかった、と考えている経営者もいるようだが、これも身勝手な意見である。
ではどうして、仕事熱心な家庭人が現実に不正会計や粉飾決算にかかわってしまうのだろうか。IT業界のだれもにとって身近な出来事だからなのか、それともごく一部の企業だけの問題に記者がぶつかっているだけなのだろうか。1人で悩んでばかりいても答えは出ないので、ITproの記者の眼を借りて読者のみなさんに尋ねてみることにした次第である。
以下に不正会計や粉飾決算に関する簡単なアンケートを作成したので、よろしければ質問にお答え下さい。回答された方の身元が特定されるようなことはありません。締め切りは11月29日(土曜)とさせていただきます。
回答は日経ソリューションビジネスやITproなどの日経BP社の各種媒体で引用することがあります。ご協力ありがとうございました。
アンケートの締め切りを11月28日から11月29日に変更しました。[2008/11/26 11:23]