IT勉強会カレンダー
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ニコニコ動画にtechtalkタグでアップロードされている勉強会の動画
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 IT勉強会カレンダーをご存じだろうか。IT関連のコミュニティなどが開催するイベントや勉強会を集めたGoogleカレンダーだが,一覧して驚くのは,ほぼ毎日数十件の勉強会やイベントが開催されていることだ。「日本ほどひんぱんに勉強会が開かれている国は他にないのではないか」,Linuxカーネル読書会を主催するミラクルリナックス シニアエキスパート 吉岡弘隆氏は言う。

コミュニティのイベントが急増,企業も

 コミュニティのイベントや勉強会は以前から開かれているが「このところ急増しているように思える」というのは,PHPユーザ会やLL(Lightweight Language)イベント,日本UNIXユーザ会などで10年近くコミュニティのスタッフを務めてきた小山哲志氏だ。IT勉強会カレンダーが開設されたのは2008年の4月からだが,イベントの情報が可視化され,共有化されることでコミュニティの活動が急速に活性化してきたと小山氏は感じている。

 勉強会を開催している企業も増えている。社内勉強会を実施している企業は多いが,SNSを運営するGREEは,社外の技術者も参加できるオープンソース勉強会という名の勉強会を2006年から続けている。カカクコムとクックパッドは共催で社外からも参加できる勉強会を開催。楽天は2007年から楽天技術シンポジウムと呼ぶイベントを開催している。

ボランティアによる勉強会のカレンダーと動画配信

 カレンダーを作成したのは関西でセキュリティに関する勉強会「まっちゃ139」をまっちゃだいふく氏とともに運営しているはなずきん氏。本業はシステム管理者であり,マイクロソフトのMVPでもある。はなずきん氏がIT勉強会カレンダーを始めたきっかけは「まっちゃ139で勉強会同士が横につながったような,みんなでスケジューリング把握できるような何かがあればいいよねって話が出た」こと。「誰か作ってくれないか待っていたんだけど誰も作らないので」(はなずきん氏),はせがわようすけ氏がすでに運営していたSecurity Event in Japanカレンダーを補完するつもりで作り始めたという。

 勉強会やコミュニティ・イベントの動画を撮影し,中継・配信するボランティアを続けている方もいる。ニコニコ動画を運営しているニワンゴの溝口浩二氏らである。溝口氏はカメラやMacbookなどの撮影機材を抱え全国各地のRuby会議やPHPカンファレンス,LL future,Shibaya.pmやSHibaya.jsなどのイベントをUstream.tvで生中継し,ニコニコ動画にアップロードしている。溝口氏はtechtalk.jpというサイトを立ち上げており,ニコニコ動画でタグ「techtalk」で検索すると出てくる勉強会,イベントの動画はすでに500以上にのぼる。溝口氏や彼に賛同したボランティアによりアップされたものだ。(うち溝口氏自身がアップした動画は現在約300本[2008年11月10日14:09追記])

 はなずきん氏はIT勉強会カレンダーの運営に1日約1時間を費やしているという。毎日これを続けるのは簡単なことではないと思うが,「私はWeb上の情報をまとめているだけ」とはなずきん氏は言う。「いろいろな勉強会を運営されている方とやり取りをさせていただけ,すごく参考になる」(同)。

 自前の機材を担いで休日を使ってイベントの中継を中継する溝口氏も「勉強会が大好き」と言う。

 もちろん会場を手配し講師を選び依頼し設営,受付し撤収するイベントの企画や運営はもっと大変だ。しかしコミュニティに関わる多くの人が「楽しいから」と口を揃えて言う。「人とたくさん関われるようになったことが何よりうれしい」(はなずきん氏)。勉強会やイベントのあとの懇親会が楽しみ,という人も多い。一杯やりながら,専門領域について(あるいは技術に全く関係ない話題を)語り合うことが何より面白いと彼らは言う。

 また企業が実施する勉強会は,自社の社員の技術力の向上を図るとともに,優秀な技術者をスカウトする場所になっていることも多いようだ。