最近,プロジェクト・チーム内におけるコミュニケーションについて,約30人のプロジェクト・マネージャに取材する機会があった。そのとき,チーム内のコミュニケーションに関する問題意識として,大きく二つの事柄が浮かび上がった。一つは,日ごろの雑談を含めてメンバー同士の対面でのコミュニケーションを活性化すること。もう一つは,増える一方のメールでのコミュニケーションを効率化することだ。

 対面でのコミュニケーションの活性化については,プロジェクト・マネージャが率先して大きな声で話しかける,必ず何人かで一緒に昼食をとることをルール化する,といったさまざまな工夫を,それぞれのプロジェクト・マネージャから聞くことができた。ところが,メールでのコミュニケーションの効率化に関する方策として聞けたのは,メーリング・リストを定期的に棚卸しして無駄なものを廃止する,という方策ぐらいだった。多くのチームが「分かりにくいメールが少なくない」という問題を抱えているようだったが,これについては妙案を聞くことができなかった。

 今では,毎日100通以上のメールを受け取るエンジニアは決して珍しくない。それだけに,分かりやすいメールを書くことは,チーム内のコミュニケーションを円滑にする上で極めて重要だ。では,どうしたらよいのか。少し前のことになるが,日経SYSTEMSで「文章の書き方演習」という特集を組み,読者の方から好評を得た。その中から,分かりやすいメールを書く上で基本となる鉄則を紹介しよう。

分かりにくいメールをどう修正するか

 まずは,次のメールを見てほしい。SEの山田さんが,上司の藤堂課長に対して,ユーザーとの打ち合わせ結果を報告したメールだ。じっくり読めば内容を理解できるが,分かりにくいメールの典型である。このメールをどう直すか,考えてみてほしい。

件名:報告

山田です。お疲れさまです。
10月24日(金)に人事部の青木係長と
勤怠管理システムに関する打ち合わせを行いました。
画面仕様書の改訂版に関して,
10月30日(木)までにレビュー結果をご送付くださるとのことです。
また,次回の定例会の開催日時は,11月10日(月)15時を予定していましたが,
青木係長のご都合が悪いため,11月11日(火)15時に変更したいとのことでした。
以上,よろしくお願いします。

 上記の分かりにくいメールを修正したのが,次のメールである。伝える内容は変わっていないが,ちょっとした修正によって,分かりやくなったはずだ。

件名:10/24 人事部青木係長との打ち合わせ結果報告

山田です。お疲れさまです。
10月24日(金)に人事部の青木係長と
勤怠管理システムに関する打ち合わせを行いました。
その打ち合わせ結果について,報告事項が2点あります。

■1 画面仕様書レビュー結果の返送時期
画面仕様書の改訂版に関して,
10月30日(木)までにレビュー結果をご送付くださるとのことです。

■2 次回の定例会の開催日変更
次回の定例会の開催日時を,11月11日(火)15時に変更したいとのことでした。
予定していた11月10日(月)15時は,青木係長のご都合が悪いためです。
藤堂課長のご都合をお知らせください。

以上,よろしくお願いします。

 修正前と修正後でどこが変わったのか。修正のポイントとした鉄則は,「1. テーマごとに見出しを付け,文章を分ける」「2. 件名(主題)を具体的に示す」「3. 長い一文を分割する」「4. 結論を明記する」の四つである。この四つを心がけることで,メールの分かりやすさは格段に高まる。四つの鉄則を順に見ていこう。