【記者の眼】

システムの「賞味期限」は誰が決める

目次 康男=日経コンピュータ 2008/11/17


 筆者は賞味期限に敏感だ。コンビニで買ったサンドイッチやおにぎりは、パッケージに記してある賞味期限を1分でも越えてしまうと食べずに捨てようと思ってしまう。いつも同僚から、「もったいない」と注意される。確かにその通り。賞味期限は目安でしかない。保存状態が悪くなければ、賞味期限が切れても美味しく食べられる。

 一方、情報システムはどうだろうか。ハード/ソフト・ベンダーの保守サポート期間(賞味期限)を過ぎたら、サーバーやパッケージソフトは使えなくなるのか。もちろん、そんなことはない。ただし、ベンダー側は「故障しても交換部品を提供しない」「バグがあっても修正プログラムは提供しない」といった条件をユーザー企業に突き付ける。よほどの覚悟を持たない限り、賞味期限が切れたシステムを使い続けることはできない。

 使いたくても使えない――。ベンダーがシステムの賞味期限を一方的に決める現状に対し、ユーザー企業の不満が高まっている。世界的な経営環境の悪化が、これを増幅させている。コスト削減の大号令が、ユーザー各社で飛び交っているからだ。もちろんIT投資も例外ではない。まだまだ使えるシステムを「賞味期限が切れた」という理由だけで買い替えることに対し、経営者の理解を得ることはできないのが実情だ。

 日経コンピュータ2008年11月15日号の特集では、ハード/ソフト・ベンダーが一方的に決めているシステムの賞味期限に振り回されず、自社でシステムの賞味期限をコントロールする方法を探った。詳細は本誌をご覧いただきたいが、ユーザー各社のアプローチ方法で共通していることが「自己防衛」だ。交換部品を自社で保管する、システムをパッケージから内製に切り替える、などである。

 ここで「賞味期限」の話に戻る。そもそも、何を根拠にシステムの賞味期限(保守サポート期間)は決まっているのだろうか。ベンダーはユーザー企業に対し、その根拠を示せているだろうか。残念ながらハード/ソフトベンダーに取材した限り、正対した答えを得ることはできなかった。

 保守期間の延長サービスに対し、ベンダー各社は「製品価格を2~3倍にすれば実現できる」と異口同音に話す。保守サポート期間を延長すれば、買い替え需要はぐんと減る。その分の収益が圧迫されるため、安易に保守期間は延長できないというのが延長を渋る理由だ。「要望があれば保守サポート期間を延長する」と言うものの、あくまで「個別対応」。延長する場合の料金体系やサービス内容を公にしているベンダーはない。

 システムに求められる機能や性能が、右肩上がりだったのはひと昔前。今は5年サイクルでシステムを再構築する時代ではなくなった。一方で、システムの賞味期限は、右肩上がりの時代を前提に作られているようにしか思えない。

 しかし、時代は変わった。ユーザー企業は少しでも長く使えるハード/ソフトを求めている。もちろん、タダで延長しろというわけではない。多少の追加料金を払ったとしても、ハード/ソフトの入れ替えが10年で2回から1回に減るだけで、アプリケーションの検証作業やデータ移行作業の費用を削減できるメリットは大きい。

 「保守サポート費用が多少上がっても良いから8年使いたい」「いやいや10年使いたい」といった要望は増えている。ユーザー企業が保証サポート期間(賞味期限)を選べるようになれば、システムのライフサイクル計画はもっと柔軟になる。賞味期限の偽装は避けてほしいが、ベンダー各社はハード/ソフトの保守サポート期間の妥当性を改めて精査し、ユーザー企業が納得できる、そして期間を選択できる環境をいち早く整えてほしい。




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